7月30、31日の両日、豊島将之王位に木村一基九段が挑戦する第60期王位戦七番勝負第2局が札幌市「京王プラザホテル札幌」で行われ、豊島王位が勝ってシリーズ成績を2勝0敗としました。
防衛へ向け後手番での大きな1勝
対局は木村九段の先手で始まり、互いに飛の上にある歩を敵陣に向け突いてゆく「相掛かり」の戦型へと進みました。後手の豊島王位は歩を1枚損する代わりに攻めの銀、桂を相手より早く前線に出す作戦をとり、豊島名人の攻め、木村九段の受けの構図となりました。豊島王位の手番で中断時間の18時となり、手が封じられて1日目が終了しました。
豊島王位の封じ手(※)は木村九段の守りの金に当てる桂跳ね。対して木村九段の応手は大方の予想だった自陣内で金をかわす手ではなく、強く前に出て相手の攻め駒にアタックを掛けながらかわす強気の受けでした。受けに強みを発揮し「千駄ヶ谷の受け師」の二つ名を持つ木村九段、面目躍如の一着。この手を境に木村九段優位となり、豊島名人は苦心の局面が続くこととなりました。
※封じ手……二日制の対局で用いられ、1日目夕の中断の際、手番の棋士が次の手を紙に明記し封をして預け、2日目朝の再開時に立会人が開き、前日書いた通りに指す制度。手番の棋士とそうでない棋士の条件がなるべく公平になるように用いられている。封じ手をせずに中断すると、手番の棋士が持ち時間を消費せずに何時間も(夕の中断から翌日朝の再開まで)考えることができてしまう。封じ手は2通用意され、1通は立会人が、もう1通は対局場が再開まで管理する。
盤面制圧を試みる木村九段に対し、崩れずチャンスを待つ豊島王位。勝負は一瞬でした。豊島名人が5五の天王山に角を飛び出した手に対し、木村九段はここでも角に銀をぶつける強気の受けを発動します。しかしこれが痛恨の一手で、豊島王位が角を逃げずに銀の逆サイドから桂を打ったのが鋭手となり、木村九段のバリアは一気に崩壊。前線に出た金、銀は受けに利かず、豊島王位の的確な寄せが決まりました。
第1局で完勝劇を演じた豊島王位。本局では後手番での大きな逆転勝利となりました。第3局は8月8、9日の両日、福岡市「大濠公園能楽堂」で行われます。