米Appleと米Intelは7月25日 (現地時間)、Intelのスマートフォン向けモデム事業をAppleが買収することで合意したと発表した。買収額は10億ドルで、同事業に関わる約2,200人のIntel社員がアップルに移籍。また関連する知的財産をAppleが取得する。規制当局の承認を得て、他の慣習的な取引完了条件も満たせば、買収は2019年第4四半期に完了する見込み。

スマートフォン向けモデムでは米Qualcommが大きな影響力を持っており、1社への依存を避けたいAppleは2016年のiPhone 7シリーズからQualcommのモデムに加えてIntelのモデムも採用し始めた。AppleとIntelのスマートフォン向けモデムのパートナーシップの背景には、商慣習を巡るQualcommとの対立もあった。2017年にスマートフォンに使用される無線通信技術のライセンス条件が不当であるとして、AppleがQualcommを提訴。知的財産の侵害でQualcommがAppleを訴訟し返し、Appleが2018年秋のiPhone新製品からQualcomm製品を排除する泥沼状態に陥った。

ところが、2019年4月に一転AppleとQualcommが全面和解し、特許ライセンスで合意し、Appleがチップセットの供給を受ける契約を結んだ。その和解発表の数時間後、Intelが「収益への明確な道筋がない」という理由でスマートフォン向け5Gモデムからの撤退を表明。それから、Intelのモデム事業をAppleが買収する可能性が度々報道されていた。

スマートフォン向けモデム事業をAppleに売却するが、Intelが5Gの技術やネットワークに関わる事業から撤退するわけではない。同社のビジネス機会評価において、スマートフォンについては市場の状況から大きな成功が困難であると判断したのみで、「Intelの戦略における優先分野」という位置付けは変わらず、PCやIoT、自動運転カーなど他の分野向けのモデム開発は継続する。

AppleはIntelの知的財産の獲得によって、17,000件以上のワイヤレス技術に関する特許を保有することになる。今年2月、モデムのエンジニアリング・チームがサプライチェーンのユニットからハードウェアテクノロジーグループに移されたとReutersが報じ、Appleがモデムを自社開発する可能性が指摘され始めた。発表文の中で同グループを率いるJohny Srouji氏 (ハードウェアテクノロジーズ担当シニアバイスプレジデント)は「これだけ多くの優れたエンジニアが、成長を続ける我々のセルラーテクノロジーグループに加わることに高揚している」とコメント。IntelのBob Swan氏 (CEO)は「Appleは、才能あるチームに適切な環境を提供し、重要な資産を活かしてくれると確信している」と述べている。