コーヒー好きが高じて喫茶店のオーナーになり、本まで出した家電流通コンサルタントの得平 司 氏が、コーヒーメーカーの正しい選び方を紹介します。美味しいコーヒーを飲むためには努力を惜しまない人だけに、気になる製品を1つずつ実際に購入し、歯に衣着せずに評価していきますよ! 第2回は、「スタンダード」をコンセプトに掲げた象印マホービンのブランド「STAN.」シリーズから、「EC-XA30」を取り上げます。

  • 今回も自腹で買ってレビューします! 象印マホービン「STAN. EC-XA30」です

コーヒー豆の酸味の美味しさを楽しめるコーヒーメーカー

今回は、象印マホービンのSTAN.シリーズに注目しました。ミルを搭載しないモデルとして比較的求めやすい価格帯の中でも、炊飯器やホットプレートなど他の調理家電と同じデザインでそろえられることから、インテリア重視な人も気になる製品。肝心のコーヒードリップの性能はいかに。

  • EC-XA30と得平氏。本体のコンパクトぶりが分かります

  • 得平司(とくひらつかさ)
    フワッティ・カフェ代表。2015年、東京・千駄木団子坂下にフワッティ・カフェをオープンする。世界から集めた10種類程度のコーヒー豆を自家焙煎し、注文を受けてから1杯1杯コーヒー豆を挽き、ハンドドリップで提供している。本業は家電流通コンサルタントであり、株式会社クロスの代表。コーヒー文化推進のため、本連載ではコーヒーメーカーを1台ずつレビューして、そのマシンで美味しく淹れるコツや、自分に合った製品の選び方を分析。

STAN. EC-XA30のスペック

  • 発売日:2019年2月
  • ミル:非搭載
  • フィルター:ペーパーフィルター
  • 満水容量:0.42L
  • 一度に淹れられるカップ数:1~3カップ
  • 本体寸法:W150×D225×H235mm
  • 重量:約1.8kg
  • 本体カラー:ブラック(BA)
  • 7月10日購入の実売価格は税別10,000円(税込10,800円)。次回以降の買い物で使えるポイントは1,100P!(1P=1円)

コーヒーを淹れるときは、沸騰したお湯は使わない

コーヒーを美味しく淹れるには、いくつかテクニックがあります。その1つが、ドリップするときのお湯の温度です。

得平:沸騰したお湯(100℃)を使うのは、あまり良い淹れ方とはされません。雑味が出やすいからです。好みによる差はありますが、理想は90~95℃といわれています。ハンドドリップの場合、お湯を沸かしたあと1分ほど時間を置いて、少し冷ましてから淹れるのがコツ。

  • ダブル加熱 95℃抽出の仕組み(象印マホービンのWebサイトより)

今回試したEC-XA30は、「ダブル加熱 95℃抽出」機能を備えています。これは水をヒーターで2回加熱して、熱湯と蒸気でコーヒー豆全体を蒸らしてからドリップする仕組み。バスケット内のコーヒー粉中央付近は、最高温度が95℃以上になるように調整されます。

コーヒーを美味しく淹れるテクニックの1つを機械で実現しているとなると、実際に美味しく淹れられるのか、試すのがワクワクしますね。

EC-XA30の水を入れるタンクは、アイスとホットで目盛りが分けられ、カップとマグカップの目安もそれぞれ目盛りが付けられています。これは分かりやすいと感じました。

  • 水を入れるタンク

付属の計量スプーンも工夫が凝らされています。飲みたいコーヒーのサイズごとに、どのくらいすくえばよいか、柄に記載されています。カップ1杯ならこのスプーンで1杯。マグカップ1杯ならこのスプーンで1杯と半分といった具合。コーヒーを淹れるのに慣れていない人でも分かりやすいですね。

  • 付属の計量スプーンは擦り切りで約9g入ります

  • 計量スプーンの柄には目盛りが

コーヒーは細く挽くか粗く挽くかで濃さが変わる

コーヒー豆は前回と同様、近所のタリーズで調達しました。実際に抽出すると、ドリップの湯滴がハンドドリップで「の」の字を描くように、5つの穴で順番に調整しながら出てくる様子が見られます。ある程度進行すると、5つの穴から同時にお湯が落ちるようになります。

