地方公共団体の一員として、地域の住民のために働く「地方公務員」。地方公務員は、そこに住む人たちが安全で快適に暮らしていけるよう業務にあたります。一般的な企業に勤める会社員とは異なる地方公務員ですが、そのお金事情はどのようなものなのでしょうか。今回は、地方公務員の給与やボーナス、退職金などについてまとめてみました。
地方公務員とはどんな仕事?
地方公務員とは、地方公共団体に属し、地域の生活環境を整えるための様々な仕事をする人のことを言います。地方公務員の勤務先は、各都道府県庁や市町村役場などのほか、公立の学校や図書館、病院、福祉施設などがあります。また、警察官や消防士、ごみ処理や清掃に携わる業務に就く地方公務員もいます。このように、文化、教育、福祉、治安など、私たちの生活に関わる全ての業務を地方公務員が請け負っていると言っても過言ではないのです。
なお、地方公務員には「一般職」と「特別職」があります。特別職とは、知事や副知事、市町村長や地方議員といった地方公務員法によって定められている役職を持つ人のことです。一般職とは、それら以外の職員を指します。
地方公務員の給与
地方公務員の給与は、各自治体で定められている「給与表」によって給与が決まります。では、地方公務員の給与はどのくらいなのでしょうか。総務省が発表している「平成30年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、地方公務員の平均給与月額は、37万4,163円となっています(平均年齢41.9歳)。
次に、同じデータで「団体区分別平均給与月額(一般行政職)」を見てみると、以下のようになりました。なお、「一般行政職」とは、役所において事務的な業務を行う人のことを言います。
・全地方公共団体(平均年齢42.2歳)……362,973円
・都道府県(平均年齢43.1歳)……369,953円
・指定都市(平均年齢41.8歳)……379,849円
・市(平均年齢41.9歳)……358,338円
・町村(平均年齢41.3歳)……330,969円
・特別区(平均年齢41.2歳)……386,614円
同じく、「職種別平均給与月額(全地方公共団体)」では、以下の通りです。
・一般行政職(平均年齢42.2歳)……362,973円
・技能労務職(平均年齢50.5歳)……356,487円
・高等学校教育職(平均年齢44.8歳)……416,207円
・小・中学校教育職(平均年齢42.6歳)……399,747円
・警察職(平均年齢38.4歳)……368,727円
このうち「技能労務職」とは、行政職(事務職)や技術職(専門職)以外の、現場の業務を行う人です。具体的な仕事内容としては、調理師や清掃員、用務員、運転手などが当てはまります。
公務員の給与は、総じて、勤続年数とともに上がっていく年功序列の給与体系です。民間企業のように、個人の成績が給与に影響することはなく、基本的には、勤める年数が長くなるほど基本給が上がっていきます。
ちなみに、民間企業の平均給与と比較してみると、どうでしょうか。こちらは年収のデータになりますが、国税庁の「平成29年分民間給与実態統計調査結果について」によると、民間企業の平均年収(給与所得者の年間の平均給与)は、男性(平均年齢45.9歳)が531万5,000円、女性(平均年齢46.2歳)が287万円、男女計(平均年齢46.0歳)では432万2,000円となりました。
地方公務員のボーナスや退職金
地方公務員の給与については先述の通りですが、では、ボーナスや退職金はどのくらい支給されるものなのでしょうか。
まず、ボーナスについてです。総務省が発表している平成30年分のデータから、ボーナス(期末・勤勉手当)の支給状況を、都道府県と政令指定都市ごとにいくつか抜き出してみました。
■都道府県(一般職員)
・北海道(平均年齢44.3歳)……期末手当931,200円+勤勉手当656,000円=1,587,200円
・東京都(平均年齢40.9歳)……期末手当989,600円+勤勉手当745,700円=1,735,300円
・神奈川県(平均年齢43.6歳)……期末手当1,027,000円+勤勉手当685,700円=1,712,700円
・大阪府(平均年齢42.9歳)……期末手当1,04,400円+勤勉手当745,700円=1,786,100円
・福岡県(平均年齢44.1歳)……期末手当992,600円+勤勉手当677,500円=1,670,100円
・沖縄県(平均年齢41.1歳)……期末手当875,900円+勤勉手当566,900円=1,442,800円
■指定都市(一般職員)
・仙台市(平均年齢42.3歳)……期末手当939,900円+勤勉手当683,400円=1,623,300円
・横浜市(平均年齢42.1歳)……期末手当1,061,900円+勤勉手当742,300円=1,804,200円
・名古屋市(平均年齢42.4歳)……期末手当973,100円+勤勉手当695,700円=1,668,800円
・広島市(平均年齢41.2歳)……期末手当1,011,900円+勤勉手当642,500円=1,654,400円
ボーナスの支給額を見てみると、概ね、人口の多い都市部の都道府県や指定都市ほど高くなる傾向にあるようです。
次に、退職金について見てみましょう。総務省発表の「平成29年4月1日地方公務員給与実態調査結果」によると、地方公務員の退職金の平均額は約2,263万円となっています。地方公務員の退職金は年々減少傾向にあるものの、民間企業と比較してみても、大手企業の退職金に相当する金額が支給されていることがわかります。
地域をよくする情熱が求められる地方公務員
以前と比べると、業務の多くが民間企業に委託されるなど、公務員を取り巻く環境は変化しています。地方公務員の安定性や待遇についても様々な声がありますが、それでもなお、地方公務員のお金事情は恵まれていると言えそうです。ただし、多様化する世の中のニーズに応えていくことは、簡単なことではありません。待遇の良さを差し引いても、地域のために働く情熱がなければ、務まらない仕事なのではないでしょうか。