ホンダが国内中古車事業を刷新する。これまでは店舗ごとに管理していた中古車情報をネットワーク化し、「共有在庫」として全国で売れるようにするのが大きな変更点。これにより、ホンダから中古車を買いたいという人にとっては選択肢が増えそうだ。
外部流出するユーザーを取り戻せるか
ホンダが中古車事業を刷新する理由は、「強固な販売網」を構築するためだ。同社によると、新車を買う人の9割以上はメーカー系正規ディーラーでクルマを購入するものの、中古車を買う人は6割が正規ディーラー以外で購入するとのこと。例えば、ホンダの中古車を買う人でも、そのうち6割はホンダの店舗で買っていない=外部に流出しているということになる。この流出を抑えて、自社の販売ネットワークに取り込もうというのがホンダの狙いだ。
そのために、どういった手を打つのか。まず、ホンダでは、自社の店舗で取り扱う中古ホンダ車のブランド価値向上を図る。
現状、ホンダの中古車販売チャネル「オートテラス」では、一定の基準をクリアした中古車を全て、同じ条件のもと展示している。中には、他社のクルマや修復歴のあるクルマも混在しているので、ある中古ホンダ車が「ホンダによって選ばれた特別なクルマ」であったとしても、その価値を訴求できていなかった。「認定中古車」の定義があいまいだったのだ。
そこでホンダは、認定中古車制度を改め、「Honda 認定中古車 U-Select(ユーセレクト)」というブランドを新たに立ち上げる。ホンダ車であり、修復歴がなく、第三者機関による車両状態証明書が発行されているという3つの条件を満たしたクルマを、今後は「ユーセレクト」として認定する。さらに、年式5年未満、走行距離5万キロ未満という条件を満たしていれば、「ユーセレクト プレミアム」として認定するそうだ。チャネルの名称も「オートテラス」から「Honda Cars・U-Select」に改める。新ブランドの立ち上げは2019年11月の予定。
今回の刷新で注目したいのが、ホンダが中古車情報のネットワーク化を進めようとしている点だ。これまで、中古車情報は販売店が個社で管理していた。その結果、ホンダの中古車を買おうと店舗を訪れた人は、その店にあるクルマの中からしかクルマを選ぶことができなかった。一方、中古車専業店は全国で情報が一元化されているので、例えば大阪にある中古車を東京で買うこともできる。選択肢の点で専業店に分があったのだ。
岩崎部長の説明によると、中古車販売店では、買い取ったクルマが売れないと判断した場合、「オートオークション」にかけて、ほかの店に売却してしまうそうだ。在庫として長く保有していると、クルマの価値がどんどん目減りしていくからというのがその理由だという。ただ、オートオークションを通じ、ホンダ以外の店舗にクルマが流れてしまえば、ホンダの販売ネットワークから1台のクルマが流出することになってしまう。
そこでホンダは、全国の在庫情報を連携させて、ホンダの中古車販売店網の中でクルマをさばけるようにする。具体的には、これまでだとオートオークションにかけていたはずのクルマを、今後は「共有在庫」として管理し、全国の店舗で売れるようにする。ただし、共有在庫も売れなければオートオークションにかけるそうだ。
共有在庫の情報は、2020年夏ごろからweb上で検索することが可能になる。つまり、買う方にしてみれば、欲しいクルマが共有在庫内で見つかった場合、そのクルマが全国のどこにあろうとも、近くにあるホンダの店舗で買えるようになるのだ。
岩崎部長が述懐したところによると、中古車の販売が伸びても自動車メーカーに直接の利益はないので、これまで、中古車事業の改革は遅れ気味だったそう。ただ、日本では今後、新車の市場が急激に伸びる可能性が低いどころか、新車市場が縮小していくことも大いに考えられるので、中古車ビジネスを強化し、販売網を強固にしていくことが必要と判断したそうだ。新車であろうが中古車であろうが、ホンダ車に乗っている人にはホンダの顧客として、長い付き合いを願いたい。そんな考えがあってホンダは中古車事業を刷新するのだろう。