みなさんは、「孤独死保険」という保険をご存知でしょうか。アパートなどで、誰にも看取られずに「孤独死」をしてしまうと、思った以上にお金がかかるケースがあります。今回は、孤独死の現状と、孤独死保険の内容について、一緒に確認していきましょう。
「孤独死保険」が広がる背景
「孤独死」とは、病気や自殺などの理由により、自宅などで人が独りで亡くなってしまう状態のことを指します。一般的に、孤独死は一人暮らしの高齢者の方だけの問題と考えている方も多いかもしれませんが、実際のところ、若い世代の方にも起こる可能性がある社会的な問題です。
最新のデータ(※)によると、孤独死の死亡時の平均年齢は、男性が61.4歳、女性が61.0歳となっています。また、高齢者に満たない60歳未満が占める孤独死の割合は、男女ともに4割を占めており、現役世代の方々も決して無視できない問題となっているのです。
孤独死保険は、人が孤独死をしてしまった場合に生じる損害や、さまざまな必要経費を補償するために誕生した「ミニ保険」です。核家族化が進む日本では、孤独死が大きな社会問題になると同時に、孤独死保険へのニーズが高まっていると考えられます。次に、孤独死保険の具体的な種類について、確認していきましょう。
孤独死保険の種類
孤独死保険は、大きく2つの種類に分けることができます。
1つ目は、大家さんなど、アパートやマンションを人に貸している方が、住んでいる方が孤独死をしてしまった場合に備えて加入するものです。前述のデータ(※)によると、孤独死をしてしまった人が発見されるまでの平均日数は17日となっており、特に夏場などは、遺体の損傷が激しい場合もあります。大家さんは、床を張り替えたり、壁紙を取り替えたりと、部屋の修繕費が必要となったり、その期間の家賃収入がなくなることに備えて、孤独死保険に加入するのです。
孤独死保険の2つ目は、アパートなどの賃貸住宅で、一人暮らしをしている方本人が加入するものです。孤独死をしてしまった場合、遺品整理費用や原状回復費用を亡くなった方の遺族が支払わなくてはいけないケースがあります。こちらは、万が一孤独死してしまった後に、家族に負担をかけないために入居者本人が加入する保険なのです。
一般的に、この本人が加入する孤独死保険は、家を借りる際に加入する「火災保険(家財保険)」の一部となっていることが多く、火災保険(家財保険)の保険料に含まれています。現在、賃貸住宅に住んでいる方は、保険内容を確認してみてはいかがでしょうか。
保険を選ぶポイントとは?
最後に、大家さんなど不動産経営を行っている方が孤独死保険を選ぶポイントをご紹介します。
まずは、保険料と保険金を比較検討しましょう。先ほどのデータ(※)によると、残置物処理費用としてかかった平均損害額は21万4,120円、原状回復費用としてかかった平均損害額は、36万1,392円となっています。これに加え、修繕中の家賃収入分を補償するために必要な保険金額を計算し、保険プランを検討してみましょう。
そして、補償内容をしっかり確認することも大切です。孤独死保険は「ミニ保険」と呼ばれるもので、保険会社によって補償内容が大きく違うという特徴があります。孤独死と同時に、火災で亡くなった場合も補償してくれるものや、家賃補償が最大6カ月ついているものなど、部屋の戸数や築年数なども考慮し、補償内容を検討するようにしましょう。
普段生活をしているなかではあまり馴染みがない「孤独死保険」ですが、アパートなどの賃貸住宅に暮らしている方にとっては、実は身近な存在です。万が一の時に備えて、孤独死保険の内容や、今回ご紹介したポイントを頭に入れておくと安心でしょう。
※〈参考〉第4回 孤独死現状レポート
2019年5月17日 一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会
著者プロフィール: 下中英恵
女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター
ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)。第一種証券外務員、内部管理責任者。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は東京において、資産運用や税制等多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っている。エフピーウーマンでは、女性のための無料マネーセミナー「お金のmanaVIVA(学び場)」を無料開講中!