現役の将棋棋士は約170人。実力が拮抗する者同士が連日戦い、覇権を争っています。戦法の知識も、手を読むスピードも正確さもほぼ互角。そんな集団の中で一頭地を抜くために棋士はそれぞれ独自の武器を持っているものです。
豊島将之名人であれば、コンピュータソフトを用いた緻密な研究、藤井聡太七段であれば詰将棋で鍛えられた鋭い終盤力という具合です。その中で「逆転力」を武器にしている棋士といえるのが高見泰地七段です。
高見泰地七段が、棋王戦挑戦者決定トーナメント初戦突破
2018年に叡王戦で初タイトルを獲得。決勝の七番勝負では、金井恒太六段相手に何度も劣勢の将棋をひっくり返し、その逆転力の高さを見せつけました。逆転は相手のミスによって起こるものであり、心理的な面も大きく影響します。コンピュータの出現によって人間が指す将棋の価値が問われている今、「逆転」は観るものを魅了する人間ならではのドラマといえます。
2019年、防衛に失敗し叡王のタイトルを失った高見七段ですが、将棋年鑑のアンケートでは「令和の抱負を一言お願いします」の問いに「0から」と答え、捲土重来を誓っています。
8月27日には東京将棋会館で行われた第45期棋王戦挑戦者決定トーナメントで、大橋貴洸五段相手に一度は逆転を許したものの、最後ギリギリのところで再逆転し初戦突破を果たしました。タイトル奪還という目標に向かって0から走り出した高見七段。「逆転力」を武器にしたその魅力的な将棋から今後も目が離せません。