ビジネスの場において、スーツの足元で革靴が光り輝いていると印象が良くなることは間違いないでしょう。
そのためには、日頃から革靴のこまめな手入れとワックスでの磨き上げが欠かせません。中でもワックスでの磨き上げは知識とコツが必要で、ワックスの正しい使い方を知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ワックスを使用することで得られる効果・使い方、実際にワックスを用いた靴磨きの手順、そして意外と知られていない、ワックスを用いた靴磨きのデメリットなどを解説していきます。
革靴用ワックスの使い道や効果
ワックスを使用する一番の目的は、革靴を特別に光らせることです。お気に入りの革靴が美しく光っていると、見栄えがよくなり心地がいいものです。また、のぞき込んだ自分の顔が映り込むほどに磨き上げる「鏡面磨き(鏡面仕上げ)」をするためにもワックスは欠かせないアイテムです。
ビジネスの場では、清潔感のあるスーツとよく手入れした革靴を組み合わせることで、相手に好印象を与えられます。結婚式のような式典の場でも同じことが言えるでしょう。
また、ワックスは光沢を出す以外にも「防水効果」や「傷を目立たなくする」などの効果も期待できます。そういった点では、車に使うカーワックスをイメージしてもらえばわかりやすいかもしれません。
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ワックスの種類は? クリームとの違いって?
ひとえにワックスといっても商品ごとに特徴は違います。さらに、靴磨きにはワックス以外に「乳化製クリーム」も用います。ワックスを正しく使いこなすには、これらの違いを確認しておく必要があるでしょう。まずは、ワックスとクリームの違いからご説明します。
クリームは栄養補給、ワックスは光沢を出すために使う
靴磨きには2つの側面があります。1つは、革に栄養を与えて革の劣化を防ぎ靴を長持ちさせること。もう1つは、靴を磨きこんで光沢を出し、見栄えを良くすることです。そして、ワックスやクリームはそれらの用途に応じて使い分けが必要なのです。
まず、革の栄養補給には「乳化製クリーム」を使います。一般的に靴クリームといえば乳化製クリームのことをさします。主成分は革の栄養源である水と油と蝋(ろう)で、それらを混ぜ合わせるための乳化剤が含まれています。通常の靴磨きでは、汚れを落とした後にクリームを塗布し、ブラシで磨けば十分でしょう。ここからさらに、鏡面仕上げを施す場合にワックスを使います。
ワックスは、油と蝋が主成分で栄養補給には適しませんが、磨くと蝋の塗膜を作り、鏡面のような光沢を出せます。その反面、靴の屈曲する部分に塗ると塗膜が割れるなどのデメリットもありますので、正しい使い方を覚えておきましょう。
ワックスと油性クリームの違いとは?
ワックスと油性クリームはどちらも油と蝋で構成されており、その主成分はほぼ変わりません。または、どちらも栄養補給後に光沢を出すために使うものですが、ワックスと油性クリームでは使用方法が異なります。
ワックスは油性クリームよりも蝋を多く含むため鏡面仕上げに向いており、防水効果や傷を隠す効果も期待できます。ただし、使用には水を使うなど油性クリームに比べてひと手間かかる面もあります。 一方、油性クリームは油を豊富に含むため乳化製クリームのように簡単に扱えます。手軽に鏡面仕上げに近い光沢を出したい時には、油性クリームが適しているでしょう。
自分のイメージする仕上がりや手間を考え、ワックスと油性クリームを適宜使い分けるようにしましょう。
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実践! 革靴用ワックスを用いて靴を磨く
それでは実際に革靴にワックスを使うときの手順を詳しく見てみましょう。
ワックスを塗る下準備、まずはクリーニングから
と、その前に。そもそもワックスは仕上げの段階で使用するものであるため、まずは靴を綺麗にする必要があります。
1.シューキーパーを入れる
