パナソニックが発表した「LUMIX S1H」は、シネマクオリティの動画が撮れるプロ仕様のミラーレスカメラだ。発表会で触れた実機の写真と共に、既存のLUMIX S1/S1Rと比べて大幅に強化された、S1Hの本気の動画撮影性能を紹介する。
LUMIX Sシリーズの3機種目となる「LUMIX S1H」は、パナソニックがシネマ業界で磨き上げた動画性能と、ミラーレスカメラで磨き上げた機動性や機能性を融合させたミラーレスカメラ。映画制作の現場やビデオグラファーなどの利用を想定している。既報の通り、価格はオープンで、ボディ単体の店頭価格は税別50万円前後の見込み。発売は9月25日を予定している。6月の開発発表では2019年秋に製品化し、グローバル市場に導入予定としていたが、今回、国内での価格や発売日が正式に決まった。
パナソニックアプライアンス社スマートライフネットワーク事業部イメージングビジネスユニット総括の津村敏行氏は、「S1Hは世界中の映像クリエイターの表現の幅を拡げる、シネマカメラの新カテゴリーとしてつくりたい。そういう夢を持って開発を進めた商品だ。シネマカメラの性能をミラーレス機のフォルムに収めることで、手持ち撮影やジンバルを使った撮影、ドローンを使った空撮、防水ケースに組み入れての水中撮影など、従来のシネマカメラでは難しかったシーンでの撮影が容易に出来る」と、S1Hの強みを紹介。
同社が手がける既存のシネマカメラ「VARICAM」シリーズは数百万円という価格帯の製品だが、S1Hが約50万円でそれらのシネマカメラに匹敵する性能を備え、さらに6K/24p動画撮影もできる点は大きな注目ポイント。津村氏は「シネマカメラに匹敵するクオリティのカメラを、多くの方にお使いいただける価格帯で実現することを目指した。スチルカメラとしてもプロ向けのパフォーマンスを備えており、ロケハンから本番撮影までこの1台で対応できる」とアピールした。
有効2,420万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載し、フルサイズのレンズ交換式デジタルカメラとして世界で初めて、6K/24p(縦横比3:2)、5.9K/30p(同16:9)の動画撮影を実現した。
イメージセンサーの1画素ごとに「低ISO回路」と「低ノイズ・高ISO回路」の2系統を切り替え、高感度時の撮影を改善するという、デュアルネイティブISOテクノロジーに対応。また、このセンサーに最適化したローパスフィルターを備え、細かな模様などの撮影で発生するモアレ現象を効果的に抑制するという。
映画向けのSuper 35mmフォーマットでの10bit Cinema4K/60pや、4K/60pでの動画記録など、プロのニーズに応える様々な動画記録モードが選べる。動画フォーマットは、LUMIX S1/S1Rが対応しているMP4とAVCHDに加え、MOVに対応。映像制作に適した高画質な動画が撮れる。
スロー/クイック表現が可能な4K/フルHDのVFR(バリアブルフレームレート)動画や、スローモーション動画が作成できるハイフレームレート動画撮影、4:3アスペクトのアナモフィックレンズに対応したアナモフィック動画記録にも対応する。
本体にSDカードスロットを2基備え、UHS-IIビデオスピードクラス90規格のSDHC/SDXCメモリーカードに対応。2枚のメモリーカードにデータを順次書き込んだり、振り分け記録もできるなど、撮影データを管理しやすくした。
また、HDMI端子から4:2:2 10 bitの映像出力が行え、カメラ内のSDメモリーカードに記録しながら、ATOMOS製「NINJA V」(別売)などの外部レコーダーに高画質な映像を同時記録することもできる。
高度な放熱処理技術により、全動画撮影モードで記録時間無制限撮影を可能にしているのも大きな特徴。カメラボディの放熱シミュレーションの研究に基づいて設計した、新たな構造の冷却ファンを本体内部に搭載した。これにより、ノーカットの映像表現や、星空・夜景のタイムラプス撮影、野生動物やドキュメンタリーの撮影などを可能にするという。
ボディには軽量かつ耐久性のあるマグネシウム合金フレームを採用。また、防水ファンの採用や、カメラ内のヒートシンク構造を防塵・防滴化することで、ファンを搭載しながらシステム全体の防塵・防滴を実現。マイナス10℃の耐低温設計も採用し、ハードな環境での撮影にも耐えるとする。
背面液晶モニターは3.2型/約233万ドットのタッチパネルで、270度のフリーアングル構造とチルト構造を組み合わせた、独自の可動式構造を採用。HDMI出力時もケーブルと干渉せずにフリーアングル撮影が可能とする。天面にも1.8型の大型モノクロステータス液晶画面を搭載する。
レンズマウントはLマウント。ボディ内5軸手ブレ補正を搭載し、ボディ内だけで6段、対応レンズと連動する「Dual I.S. 2」利用時は最大6.5段の手ブレ補正を実現する。
AF性能も強化。カメラが人の顔を検知し、瞳を認識して自動でピントを合わせる「顔・瞳認識AF」に対応。被写体の認識アルゴリズムに、AI分野の先進技術であるディープラーニングを応用しており、人物や動物に対する高精度なフォーカス性能を実現する「人体・動物認識AF」も搭載する。
カメラリグに取り付けたS1Hで津村氏の動きを捉えるデモでは、AF合焦枠が津村氏の動きにシームレスに追従する様子が確認できた。
このほかにも、映像の暗部からハイライト部分まできめ細かに描写し、豊かな階調と色情報を活用した美しい映像表現を可能にするため、シネマカメラのVARICAMと同水準のダイナミックレンジ・広色域を実現する「14+ストップV-Log/V-Gamut」に対応。映像編集後のイメージを確認しながら撮影できる「V-Logビューアシスト機能」も搭載する。さらに、シネマカメラの絵作り「VARICAM LOOK」を再現する各種機能など、本格的な映像制作に必要なプロフェッショナル動画性能を搭載していることを紹介した。
パナソニックは、S1Hを含むLUMIX Sシリーズ向けの新レンズとして、「LUMIX S PRO 24-70mm F2.8 S-E2470」(S-E2470)を同日発表。F2.8通しの標準ズームレンズで、静止画に加え動画撮影にも最適化しているという。価格は27万5,000円。発売日はLUMIX S1Hと同じ、9月25日を予定している。
Lマウントのレンズは、パナソニック以外にシグマやライカも提供しており、S1Hもこれらのレンズを利用できる。現在ラインナップされている本数は、パナソニックが11本、ライカ18本、シグマ17本の合計46本で、マウントアダプターを介することで既存のシネマレンズも利用できるという。