ネット上で視聴者による“考察”が繰り広げられるなど、放送されるごとに反響が拡大している日本テレビ系ドラマ『あなたの番です-反撃編-』(毎週日曜22:30~)。同局として25年ぶりの2クール(半年)放送というチャレンジングな枠組みの中で、ここにきて盛り上がってきた背景は何か。鈴間広枝プロデューサーに話を聞いた――。

  • 『あなたの番です』主演の田中圭

    『あなたの番です』主演の田中圭 (C)NTV

■途中で主人公が死ぬ…裏切りが奏功?

前回放送の第13話が番組最高視聴率の10.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録し、第2章「反撃編」に突入してから右肩上がりに推移しているが、「こんな途中から見られなそうなドラマに参入してくださる方がいて、ありがたい限りです(笑)」と恐縮する鈴間P。「『なんだかんだうれしいよね』みたいな話を、(田中)圭さんともしています」という。

撮影現場では「最初から『(視聴率)取れなくてもブレずにやろうぜ』っていう感じだったんですけど、こんなに周りの人に『犯人誰なの?』とか聞かれることがあるドラマは、圭さんの20年のキャリアでも初めてだそうで、そういうことは他のキャストの皆さんもおっしゃっていたんです」といい、「そういう体感として(反響が)あった中で、そんなに数字が伸びない現状だったのが、2ケタいったりして『おー?』みたいな感じはあります」と感覚の変化を語る。

この視聴率上昇の要因については「テレビのドラマって、コンプライアンスを含めて、ある程度の枠の中でやらなきゃいけないという制約がある中で、途中で主人公が死ぬとか、あんまりやってこなかったと思うんですね。視聴者の方々が、『どうせこうなるんでしょ?』って思って見てるのを裏切ったから『なになに!?面白い!』ってなっていただけたのかな?」と推測。

また、「地上波のリアルタイムで、見る人を選ぶというか、そんなにみんなが大好きっていう種類の作品ではないので、『こういうふうに見てほしいんです』ということを伝える動画にも力を入れてきていた」といい、「反撃編」の前に公開された“ヒント動画”は、再生回数が280万回(7月26日現在)を超えている。第1章放送終了には、それまでの全10話無料配信も行い、第2章からの“参戦”促進に一役買ったと見られる。

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そして、放送後に内容をSNS上で“考察”する視聴者が続出。「自然発生的に考察が生まれてきたのは、すごいありがたいです。戦略というよりは、皆さんそれぞれが発信するメディアを使ってこのドラマと関わってくださったから、親和性が高かったんだろうなと思います」とウェブとの相乗効果を感じている。

しかし、ここまで熱心で詳細な考察は予想していなかったそうで、「本当に気が抜けないです。ちっちゃいミスとか許してもらえなそう(笑)」と苦笑いし、そのおかげで「すっ飛ばそうと思っていたことを、説明せざるを得なくなるときもあります(笑)」。一方で、「でもありがたいです。『なるほど、こっちのほうが面白いかな』って思うときもあります」と感心しながら、「ガッチリ合っている考察はないです」と自信を見せた。

■2クールの特性を生かした構成

日本テレビの鈴間広枝プロデューサー

日テレとして『静かなるドン』以来25年ぶりの連ドラ2クール作品の上、放送する日曜ドラマ枠は『今日から俺は!!』『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』と話題作が続いていたこともあって、「プレッシャーしかなかったですね」と本音を吐露し、「いかに敷居を低くして、途中からでも入ってもらえるようにするかは苦労しました」とも。

「脇のキャラクターのサブストーリーがあって、みんなそれぞれのキャラが立って、“誰が犯人か分からない”というところから、“ここまで謎を溜めてここから種明かししていく”みたいなことは、2クールだからできたと思います」と、その特性を生かした作品づくりが奏功しているが、「オリジナルなので、考えるのはすごく大変です」と漏らした。

また、10話程度で完結する日本の連ドラは、海外ドラマと比べて話数が少なく、世界への販売に障壁となることもあるが、2クールにすることによって「海外から問い合わせはいっぱい来てるみたいです」という効果も。ただ、「その販売が実現するかどうかはどうでしょう。“袴田吉彦ネタ”とかは…」と心配しつつ、「リメイクでその国々の“袴田吉彦”でやったら面白いと思います(笑)」と期待した。

  • 田中圭(左)と袴田吉彦 (C)NTV