東京2020パラリンピックも開幕まで残り1年。観戦チケットの抽選申込受付が8月22日よりスタートした。チケットは公式販売サイトにて申し込みが必要となり、12日間にわたる大会期間中の全22競技540種目が取り扱われる。

受付開始当日、都内ではPRイベントが開催され、パラアスリートの3選手と、くりぃむしちゅーの上田晋也さんが登壇。パラスポーツの魅力を語った。

  • 東京2020パラリンピック観戦チケットの抽選申込受付が開始。22競技540種目のチケットが用意されている

    東京2020パラリンピック観戦チケットの抽選申込受付が開始。22競技540種目のチケットが用意されている

抽選申込から購入手続きまで

チケットの購入にはオリンピックと同様、申し込みにあたって「TOKYO 2020 ID」への登録が必要となる。申込期間は8月22日~9月9日(11時59分)で、10月2日に抽選結果が発表。購入手続期間は10月2日~10月15日となっている。

  • 抽選申込から購入手続きまでの流れ

    抽選申込から購入手続きまでの流れ

チケットの席種はA~E席まで最大5種類を用意。「開閉会式」の観戦チケットは8,000円から15万円までと価格が幅広い。一方で、競技の「一般チケット」の価格は900円から、グループで申し込む「東京2020みんなで応援チケット」は500円からとリーズナブルに設定されている。

  • パラリンピック観戦チケットの販売スケジュール(Tokyo 2020 提供)

    パラリンピック観戦チケットの販売スケジュール (Tokyo 2020 提供)

パラスポーツならではの苦労とは

PRイベントではパラアスリートの3選手が招かれ、トークセッションを実施。パラスポーツならではの苦労や魅力が語られた。

  • 木村敬一選手、重本沙絵選手、マルクス・レーム選手

    (左から)木村敬一選手、重本沙絵選手、マルクス・レーム選手

木村敬一選手は、2012年ロンドンパラリンピック、2016年リオデジャネイロパラリンピックの水泳競技に日本代表として参加。ロンドンでは銀メダルと銅メダルを1枚ずつ、リオでは銀メダルと銅メダルを2枚ずつ獲得している。

2歳で病気のために視力を失い、小学4年生で水泳を始めたという木村選手。パラリンピックの水泳については、「(目が見えないと)真っすぐに泳ぐことが難しい。だからコースロープを頼りに、それに沿って泳いでいます。でもいつか、ロープを引きちぎってやろう、そんな思いで力強く泳いでいるんです」と語り、笑顔を見せた。

2016年のリオデジャネイロパラリンピックにて陸上女子400mで銅メダルを獲得した重本沙絵選手は、生まれつき右ひじから先を欠損しながらも、学生時代にはハンドボール選手として健常者に混じってプレーしてきたという過去を持つ。トークセッションでは陸上競技と向き合った日々を振り返り、「義手をすると、走ったときに身体のバランスが崩れます。でも腕が短いと、コーナーを曲がるときに腕が振れなくなる。そこで、重さを変えられる新しい義手をつけた秘密の練習を開始しました」とコメント。

ドイツのマルクス・レーム選手は、パラリンピック3冠、走り幅跳び世界記録(8m48)保持者といった輝かしい経歴を持つ義足のアスリートだ。14歳のときにウェイクボードの練習中の事故で右足のひざ下を切断したものの、2年後には義足をつけて同競技に復帰。その後、陸上競技に転向して才能を開花させ、世界で最も成功したパラアスリートのひとりと称されている。「目標は8m50以上です。東京で結果を残したい。そして(パラリンピックだけでなく)いつかオリンピックにも出場したい、そんな気持ちでいます」と意気込みを語った。

  • レーム選手の飛んだ「8m48」を会場で再現。重本選手は「レーム選手の飛ぶ姿を何度か拝見していますが、いつも砂場が足りなくなるのではとヒヤヒヤします」と語った。

    レーム選手の飛んだ「8m48」を会場で再現。重本選手は「レーム選手の飛ぶ姿を何度か拝見していますが、いつも砂場が足りなくなるのではとヒヤヒヤします」と語った。

上田晋也さんは「東京2020パラリンピックでは、オリンピックでおなじみの競技のほか、パラ競技ならではのボッチャ、車いすラグビーなども行われます。いろんな楽しみ方ができるので、多くの方に会場まで足を運んでいただき、その魅力を探って欲しいと思います」とアピールした。

パラスポーツのゴールモデルを目指して

イベントでは、記者団からの質問に登壇者が答える場面も。

パラスポーツの普及について聞かれると、木村選手は「まだパラリンピックの知名度は、オリンピックには敵わない状況です。僕たちにできることがあるとすれば、それは日本人選手が強くなること。日本では、テニスなら錦織圭さんが、フェンシングなら太田雄貴さんが活躍したことで知名度が上がったでしょう? 」と分析。自分たちが活躍することで、パラ競技の人気を高めていければ、と意欲的に語った。

また、重本選手は「陸上競技を始めた2015年に比べると、観客も増え、メディアに取り上げられる回数も増えてきました。障がいを持っても頑張れるところがある、人と繋がれるツールがある。それを伝えていくために、たくさんの方に足を運んでもらえる大会にしていけたら」と話した。

  • パラスポーツの普及、そしてパラリンピックの意義について各選手が熱い思いを語った

    パラスポーツの普及、そしてパラリンピックの意義について各選手が熱い思いを語った

パラリンピックの意義について、レーム選手は「私のように義足をつけた人が、ショートパンツを穿いて街を歩ける社会になってもらえたら嬉しいです。障がいと言いますが、それもヒトの個性なんです。背の高さ、髪の色、鼻の高さ、みんな違いますがそれと同じこと。障がいを隠すのではなく、むしろ誇りに思える世界になって欲しい。多様性のある社会の実現、そのゴールモデルに2020年の東京がなってもらえたらと思っています」とコメント。

最後に、上田さんは「パラリンピックを見た子どもたちが、自分もこういう選手になりたいと夢や将来の目標を抱く、そんなきっかけをつくる大会になるのではと期待しています」と締めくくった。