NHK連続テレビ小説『なつぞら』(毎週月~土曜8:00~)で、広瀬すず演じるなつの夫、“一久さん”こと坂場一久役を演じている中川大志。坂場は東大卒だが、何をやらせてもとことん不器用すぎる点が、彼の愛らしいチャームポイントとなっている。
実際に、カチンコを上手く使えなかったり、バレーボールでへっぴり腰を見せたり、十勝の牧場では牛の糞で滑ったりと、もはや芸人のボケばりに笑いを誘ってきた坂場。なつと家庭を持ってから、家事をこなしていた時も、包丁で手を切ったりすることがざらにあった。でも、次第に料理の腕を上げていき、「家で子育てをするのは女だけと決まったわけじゃないんだ」という理解ある夫となった。中川大志に直撃し、坂場の役作りについて話を聞いた。
――とことん不器用な坂場という役をどんなふうに捉えて演じていますか?
坂場は、観てくださる方が、少しでも笑ってもらえるような人間でもありたいと思いながら演じています。坂場の真っ直ぐさというか、周りから自分がどう映っているかについて自覚が無い点が滑稽に見えたらいいなと思っています。
――とことん不器用でイケてないところが坂場の魅力ですね。
ツッコミどころが満載なので、職場で遠慮なく言いたいことを言っている坂場とのギャップが出ればいいなと思っています。楽しくなっちゃって、自分的にもやりすぎたかなと思うシーンも何か所かあります。ただ、こけたり、カレーパンを本にこぼしたり、バレーボールが全然できなかったりしますが、実はかなり苦戦しながらやっていました。
――確かにギャグスレスレの動きが難しそうですね。
何度もできないチャレンジが多いんです。例えばカレーをこぼすことは、何回もできないし、糞を踏んで転ぶシーンも一発勝負だったりするので、そこは毎回緊張感がありました。僕は、あそこまで不器用じゃないというか、逆に坂場の動きは、けっこう難易度が高いです。カレーパンのカレーをこぼすのも、それをどう自然に見せるのかという計算が必要なので。カレーの硬さや、どこをどうかじったらどのタイミングでこぼれるのかとか、相当考えたものなので、ある意味、僕が不器用だったらできないと思います(笑)。
――そんな坂場が、あそこまで家庭人として頑張ることになるとは思っていなかったです。なつと初めて出会った頃の坂場から、ずいぶん変わったという印象を受けますが。
確かに最初に台本を読んだ時は、坂場となつがどんなふうに結ばれ、夫婦になっていくのかが、全く想像がつかなかったです。だから「なつは絶対にこんな人と一緒にならないほうがいい」というところから「この人と一緒になってよかったね」というところまで、キャラクターを成長させていけたら面白いなとずっと思っていました。朝ドラはスパンが長いので、人物の印象をこんなにも変えていけるのかと、思いながら演じています。
――今は良きパパとなり、なつと二人三脚で子育てをしていく姿は応援したくなります。
坂場というキャラクターが成長していく上で、子どもが生まれたことは、一大事で大きな変化がありました。まず、坂場はどんな私生活を送っているのか、全くわからなかった人なので。今度は180度変わり、家が坂場の舞台になりました。同じ作品の中でここまで環境が変わることはなかったので、やっていて面白かったです。
でも、僕が意図的に変えようと思ったかというとそうではなくて、台本を読んで、そのシーンを演じていると、自然とキャラクターがそうなっていったので、人って変われば変わるもんだなと思いました。後半戦はそこを面白がってもらえたらと思っています。
中川大志(なかがわ・たいし)
1998年6月14日生まれ、東京都出身。ドラマ『家政婦のミタ』(11/日本テレビ)で注目され、『南くんの恋人~my little lover』(15/フジテレビ)、NHK大河ドラマ『真田丸』(16)、『花のち晴れ~花男 Next Season~』(18/TBS)などに出演。映画は『きょうのキラ君』(17)、『ReLIFE リライフ』(17)、『虹色デイズ』(18)、『覚悟はいいかそこの女子。』(18)などで主演を務めた。10月からTBS系ドラマ『G線上のあなたと私』に出演予定。
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