井上荒野の小説を志尊淳主演で実写化し、関西テレビなどで放送されたドラマ『潤一』に、ベッドシーンなどいくつかのシーンを追加した『潤一 ディレクターズカット版<PG-12>』が、日本映画専門チャンネルで9月8日に全6話一挙放送される(志尊淳インタビューも放送)。

6人の女性たち(藤井美菜、夏帆、江口のりこ、蒔田彩珠、伊藤万理華、原田美枝子)と、ミステリアスな青年・潤一との刹那の愛を描いた『潤一』は、世界で制作された連続ドラマを対象とするドラマの祭典、フランス・カンヌ国際シリーズフェスティバルのコンペティション部門に、日本作品として初めて正式出品された。カンヌ初参加を経験した志尊に、海外での反響や、心の中に芽生えた変化などを聞いた。

  • 志尊淳

    俳優の志尊淳

――本作でカンヌに行かれました。現地の取材で印象に残っていることはありますか?

一番感じたのは、日本では官能的な作品だという部分をピックアップされることが多いですが、フランスの方にとってそこは普遍的なことで、そこから生まれるものや、潤一の存在意義といったものに着眼されている方が多いと思いました。そして、自分のなかで消化した『潤一』という作品をすごく情熱的に伝えてきてくださいました。アフターパーティでいろいろ話しかけていただいたのですが、「いいか、あれはファンタジーで、潤一というのは存在しないんだ!」と力説されたこともありました。

――日本では、潤一を演じた志尊さんにそう断言する人はいなそうです。

そうですね(笑)。日本でもカンヌでも、僕の答えとして共通させていたのは、明言しないことです。この作品は観る人の感覚によって変わってくる。カンヌでも先ほどの方のように、僕に断言する方もいれば、「本当はどうなんだ? あそこはどういうことなんだ。教えてくれ」という方も結構いました。でも僕は「あなたの中で生きているものが正しいものだと思います」と答えていました。僕の答えによって『潤一』の世界を狭めてしまうことはしたくないんです。

――国際的なフェスティバルに行かれたことで、新たに芽生えた思いはありますか?

これまで、世界に発信できる機会というのは、僕にはないと思っていましたし、世界に行きたい、世界で役者をやりたいといったことは、簡単に言えるものじゃないと思っていましたし。もちろん覚悟が必要だし、そこに対して僕自身あまり意識もしていませんでした。でも、今回、日本でやらせていただいた延長線上に海外に届けられる機会があるんだということを、少しですが実感できました。

  • 志尊淳

――では今後は海外も視野に?

今までどおり、自分にできることを精いっぱいやって、色んな方々に支えていただいた延長線上に、海外の人に届けられる作品に、また出会えたらいいなと思っています。

――本作には6人の女性たちが出てきます。なかでも最後に登場する美夏さんとの関係性は特別ですね。

6人には悲哀のオーラをまとった共通点を感じました。そのなかで、美夏ちゃんとの距離は一番近かったと思います。明確な答えがあるわけではありませんが、美夏ちゃんは、一番孤独な人かなと。彼女以外の女性たちは、旦那さんがいたり彼氏がいたり、家族がいたりする。そのなかで美夏ちゃんはすごく孤独を感じていて、潤一と共鳴する部分が少なからずあったのだと思います。好きとかいう感情とはまた別に、なにかざわざわする感覚がありました。

――役に入り込んで、引きずってしまうことはありませんでしたか?

「役を引きずる」といったことって、いままで、全くないんです(笑)。ただ、潤一を演じているときは、スタッフさんとはすごくコミュニケーションを取りましたが、潤一の中での関係性を大切にしたかったので相手の女優さんとはあまりコミュニケーションを取っていませんでした。意図的にそうしていたわけではありませんが、今までで一番喋っていないと思います。

――そうした現場の空気も映像に出ているのかもしれません。

そうだと思います。距離感はリアルだと思います。本当は、プロなのだからどんな関わり合いだったとしても役を演じなければとは思うのですが。余裕がなかったのかな。あまりないことなんですけど、『潤一』に関しては、客観視できませんでした。

  • 志尊淳

■プロフィール
志尊淳
1995年3月5日生まれ。東京都出身。2011年に俳優デビューし、2014年には『烈車戦隊トッキュウジャー』のトッキュウ1号役で主演。その後も、数々の作品に出演し、2018年には『女子的生活』のトランスジェンダー役が評価され、第11回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」主演男優賞、平成30年度文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門放送個人賞を受賞した。7月スタートのドラマ『Heaven?~ご苦楽レストラン~』(TBS系・毎週火曜22:00~)に出演中。映画『劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~』、『HiGH&LOW THE WORST』などの公開、舞台NODA・MAP第23回公演『Q:A Night At The Kabuki』への出演を控えている。