俳優の志尊淳が「物事を理屈で考えていた自分の感覚を見直すきっかけになった」と語り、初オールヌード、初ベッドシーンに挑戦したドラマ『潤一』。ベッドシーンなどいくつかのシーンが追加された『潤一 ディレクターズカット版<PG-12>』が、日本映画専門チャンネルでTV初放送中だ(毎週土曜よる放送中/9月8日には全6話を一挙放送)。
是枝裕和(『そして父になる』『万引き家族』)、西川美和(『ゆれる』『ディア・ドクター』)を中心に設立された制作者集団・分福の面々がスタッフに名を連ねた本作。その現場を、「撮られているという感覚がなかった」と振り返る志尊に、現場でのエピソードや、同チャンネルにて『女子的生活』『帝一の國』も放送されることにちなみ、チャレンジングな姿勢について聞いた。
――オファーを受けたときのこと、出演を決めた理由を教えてください。
まずは原作を読ませていただきました。今まで、原作や台本などは、理解しようというところに重点を置いて読んでいましたが、理解することだけがいいわけじゃないということを改めて感じさせられました。物事を理屈で考えていた自分の感覚を見直すきっかけになったというか。正直、最初は潤一を演じている自分を想像できませんでした。僕にこの役をやらせていただけるチャンスをいただけたことへの不思議な気持ちと、やってみたいという好奇心がわいて、引き受けさせていただきました。
――潤一は、小説としては成り立っても、生身の人間が演じるのは難しいキャラクターかと。
役として具現化していく点において、とても難しい役です。でも何が難しくて何ができないのかを考えるより、とにかく役に寄り添って、その場の空気を大事に(潤一として)生きることが、自分にできることだと思いました。クランクインする前には、原作や台本を何回も読みましたが、現場に入ってからは、なるべく台本を見ないようにしていました。何が起こるかという予備知識をなるべく入れずに、出来事に対して素直に反応していきたかったので。
――センセーショナルな部分も話題になっています。志尊さんの初ベッドシーン、初ヌードシーンがあると。そういった意味での覚悟は。
あまりありませんでした。そこに特に重きを置いていなかったので。ただ、一つの方向にみんなで向かいながら作った作品ですから、多くの方に観ていただきたいです。官能的な作品だと思われがちですが、人間ドラマなど他にも観ていただきたい部分がたくさんあるんです。
――ベッドシーンの撮影では緊張しませんでしたか?
抵抗がなかったと言えど、確かに信頼がないとできることではないですよね。現場を作ってくださったスタッフさんのおかげだと思いますが、この作品は、撮られているという感覚がなかったんです。日常で生活しているような感覚でした。撮影中に、1カットお休みで違うところを撮っている間に、気付いたら寝ちゃっていたことがありました。僕は、普段は人がいるところで寝られるタイプじゃないんですけど、気付かないうちに寝てしまっていて、パッと起きたら、寝ているところを撮られてたんです。
――そうなんですか!?
そこが監督から、「サイコーだったよ!」と褒められた唯一の場面だったっていう(笑)。僕は何もしてないんですけど。それくらい、「今からベッドシーンをやるから緊張感を持って!」とか、そういうことが一切ない現場でした。
――『女子的生活』『帝一の國』も放送になります。役者さんとしてとてもアグレッシブに活動されている印象です。30代に向けてチャレンジしていきたいことは?
5年後10年後どうなっているのか、どういう役者になっているか、ということは、あまり考えたことがないですね。僕の性分かもしれませんが、先のことを計算してやっていくよりも、今目の前にあることを大切にしていきたいと思っています。いま出来ることを精いっぱい誠実に、妥協なくやることを意識しています。
――では結果として挑戦的な役柄が多くなっているのでしょうか。
マイノリティと呼ばれる役をやらせていただくことは多いですが、僕自身はそこを意識しているわけではありません。マイノリティを演じているのではなく、ひとりの「人」を演じているつもりです。ただ、世間に発信していくうえで、特に責任を持ってやらなくてはいけないなと思っています。
■プロフィール
志尊淳
1995年3月5日生まれ。東京都出身。2011年に俳優デビューし、2014年には『烈車戦隊トッキュウジャー』のトッキュウ1号役で主演。その後も、数々の作品に出演し、2018年には『女子的生活』のトランスジェンダー役が評価され、第11回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」主演男優賞、文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門放送個人賞を受賞した。7月スタートのドラマ『Heaven?~ご苦楽レストラン~』(TBS系・毎週火曜22:00~)に出演中。映画『劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~』、『HiGH&LOW THE WORST』などの公開、舞台NODA・MAP第23回公演『Q:A Night At The Kabuki』への出演を控えている。