  • 湯滴は5つの穴から順番に調整しながら出てきます

  • ドリップの様子を見守りながら、「よく考えてあるね」と感心する得平氏

最初の抽出では、予想外のことが起きました。マニュアル通りの分量で2カップ分を抽出しましたが、できあがったものを飲んでみると明らかに濃いのです。濃度計で計測すると1.72%でした。通常は、1.00%~1.10%なので、かなり濃いことが分かります。

  • 最初に淹れたとき、濃さを濃度計で測ると1.72%でした

濃い目に抽出する仕様だとしても濃すぎるので、何度か淹れ直しながら調べると、アシスタントの筆者がタリーズで調達したコーヒー豆が「細挽き」になっていたことが原因でした。

EC-XA30の取扱説明書では、コーヒーがあふれてやけどの恐れがあるので、細挽き粉を使用しないようにと書かれています。いきなり失敗です。

得平:細挽き粉でドリップするとコーヒーは濃く出ます。このため、コーヒーと水のバランスを変えてやや水を多めにして淹れるか、あるいは抽出したあとでお湯を加えて飲む方法もあります。ただ、EC-XA30では細挽き粉は使わないように注意書きされていますので、中挽きか中細挽きを用意しましょう。

  • 取扱説明書。左下に細挽き粉を使わないようにと書かれています

なお、ペーパーフィルターでハンドドリップするときは、通常は中挽きから中細挽きといわれる細かさの粉を使います。細挽きはウォータードリップ(水出しコーヒー)に利用することが多く、アイスコーヒーに使うこともあります。エスプレッソなら極細挽き、フレンチプレスなら粗挽きがよく使われます。

改めて、中挽きした豆を用意して再開です。

先にかなり濃く出たものを口に入れていたので、少し薄くなりすぎたかなとも感じましたが、濃度計で計測すると、1.03%とほどよい濃さでした。こうやって濃さを調節して自分の好みに合う味が探せるのも、コーヒーメーカーの楽しみ方の1つです。

  • 調整して淹れ直し、濃度を計測。1.03%となりました

リビングのテーブルでコーヒーの香りが楽しめる

得平:濃い目で淹れたときも含め、苦味と酸味の美味しさがきちんと感じられました。コーヒーカップよりマグカップで淹れたほうが美味しく感じる人が多いかもしれません。それから、1杯が3分、2杯でも4分で淹れ終わるので、香りが楽しめます。香りはドリップに時間をかけすぎると逃げてしまうのです。それを考えると、キッチンよりリビングのテーブルに置いて使いたいですね。

  • 真剣な表情でテイスティングする得平氏。しっかり味が抽出されて香りも出ていて、なかなかの実力に唸っています

得平:気になった点は、電源が自動でオフにならないこと。保温が15分を超えるとコーヒーが煮詰まり始めますし、もともと2杯までしか淹れない製品なので、自動でオフになる機能が付いていたほうが親切。あとは、お湯を沸かすときの蒸気を蒸らしに使っていますが、もっと蒸らしには余裕があってもよさそうです。お湯の出始めがもう少しゆっくりだと、しっかり蒸らせるのではと感じました。

EC-XA30はコンパクトで収納場所にも困らず、見える場所に出しておいてもインテリアを邪魔しないデザインです。汚れる部品は少なくシンプルで、お手入れもラク。一度に4カップ淹れる必要がない核家族や、単身者のライフスタイルに合っています。コーヒーの香りが好きなユーザーには特にオススメです。

諸山泰三

諸山泰三(もろやまたいぞう)
PC雑誌の編集者を経て、家電流通専門誌の編集者となり、現在は家電流通誌やマイナビニュース・デジタルなどのネット媒体で執筆。カフェで原稿を書くことも多く、いろいろなカフェやコーヒーメーカーを体験した。得平がフワッティ・カフェ名義で監修した「ツウになる!コーヒーの教本」(秀和システム刊)にも協力。本連載では評価のアシスタントと執筆を担当。