JR西日本は20日、鶴橋駅で「可変案内サイン」「駅空間演出」の実証実験を報道公開した。2023年春に開業予定のうめきた(大阪)地下駅(仮称)を強く意識しているとのことで、JR西日本がめざす新たな駅のあり方が見られる実証実験となった。
鶴橋駅での「可変案内サイン」「駅空間演出」の実証実験は8月12日から始まり、2020年1月頃まで行われる予定。うめきた(大阪)地下駅におけるサービス提供の実現の可能性を検討する。うめきた(大阪)地下駅は「JR西日本技術ビジョン」の具体化に挑戦する駅と位置づけられ、「『あなた』が笑顔になる駅」をコンセプトにしている。
実証実験に鶴橋駅が選ばれた背景として、まず利用客の多い近鉄奈良線・大阪線との乗換駅であることが挙げられる。加えて、近鉄奈良線沿線にある東大阪市花園ラグビー場がラグビーワールドカップ2019日本大会の開催会場となっており、より多くの利用客が見込まれることも大きな要因とされている。
デジタルサイネージを活用した「可変案内サイン」は、鶴橋駅の外回り(天王寺方面)ホームにある近鉄乗換専用改札口付近に設置された。ホームからすぐ近鉄の改札口が見えるため、出口と間違える利用客が後を絶たないとのこと。
そのため、裏表6枚の画面を駆使し、「ここは出口ではありません」や「近鉄電車のりば」などの案内を繰り返し表示。訪日観光客対策として4カ国語(日本語、英語、中国語簡体字、韓国語)に対応している。
この「可変案内サイン」の導入により、うめきた(大阪)地下駅におけるシームレスな移動の実現に期待が寄せられている。
プロジェクションマッピングを活用した「駅空間演出」は、鶴橋駅の中2階コンコースにて実施。コンコースの両側で、大阪に関するPR動画をプロジェクターで表示した。中2階コンコースで実証実験を行う理由として、地下駅の環境と類似している点が挙げられている。うめきた(大阪)地下駅においても、開業後はなんらかの形でこのようなコンテンツが見られるだろう。
なお、鶴橋駅で表示されるプロジェクトマッピングは「おもてなし」を意識したものであり、運行情報などは表示されない予定とのことだ。
今回の実証実験はうめきた(大阪)地下駅の開業を前提に実施されるが、他の駅では採用されないのだろうか。これに関して、取材に応じたJR西日本技術企画部担当課長の川本亮氏は他駅への導入の可能性にも言及。「現時点では検討していないものの、今回の結果を見て利用客の反応が良ければ、うめきた(大阪)地下駅の開業を待たず、通常営業で可能なことからやっていけばいいのではないかと思います」と述べた。