Microsoftは米国時間2019年7月25日、公式ブログを通じて、Webブラウザー経由で利用可能な「Offce Online」を「Office」に改称することを発表した。単なるマーケティング戦略の一環であり、我々利用者には特に影響はない……としたいところだが、改称が日常に与える影響は大きい。
Office Onlineは「Office Web Apps」として2010年6月に提供を開始し、2014年2月に現在の名称「Offce Online」に変更しているが、シンプルかつ分かりやすくなる良い改称だった。だが、単なるOfficeに改称するとなると、Office 365やOffice 2019といった提供形態が異なるソリューションと区別しにくくなる。
Microsoftは本件について、「弊社のサービスは、複数のプラットフォームで提供するように進化してきた。プラットフォーム固有のサブブランドを使用することは意味がない」と述べている。
筆者はOffice 365を月次チャネルとOffice Insiderで追いかけているが、確かにWindows版とオンライン版の機能差は埋まりつつある。とはいえ、まったくの同等かといえば、それは否だ。上記の発言についてMicrosoftは、「各プラットフォームとデバイスで優れた体験を提供する」意図の表れだと説明している。
このようなブランド再構築を、Microsoftは過去に何度も繰り返してきた。分かりやすいところでは、Windows Azure → Microsoft Azureや、Windows Defender → Microsoft Defenderのように、Windowsから企業名をブランド化するケースがある。また、Windows Live Folders → Windows Live SkyDrive → Microsoft SkyDrive → OneDriveといったように、「Windows Live」というブランド戦略の廃止や、他企業が持つ商標権が絡んだ改称もあった。
Officeブランドはといえば、2006年11月リリースのOffice 2007は「The 2007 Microsoft Office system」という名称。2013年2月リリースのOffice 2013に関して、日本マイクロソフトは「呼称はOffice。バージョンを区別する場合は『新しいOffice』という呼称を用いる」と発表会で説明していた。このように、Officeの一貫した呼び方、広く含めるならOfficeのブランド戦略はどことなく迷走気味だった。
加えて、今後はディスコンとなるであろう「Skype for Business」と「Skype」、「OneDrive for Business」と「OneDrive」など、法人向けとコンシューマー向けで名称が異なるソフトウェアやサービスにも賛否があるだろう。ただし、OneDrive for BusinessとOneDriveは、運用するサーバーなど大きな差異があるため、「OneDrive」に統一することはあまり望ましくない。
現在のOfficeアプリケーションは、Windowsデスクトップ、macOS、iOS、Android、(一応は)Windows Mobile、そしてオンライン版で展開している。各プラットフォームにおける機能差が依然として存在している以上、今回の改称がユーザーの混乱を招かないとよいのだが。過去の経緯を踏まえると、数年後にはまた違ったOfficeのブランド戦略を打ち出すかもしれない。
阿久津良和(Cactus)