アート・音楽・食の総合芸術祭「Reborn-Art Festival 2019」のオープニングを飾る音楽イベント『転がる、詩』が、3日と4日に宮城県・石巻市総合体育館で開催された。両日チケットは完売し、2日間で約5400人を動員した。ここでは、3日に行われたライブをレポートする。
「Reborn-Art Festival 2019」実行委員長を務める小林武史が率いるバンドが登場し、小林が「すごい良いライブです、本当に。よろしくお願いします」とあいさつ。
小林の呼び込みで、青葉市子が登場し、「かなしいゆめをみたら」など全5曲を披露した。会場の気温は高かったものの、小林の「ミュージシャンなんだけど、アートを感じさせる人」との言葉通り、幻想的な雰囲気が広がった。
また、「Reborn-Art Festival 2019」の展示作品として、石巻市内では1日に3度(7:00/12:00/17:00)、青葉の声を重ねて作った「時報」が流れる。
続いて登場したのは、Salyu。長年タッグを組む小林のキーボードの音色に合わせて、伸びやかな歌声で「HALFWAY」など5曲を披露した。
SalyuはMCで、2017年に行われた前回の「Reborn-Art Festival」を振り返り、「石巻にも長い間滞在したり、住んでいる方とコミュニケーションをとらせていただいたりしました。帰るときにとても名残惜しい気持ちになったことを思い出しました」と話し、「また2019年も参加できて、とてもうれしいです」と笑顔を見せた。
次はエレファントカシマシ・宮本浩次が登場。ステージを縦横無尽に駆け回り、観客にくまなく手を振り、「なんて素敵なイベントなんだ! みんな暑いけど、いいノリしてるね~! いい顔してるね~!」と盛り上げる。
3曲目には、宮本は「すごく今日の場所にピッタリの歌。静かな歌なんだけど、毎日ってすごく素敵だということを歌っている、小林さんと一緒につくった大好きな歌です」と紹介し、同時多発テロが起きた2001年のニューヨークにて、小林と共同制作した「普通の日々」を演奏した。
宮本のステージは、まさに全身全霊であり、全身で表現。ときには倒れそうになりながら、ステージに寝転び歌ったり、ステージから降りて観客とハイタッチしたりする場面も。
全9曲を終え、ステージを去った宮本に対して、小林は「すごかった」とポツリ。「引っ込んだけど、宮本浩次君にもう1回拍手!」と称賛していた。
最後に登場したのは、櫻井和寿だ。いつもはMr.Childrenとして披露される楽曲を、今回は違ったバンド編成でパフォーマンス。そのため、いつもとはまた違った聴こえ方に。
MCでは、「この場所でやれてものすごくうれしいです! おのずと気持ちが歌に入っていきます。最高です」とあいさつ。そして、イベントタイトルの『転がる、詩』について、「転がる石には苔が生えない」という言葉からオマージュしていることを明かした。
小林からは「照明やステージ演出を派手にやるのではなく、歌が、日本人としての言葉が届いていくようなイベントにしたい」と言われたそうで、櫻井は「その時々に、いろんなことを感じてつくった歌詞や歌があります」としつつも、「だけど、当時の思い出がよみがえるだけの歌じゃなくて、今聴いてもあの時とは違った感覚で届く曲を選んだつもりです」と話した。
その一方で、「メロディや演奏も大事に思っている。『歌詞なんていらないじゃん』と思うこともある」という櫻井は、さだまさしの「北の国から」のフレーズを歌い、「次にお届けする曲も、一番大事なところは『ラララ』で歌っています」と紹介。「ラララ」を歌唱した。
その他、「くるみ」「Sign」など8曲を歌った櫻井。アンコール後は、Salyuとともに再び登場し、「MESSAGE -メッセージ-」「to U」を届けた。
『転がる、詩』では、全編にわたって現代アーティスト・中山晃子の即興による"Alive Painting"と歌詞を映し出す演出がなされ、それぞれのアーティストの世界と「詩」の持つエネルギーに会場中が引き込まれた。
「Reborn-Art Festival 2019」は宮城県の石巻市街地、網地島、牡鹿半島、松島湾にて、9月29日まで開催される。今年のテーマ「いのちのてざわり」に思いをはせ、7つの展示エリアで7組のキュレーターとともに約70組のアーティストのアート作品が、石巻市街地と牡鹿半島の豊かな自然とともに彩られ、各エリアに展示されている。