靴にシューキーパーを入れて、履きじわを伸ばして準備します。そうすることで、ムラなく仕上げることができます。
2.ほこりを取る
ブラッシングでほこりなどを取り除きます。ブラシは、馬毛のような毛先が柔らかいものを使うのがおすすめです。
3.汚れを取る
ステインリムーバー(水性のクレンジング剤)をクロスに染み込ませて、革の表面の汚れや汗や古いクリームを取り除きます。
4.クリームを塗る
クロスで乳化性クリームを塗り、栄養と潤いを与えます。塗る量が多くならないよう、薄く塗ります。また、ここで油性クリームを使ってしまうと十分に栄養分を与えられないので、乳化性クリームを使用します。
5.クリームを馴染ませる
ブラッシングしてクリームを均一になじませていきます。余分なクリームを取り除いていく効果もあります。ブラシは、豚毛のような毛先が硬めのものがおすすめです。
6.仕上げ
クロスで磨きあげます。これで下地は完成です。
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ワックスを用いた靴磨き手順
準備を終えたら、次にワックスを塗っていきます。
1.ワックスをつける
利き手の人差し指と中指の2本をクロスで覆い、薄くワックスを取ります。クロスで小さな円を描くように、つま先とかかとにワックスを塗ります。左右交互に2、3回程度塗っていきましょう。このとき、側面に塗ってしまうと履きじわの部分にあたり、乾いた後に割れるリスクが高まるので注意が必要です。
使うワックスの量は何度も試してみることでちょうどよい量を見つけるようにしましょう。最初はとにかく量を少なくし、全体に薄く広げながら始めることをおすすめします。
2.ワックスをなじませる
ブラッシングしてワックスを全体に広げてなじませていきます。馬毛のような毛先の柔らかいブラシを使用します。
3.水滴を垂らして磨く
ワックスを塗った部分に水を1、2滴たらして、クロスで円を描くようにして磨いていきます。表面を滑らすようにならしていくのがポイントです。また、水滴はたらしすぎないように注意することも必要です。
4.1~3の工程を繰り返す
好みの光沢が出るまで、塗り込み・ブラッシング・磨き……の行程を繰り返します。
ワックスを用いた靴磨きにはデメリットも?
ここまで、ワックスを用いた靴磨きの手法をご紹介してきましたが、ワックスを革靴に使うことのデメリットも少なからず存在します。ここでは主な3点をご紹介します。
ひび割れする可能性がある
ワックスをかけた後は、革の表面でワックスが乾燥して固まった状態です。そこに衝撃が加わると、ワックスがひび割れを起こし、革の表面までもひび割れてしまうことが稀にあります。
乾燥しやすくなる
革のコンディションを保つには、適度な栄養分と水分を与えることが必要です。ですが、革の表面をコーティングしてしまうことによって栄養分と水分を適度に吸収できなくなり、乾燥しやすくなってしまいます。
こまめな手入れをすることで古いワックスを適宜取り除き、乳化性クリームを塗って栄養分と水分を与えて乾燥を防いでいくことで、革靴を長持ちさせられます。
通気性が悪くなる
栄養分や水分だけでなく、革は空気も通しているので、コーティングしてしまうことで空気の通り道を塞いで通気性が落ちます。
以上のように、ワックスの使用には少しのデメリットも存在しますが、正しい使い方を覚え適切な手入れを施せば問題はありません。ワックスで磨きこまれた靴の美しさは、デメリットを補ってなお余りある魅力があります。ぜひ挑戦してみてください。
まとめ
以上、靴磨き時のワックスの使い方について紹介しました。おおよそのイメージはつかめたでしょうか?
革靴の一連の手入れの流れにおける、仕上げの手段の一つなので、ワックス単体での知識を得るというよりもどんな形で仕上げたいか、というイメージを持つことが大切です。
そのためにどのような行程を経る必要があるのか、どんなアイテムを使うのかを把握することで、ワックスをより効果的に使用することができ、より理想とする光沢をもった革靴に近づけることができるでしょう。