日産自動車は確実にカップインするゴルフボール「ProPILOT GOLF BALL」(プロパイロット ゴルフボール)を開発した。なぜ開発したのかといえば、発売したばかりの新型「スカイライン」が搭載している運転支援システム「プロパイロット 2.0」の技術を分かりやすく表現し、広く周知を図りたいがためだ。

  • 日産の「プロパイロット ゴルフボール」

    日産が開発した「プロパイロット ゴルフボール」

先進の運転支援システムに着想を得たゴルフボール

「プロパイロット」とは、日産が2016年に発売した現行型「セレナ」から採用を開始した運転支援システムだ。フロントガラス中央上部の単眼カメラで前方車両や車線を3次元的に捕捉し、その情報をもとにクルマがステアリング、アクセル、ブレーキを自動で制御する。

この機能を使うと、ドライバーが設定した車速を上限に、同一車線内をクルマが自動で走行する。ハンドルに手を添えておく必要はあるものの、アクセル操作は不要だ。高速道路や自動車専用道路などでしか使えない機能だが、前にクルマがいなければ設定スピードを維持し、クルマがいれば追従・停止・停止保持を自動で行ってくれる。長距離の巡航走行や渋滞時の運転で役に立つシステムだ。

そのプロパイロットが進化し、「プロパイロット 2.0」となって新型スカイラインで登場した。カメラが3眼を含め計7個に増えたほか、レーダー、ソナー、GPS、3D高精度地図データ(HDマップ)などを組み合わせることにより、周囲360度の情報と道路上の正確な位置を把握できるようになっているところが進化のポイントだ。

  • 日産の新型「スカイライン」

    「プロパイロット 2.0」を初めて採用した新型「スカイライン」

プロパイロット 2.0では「ナビ連動ルート走行」が可能となっている。ナビで目的地を入れた上で高速道路に乗ると、クルマは3D高精度地図データと走行ルートを照らし合わせつつ、カメラやレーダーなどで周囲の情報を捕捉しながら自動走行を開始する。この状態であれば、トンネル内や料金所付近などの一部区間を除き、ハンドルから手を離したままの「ハンズオフ」走行が可能になる。ただし、ドライバーはいつでも運転に復帰できるよう、常に前方・周囲の状況に注意しておく必要がある。

  • 「プロパイロット 2.0」を体験した時の様子

    先日、大月~河口湖間(山梨県内、中央自動車道)で「プロパイロット 2.0」を実際に体験する機会があった。感想はといえば、クルマの挙動は自然で安定していて、手放し運転でも不安は全くなかった。クルマの未来を垣間見たような感じだ

「プロパイロット 2.0」は、ドライバーが確実に目的地に到達できるよう運転を支援するシステムだ。「プロパイロット ゴルフボール」は、ゴルファーがパッティングしたボールが確実にカップインするよう支援するゴルフボールである。

  • 日産の「プロパイロット ゴルフボール」

    「プロパイロット ゴルフボール」。俯瞰のカメラでボールとカップの位置をセンシングし、ボールの現在地を特定した上で、コンピューターがグリーン上のルートを計算し、ボールに進むべき方向を無線で指示するという仕組みだ。ボールの中にはモーターとコンパスが入っているとのこと

なぜボールを作ったのか。日産 日本マーケティング本部 ブランド&メディア戦略部の松村眞依子さんは、「クルマに関心のある方は(プロパイロット 2.0のような)新しい技術をご存知ですが、クルマに対する関心が薄い人に、こういった技術を身近なものだと感じてもらうのは簡単ではありません」と開発の背景を説明する。日産では「クルマの技術を生活に落とし込む」ことにより、クルマに関心がない人にも知ってもらうことを目指す「TECH for LIFE」という取り組みを進めていて、今回のゴルフボールはその第4弾となるそうだ。

  • 日産の「プロパイロット ゴルフボール」

    実際に「プロパイロット ゴルフボール」を体験。かなり弱い力であさっての方向に打ったのだが、ボールは確実にカップに向かい、吸い込まれていった。日産のグローバル本社ギャラリー(神奈川県横浜市)では、9月1日までプロパイロット ゴルフボールの体験イベントを開催している

ちなみに、日産ではプロパイロット ゴルフボールの市販を予定していないとのこと。仮に、何らかの手段でボールを手に入れられたとしても、カメラやコンピューター(プログラム)がなければプロパイロットの機能は使えないので、注意が必要だ。