現在、将棋の道を志す女性には2つの選択肢があります。「棋士」になるか、「女流棋士」になるかです。「棋士」になるには原則として棋士養成機関である「奨励会」に入会し、長く厳しい戦いを勝ち抜く必要があります。羽生善治九段や藤井聡太七段も奨励会をくぐり抜けて棋士になりました。一方、「女流棋士」になるには「研修会」と呼ばれる養成機関で好成績を挙げるなどの条件を満たす必要がありますが、基本的には「棋士」になるほうが「女流棋士」になるより、はるかに困難な道であるといえます。

加藤桃子女流三段がリコー杯女流王座戦でベスト4へ

加藤桃子女流三段

加藤桃子女流三段は「奨励会員」から「女流棋士」へ転身した女性です。2006年に奨励会入りし、棋士を目指して戦ってきましたが、2019年4月、その道を諦め女流棋士になりました(※奨励会で一定以上の成績を残していると退会時に女流棋士の資格を得ることができます)。

10年以上、棋士になるために生活を捧げてきた、その道を諦める決断をした加藤女流三段の心情は想像することもできませんが、本人はTwitterで「奨励会退会は自ら諦め手放す訳ですから葛藤、気が重い日々でした。決断できてからは、前向きに明るく過ごせています。何より新しく経験を積ませて頂ける環境に感謝しています」と未来に向けたコメントを発信しています。

その加藤女流三段ですが、4月に女流棋士になってからここまで負けなしの4連勝!(未放映のテレビ棋戦除く)と快進撃を続けています。8月20日(火)には東京・将棋会館で行われた第9期リコー杯女流王座戦本戦トーナメント準々決勝で、中井広恵女流六段を破りベスト4進出を決めました。

次の対戦相手は奨励会に所属する西山朋佳女王(※奨励会員もいくつかの女流棋戦に参加することができます)。西山女王は奨励会で棋士まであと一歩というところまで迫っています。加藤女流三段との対局は目が離せない注目の一局です。

奨励会に所属しながら戦う女性、奨励会を退会し女流棋士として戦う女性、はじめから奨励会に入会せず女流棋士として戦う女性。

それぞれの思いを胸に日々争われているのが女流棋戦です。そのような視点で彼女たちの将棋を鑑賞してみるのもいいかもしれません。