2019年7月29日、千葉県・幕張メッセにおいて世界最大級のガレージキットの祭典「ワンダーフェスティバル2019[夏]」が開催された。
「ワンダーフェスティバル」(通称:ワンフェス)は、レジンキャストなどで制作した造形物「ガレージキット」の展示・販売を行うイベント。プロアマ問わず出展でき、アマチュアが自作した版権モノのキャラクターも当日に限って販売が許可されるとあって、毎回レアなキットを求めて数多くの来場者で賑わう。
イベントにはデジタル3D制作に関わる企業も数多く出展しており、各ブースでは制作ツールの展示や著名クリエイターの講演などが行われてユーザーの関心を集めていた。ここでは、そのうちペンタブレットの老舗「ワコム」のブースを紹介しよう。
「Wacom Cintiq 22」が一般イベント初披露
「ワコム」のブースは、プロクリエイター向けの液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro」とエントリー向け「Wacom Cintiq」の最新モデルを体験できるコーナーを展開。いずれもデジタル原型制作に欠かせない3Dモデリングツール「ZBrush」がインストールされており、実際に同ソフトを使って造形物を制作することができた。
来場者は8,192レベルの筆圧感知機能を搭載したWacom Pro Pen 2を手に取って粘土をこねるように造形を行い、液晶ペンタブレットとZBrushによる直感的なモデリング体験を楽しんでいた。
体験コーナーには、7月25日に発売されたばかりの「Wacom Cintiq 22」も用意されており、多くの来場者の注目を集めていた。同製品は21.5型の大型液晶ディスプレイが搭載されたモデルで、118,800円(ワコムストアでの直販価格)とリーズナブルであるにもかかわらず、ペン性能や描き心地は上位機に準じているのが特徴。映り込みの少ないアンチグレアパネルや、16~82°まで好きな角度に調整できるスタンドを搭載しているなど、使い勝手がよいのもポイントだ。
理想の制作環境を3DプリンタとVRで再現!
ワコムは、同社が2019年4~5月に実施したアンケート結果をベースに「理想の制作環境をつくろう! プロジェクト」を進めており、ブースではその成果が3DプリントとVRという形でお披露目されていた。
これは、大型ペンタブレットを使いたいのに作業スペースが足りず不満を抱いている人が多いことに着目したワコムのプロジェクトチームが、彼らに代わって大型タブレットを快適に使える「理想の制作環境」をデザインしてしまおう! という企画。アンケート結果やSNSなどを参考に複数のラフ案が作成され、その中からプロジェクトメンバーが1案を選出。ディテールが詰められ、Pixologic公認ZBrushCoreインストラクターの福井信明氏により3Dデータ化された。
デザインを担当したのは、TOKYO MIDTOWN AWARD 2018グランプリなどの受賞歴を持つアーティストの青沼優介氏。最終的なデザインは、簡易的に組み立てができてどこでも展開できる「ミリタリー風ワークスペース」で、室内だけでなく屋外でも持ち運んで使用できるという驚きのシロモノだ。
ワコムブースにはそのデータをミマキエンジニアリングのUV硬化型インクジェット方式フルカラー3Dプリンタ「3DUJ-553」で出力したものが展示されていたが、細かいメッシュや机の木目、卓上に設置されたWacom Cintiq Pro 32までが精密に再現されていた。
同ブースにはOculus Rift Sも用意されており、VR空間でその「理想の制作環境」を体験することができた。実際に試してみたが、テーブルの脚やCintiq設置用アーム(Wacom Flex Arm)の関節部、上部テントなど、細かいパーツにいたるまでかなり正確にこだわって作られているのが印象的で、精巧なミニフィギュアの世界を体感するような楽しさがあった。
ちなみに、この「理想の制作環境」は8月9日~12日に東京ビックサイトで開催される「コミックマーケット96」のワコムブースでも展示される予定とのこと。気になった人は足を運んでみてはいかがだろうか?