楽天グループ最大規模のイベント「Rakuten Optimism 2019」が7月31日から8月3日までの4日間、パシフィコ横浜で開催。イベント名のオプティミズムとは『楽天主義』のこと。初日の基調講演では、三木谷浩史社長が楽天モバイルの5G戦略について語りました。
楽天モバイルの事業戦略
現在、NTTドコモやKDDIから通信ネットワークを借り受けてMVNO事業を展開している楽天モバイルですが、2019年10月には自ら携帯電話事業に参入し、MNO事業者として独自回線によるサービスを展開していくことを表明しています。詰めかけた来場者に、あらためてその経緯を説明した三木谷氏。「日本の携帯電話の料金は世界的に見ても非常に高いものがあります」として、次のように想いを語りました。
「携帯電話料金として月に1万円を払えば家族4人で4万円、年間で50万円ほど携帯電話会社に料金を払っていても、サービスの進化はほとんど見られません。いま楽天グループではそんな分野に、言い方は悪いけれど、殴り込みをかけようとしている。
我々の根本的な発想は『モバイルネットワークの民主化』にあります。安価に使えてスピードも速い、5Gになれば使い方も幅広くなる。そんなサービスを実現しようと取り組んでいるところです」(三木谷氏)。
移動体通信事業者(MNO)としては最後発となる楽天モバイルですが、どんなやり方で業界に殴り込んでいくのでしょう。重要な戦略の柱として、三木谷氏は通信ネットワークの革新を掲げました。
「固定回線の通信機器をモバイル仕様に代えて、専用の600種類くらいの通信機器をインテグレーション(統合)して運用してきたのが、既存のモバイルサービスの実態です。でも我々は『完全仮想化』によりハードウェアをソフトウェアで代替していく。
そうすることでネットワーク、サービスに柔軟性が出るほか、メンテナンスも簡単になります。今後、新しいサービスが出たときにも、一気に展開できる」(三木谷氏)。
こうしたメリットを強調する三木谷氏は、説明にも次第に熱がこもっていきます。
「完全仮想化によって、従来の通信ネットワークの常識がひっくり返ります。この1年半、俺たちはディストラクション(破壊)を起こすんだ、という想いで取り組んできました。iPhoneはデバイスのレボリューションでしたが、楽天モバイルでは道路(ネットワーク)自体に革命を起こす。あと2カ月で、世の中に証明します」(三木谷氏)。
楽天モバイルが2019年10月にMNO事業に参入するのも、次世代移動通信(5G)が商用化される2020年を見据えてのこと。競合のドコモ、KDDI、ソフトバンクと同じタイミングで、5Gに様々なサービスを乗っけていきたい思惑があります。
「超高速・大容量」「多接続」「低遅延」といった5Gの特長を引き出すには、スマホにもそれなりのスペックが求められます。となると、ハイエンドスマホを持っていないとサービスが利用できない可能性もある?
そこで楽天は、「モバイルエッジコンピューティング(MEC)」を利用できる環境の構築を考えています。複雑な計算をクラウドで処理することで、利用者のスマホに負担をかけずに済むという設計思想です。
「全国の4,000カ所以上にMECサーバーを置きます」と三木谷氏。利用者の近くに、常に巨大なコンピューターがあるかのような環境を実現し、複雑で重い処理をすべてそこで行うことで、多くの楽天利用者に幅広いサービスを提供していきたい考えです。