時短勤務は、福利厚生がしっかりしている大企業だけの制度と思っている人は多いのではないでしょうか。実は、法律で定められているので、一定の条件を満たしていれば誰でも利用できます。そこで、利用できる条件や方法など、時短勤務について知っておきたいことを詳しく解説します。

  • 時短勤務の使い方を徹底解説!

    時短勤務の使い方を徹底解説!※画像はイメージ

短時間勤務制度とは

短時間勤務制度は、2009年の育児・介護休業法改正にともない、設けられました。1日あたりの所定労働時間は、原則として6時間以内(労働時間によって5時間45分から6時間まで)と規定されています。

それまでの社会では、仕事と家庭の両立は大変困難なものであり、特に女性は結婚・出産・子育てなど、ライフイベントの訪れによって、仕事を辞めざるを得ない状況がありました。そこで、労働者が仕事を続けながら育児や介護ができるよう、制度の導入が事業者(従業員101人以上)に義務付けられたのです。

その後2012年には、制度導入が猶予されていた100人以下の事業主にも適用されることになります。これによって、短時間勤務制度は全面施行となりました。

育児による短時間勤務制度

育児を理由とした場合、以下5つすべてに該当していれば、利用することができます。

1.3歳に満たない子を養育する労働者であること
2.1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
3.日々雇用される者でないこと
4.短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
5.労使協定により適用除外とされた労働者でないこと※

※「当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者」「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者」のいずれかに該当する者

こうした時短勤務が適用できない場合には、代替措置が求められており、育児休業に関する制度に準ずる措置、または「始業時刻変更等の措置」を講じなければならないとされています。具体的には、以下のような対応が求められます。

1.フレックスタイム制度
2.始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤の制度)
3.労働者の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(会社内に保育所を設けて、ベビーシッターの費用を会社が負担するなど)

介護による短時間勤務制度

短時間勤務制度は、要介護状態にある家族を介護する場合にも適用されます。介護休業法では連続する3年以上の期間で、以下のいずれかの措置を講じなければならないと規定しています。

1.所定労働時間の短縮措置(時短勤務)
2.フレックスタイム制度
3.始業・終業時刻の繰り下げ・繰り上げ(時差出勤の制度)
4.労働者が利用する介護サービス費用の助成またはそれに準じる制度

2017年の改正では、介護休業とは別に、利用開始から3年以上の期間でこれらの措置を2回以上利用できることが定められました。これによって、時短勤務を利用した後に介護休業を取り、また時短勤務に戻るといった使い方も可能になりました。ほかにも、要介護状態にある家族を介護する労働者は、介護の必要がなくなるまで、残業(所定外労働)の免除が受けられるように、規定が変わっています。

延長はできないの?

短時間勤務制度は、仕事と家庭の両立を実現することを目的とした制度です。そのため、育児・介護休業法では、時短勤務対象外とされる労働者であっても、代替措置を設けるなどの努力義務を事業者に課しています。職場で制度が整っていない場合、会社に交渉してみても良いかもしれません。

短時間勤務、実際にはどうやって使う?

このように、育児・介護休業法の改正によって、要件を満たせば、すべての企業で、時短勤務を利用できるようになりました。まずは、会社が独自の制度を設けていることもありますので、就業規則などを確認しましょう。

短時間勤務制度の適用を受けるための手続きについては、基本的に事業主が定めることとなっています。その際、利用者の不利益とならないように、次のような配慮が求められています。

(1)短時間勤務制度の手続き方法
制度の利用のハードルが上がるような煩雑な手続きは避け、育児休業や所定外労働の制限など、育児・介護休業法に定める他の制度に関する手続きも参考にしながら適切に定めることが求められます。

(2)不利益取り扱いの禁止
短時間勤務制度の適用を申し出たことや、制度の適用を受けたことを理由として、解雇、雇い止め、減給等の不利益な取り扱いを行うことは、育児・介護休業法で禁止されています。

(3)制度の周知
せっかくの短時間勤務制度があっても、それが従業員に知られていなければ、利用されることはありません。事業主は就業規則に明記し、新人研修などで社員に啓蒙するなど、周知に努める必要があります。

これらは、会社側の手続き方法の取り決めや制度の利用についての注意点となりますが、利用する側も、早いタイミングで制度利用の意思表示をすることで、業務に支障をきたすことなくスムーズに利用することができます。

育児に関する制度では、産休、育休、時短勤務という順序で制度を利用することが多いと思います。産休に入る前に、時短勤務まで見越した復帰計画を上司と相談しておきましょう。

手続きの仕方としては、一般的に、短時間勤務の申請書を、短時間勤務開始の1カ月前までに総務部や人事部に提出するといったケースが多いようです。

短時間正社員という選択肢も

これまで、短時間勤務制度は育児や介護を行いながら仕事との両立を目指す制度として紹介してきましたが、育児や介護といった理由に縛られず、フルタイム正社員より短い労働時間で働ける「短時間正社員」という制度もあります。

厚生労働省が定めている雇用形態の一つで、体力的に労働時間を短くしたい、勉学と両立したい、定年後にフルタイム以外で働きたいなど、さまざまな人材が活躍できる仕組みとして設けられました。適用されるには、以下のいずれにも該当する必要があります。

(1)期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
(2)時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等

企業側にとっては、短時間であれば勤務が可能な優秀な人材を確保できる、離職を減らすことができるなどのメリットがある一方で、雇用者にとってはデメリットもあります。労働時間が減ることで給与が少なくなること、フルタイム勤務の社員と業務内容が異なってしまったり、それによってキャリアアップに支障が出たりすることなどです。

しかし、近年のワーク・ライフ・バランスを重視する働き方に見合った制度であることは確かであり、今後さらに注目されるのではないでしょうか。

まとめ

ここ数十年で日本の労働者の働き方は大きく変わりました。長時間労働が評価され、ガムシャラに働くことが持ち上げられていた時代から、働き方改革として、ワーク・ライフ・バランス、仕事と家庭の両立など、柔軟に働くことが求められる時代となりました。

男性も女性も、育児休暇、介護休暇を取りやすい企業が評価されるようになってきています。こうした中で、「時短勤務」は選択肢として有効であり、制度の導入が事業主の義務となった現在、我々も躊躇せずに利用できるような職場環境を作り上げることが求められています。

石倉博子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
“お金について無知であることはリスクとなる”という自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。