就活生や社会人にとって、身だしなみは大切なマナーの1つです。髪型やスーツだけではなく、足元への気配りも欠かせません。よく磨いた清潔感のある革靴を履くことは、そのまま相手に与える自身の印象に直結します。
靴の手入れにはすべての行程で「布」が必要になります。しかし、布とひとくちに言っても色々な種類が存在するため、革の種類ややりたい作業に応じて布を選ぶことが重要になってきます。それでは、靴磨きにはどのような布を用意すべきでしょうか。
そこで本稿では、靴磨きに使用する布について詳しく解説し、種類や使い方などをご紹介します。
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靴磨きの使用場面に応じた布の選び方
靴磨きには大きく3つの工程があります。それぞれ「汚れ落とし」「靴クリームの塗布」「鏡面磨き(鏡面仕上げ)」です。場面に応じて、適切な布は異なります。 布の種類によって、靴磨きに向くものと不向きなものがあることを理解しておきましょう。
1つの布だけで靴磨きを完結させることもできますが、やはり使い分けた方が効率も良いですし、仕上げの美しさにも影響します。
まず、靴磨きに使う布の基本は、“毛足が短めで毛羽立ちすぎない布を選ぶ”こと。あまり毛羽立つ布を使うと、毛がぼろぼろと抜け落ちて靴にこびりつき、かえって汚れてしまうからです。ちなみに、布のことを「クロス」と呼ぶ場合もありますが、どちらもほぼ同じ意味ですので、混乱しないようにしましょう。
それでは基本をふまえた上で、使用場面に応じた布をご紹介していきます。
汚れ落としには「粗め」磨きには「細かめ」の布を選ぶ
靴磨きに使用する布は、織り目の粗さや吸水性の違いを考慮しながら選びます。
汚れ落としに使う布は、効率よく汚れを絡めとるために、織目の粗いものが適しているでしょう。例えば、靴の汚れ落とし用品である「靴クリーナー」には水性タイプが多く、吸水性の良い布を使えば汚れをうまく吸着できます。
反対に、靴クリームの塗布や鏡面仕上げに使う布には、織り目の細かいものが適しています。革の表面を靴クリームやワックスで覆い、滑らかな塗膜を形成し光沢を出すためです。この時に使用する布の目が粗いと、靴クリームが均一にならず、なかなか綺麗に光ってくれません。また、「鏡面磨き」をしたい際には、水を使いながら磨く必要があるため、吸水性のある布が適しています。
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用途に応じて布を変更すべき理由
もし仮に、1種類の布だけで靴を磨く場合でも、最低限「汚れ落とし専用の布」「鏡面仕上げ専用の布」などと、行程専用の布を用意しましょう。クリーナーが付着した布では、鏡面磨きをしてもうまく仕上がりません。逆に、ワックスが付着した布を汚れ落としに使えば、かえって靴を汚すことになりかねません。もう一点追加すると、黒靴専用の布、茶色系専用の布と、色ごとに分けるのが理想です。
靴磨き用の布は「使い捨て」です
そして、布は基本的には「使い捨て」と考えましょう。布にこびりついた古い靴クリームは手入れの妨げになり、一度ついた靴クリームやワックスは、洗濯ではなかなか落とせないからです。
靴磨きに使うおすすめの布は?
前項では靴磨きに適した布について解説しました。それでは具体的に、どのような布を使うべきでしょうか?
靴磨きには、主に「使い古しのTシャツ」「コットン100%の布」「ネル生地」の3種類が使われます。すべてコットン製の布ですが、「コットン100%の布」とは、靴用品メーカーから販売されるお手入れ用の布(クロス)のことと定義します。織り目の粗さ、細かさなどの違いにより、靴磨きのそれぞれの行程に適した布があります。具体的にみてみましょう。
使い古しのTシャツ・コットン100%の布
靴磨き用の布を用意するにあたり、もっとも簡単に用意できるのが「使い古しのTシャツ」でしょう。もちろんTシャツ以外にも、コットン製の衣類であれば靴磨きに使えます。Tシャツは他の生地に比べて目が粗く、また吸水性が高いため汚れ落としに最適です。そのかわり、目が粗いため鏡面仕上げには適さないでしょう。
コットン100%の布は、販売される商品により、汚れ落としに適したタイプや鏡面仕上げに適したタイプがあります。織り目の細かさや毛足の長さに違いがありますので、用途に適した布を選んでください。
万能に使える「ネル生地」
ネル生地とは「フランネル生地」の略称で、毛足の短い繊維を織り、やや毛羽立たせた柔らかい布のことを言います。主にシャツや肌着、ベビー用品などに使われ、織り目が細かく吸水性もよいため、鏡面仕上げに適しています。
もし、複数の布の用意が面倒で1つだけ布を選ぶとしたら、ネル生地をおすすめします。目が細かく汚れ落としには向きませんが、吸水性もあり、靴靴磨き全般に使える万能な布だからです。
余談ですが、実は使い古したストッキングも靴磨きに使えます。ストッキングの生地は非常にきめ細かく、靴クリームを塗布した後にストッキングで磨くだけで、簡単に光沢を出せます。はき古しのストッキングなどが手元にある場合は、ぜひ試してみてください。
靴磨き用布のサイズは幅7~8cm×長さ50~60cmがおすすめ
用意した布は、そのままのサイズだと大きすぎて使いづらいので、靴磨きに適したサイズに切り分けましょう。サイズは、幅7~8cm、長さ50~60cmの帯のような形状が適しています。 もちろん、定規で測って切り分けてもいいのですが、幅は人差し指の長さを、長さは指先から肘までを目安にするといいでしょう。
切り分けた布は、利き手の人差し指と中指に巻いて使用します。巻き方が悪いと上手に磨けませんので、巻き方を次項で確認しておきましょう。
【写真で解説】布の巻き方のコツと注意点
靴を上手に磨くには、布の巻き方も大事な要素です。コツは、クリームをつける面にシワをよせず、ピンと張りながら巻くことです。シワが入った状態ではクリームを均一に塗布できないばかりか、指先の力がうまく伝わらず効率良く磨けません。
ここで紹介する巻き方であれば、靴クリームを均一に塗布でき、鏡面仕上げに大切な指先の感覚もそこないません。靴を美しく磨くために、布の巻き方もマスターしましょう。
布を巻く手順は以下の通りです。
1.切り分けた布を、人差し指と中指に乗せる
2.布をねじって張りながら、人差し指と中指に巻く
3.あまった布を残りの指で束ねて握る
靴磨きではよくあることですが、靴クリームが布から染み込んで手が汚れることがあります。靴クリームが手に付着すると、なかなか落ちずに厄介です。気になる人は指サックをはめておきましょう。指サックはゴム製ですから、靴クリームが染み込むことはありません。
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まとめ
靴磨きは、就活生や社会人の身だしなみに欠かせません。そして、靴を上手に磨くには、靴磨きの行程に応じた布を用意しましょう。靴の汚れを落とすには目の粗い布を、靴磨きの仕上げには目の細かい布が適しています。
中でも、ネル生地は吸水性もよく織り目も細かいことから万能に使えます。布の中でどれか1つを用意するとしたら、ネル生地がおすすめでしょう。また、用意した布はきちんと指に巻くことで、靴磨きの仕上がりもかわります。
この記事を参考に、ぜひ最適な布や靴クリームを用意し、靴を磨いてみてください。