Indeed Japanは8月8日、文部科学省が指定・活動を支援するスーパーサイエンススクール指定校である西大和学園高等学校の1年生を対象に、将来の仕事探しを支援するプログラミング実践授業を開催した。
求人・求職をサポートする同社とプログラミングという組み合わせは意外な感じを受けるかもしれないが、同社の求人検索サイトを使ってみると、よく分かる。
例えば、「アルバイト」という言葉で検索をかけると、一瞬で100万件以上の求人がヒットするという。しかも、AIにより、使えば使うほど検索した人の指向にマッチした案件が上位に表示される仕組みになっている。
これを可能にするのが、世界No.1(※)の訪問数がある「求人検索エンジン」だ。同社では、事業の肝と言えるこのシステムの開発を進めるため、たくさんのエンジニアが活躍しているのだ。
※comScore調べによる2019年3月の訪問数
Indeed Japanのトップエンジニアが語るAIの可能性
今回のプログラミング実践授業は、同社のトップエンジニアの1人である落合徹氏の講演と、プログラミング授業の2部構成で行われた。なかでも、印象深かったのが落合氏の講演で、AI技術の話は分かりやすく、かつ非常に面白いものだった。
例として挙げられたのが、囲碁におけるAIソフトの進化だ。
「囲碁は勝負がつくまでに、2×10の170乗という膨大な手の可能性があります。いくらコンピュータでも、これだけの演算を短時間に行うことはできません。囲碁でAIが人間に勝つのは、21世紀中は難しいと言われていました。ところが、2017年には世界のトッププロに勝ったのです。それを可能にしたのが、ディープラーニング(深層学習)です」。
ディープラーニングとは、音声の認識や画像の特定、予測など人間が行う複雑な作業を実行できるようコンピュータに学習させる手法だ。囲碁AIでも、この技術を使ってコンピュータに学習させ、すべての手を検証しなくても勝つ可能性が高い手を打てるようにしたのだ。
急速な進化を見せるAIは、社会のいたるところで導入が進んでいる。エンジニアとして検索エンジンの開発にあたる落合氏は、AIの持つ可能性を次のように語る。
「フランスの小説家、ジュール・ヴェルヌは『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』と言いましたが、AIなら人間が想像できないことも機械で実現できるようになる。2045年には、AIが人間の脳を越えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達すると言われています」。
AIは仕事を人間から奪うのか
こうしたAIの驚異的な進化は、私たちの暮らしに何をもたらすのか。一説には、人間の仕事がAIに取って代わられ、なくなる職業もあるといわれているので、講演後の落合氏に聞いてみた。
「こうした技術革新は、人類の長い歴史の中で、何度も起きてきたことです。大切なのは、それに対応できるスキルを身に付けること。エンジニアもそのひとつで、日本ではまだまだ地位が低いですが、世界では非常に高いものがあります」。
実際、日本では政府が2018年に統合イノベーション戦略を策定。2025年までに先端IT人材を年数万人規模で採用・育成する体制を整える政策が進んでいる。また、世界的にIT人材の獲得競争が激しくなる中、日本でも新卒で1,000万円以上の報酬が得られる人事制度を導入する企業も、同社をはじめ徐々に現れている状況だ。
エンジニアという仕事の楽しさを体感
第二部では、落合氏を含むエンジニア5名が講師になって、参加した高校生が実際にゲームや自由落下のプログラムを作成する授業を実施。最後には、成果発表も行われた。
どのチームの発表も、「未来を創るプログラミング」というイベントの名称にふさわしい創造性に富んだもの。講師を務めたトップエンジニアからも「斬新な発想力に刺激を受けた」という高い評価があった。
本イベントの目的として「現実世界とAIのつながりを体験することで、エンジニアという仕事の楽しさを知ってもらいたかった」と語る落合氏。
狙い通り、高校生がエンジニアという仕事に対する興味を深めたことはもちろん、AIの持つ可能性の大きさも十分に感じられた授業だった。私たちも、AIが社会に与えるインパクトにしっかり目を向けていないと、時代に取り残されることになるかもしれない。