7月26日より全国劇場でロードショー公開される映画『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』は、平成仮面ライダーシリーズ20作目を記念したテレビシリーズ『仮面ライダージオウ』の集大成ともいうべき、時間と空間を超越した大スケールで描かれる特撮アクション作品である。今年(2019年)は元号から「平成」から「令和」へと移り変わった記念すべき年。20作続いてきた平成仮面ライダーは、その勢いを保ったまま新時代の仮面ライダーへバトンを託していくに違いない。

  • 田崎竜太(たさき・りゅうた※田崎監督の崎は立つ崎が正式表記)、1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業。大学在籍中に『仮面ライダーBLACK』(1987年)で助監督を務め、以後「スーパー戦隊シリーズ」やアメリカ製作の『POWER RANGERS』シリーズの監督として活躍。『仮面ライダーアギト』(2001年)より平成仮面ライダーシリーズに監督として参加するほか、『美少女戦士セーラームーン』(2003年)『科捜研の女』シリーズ(2013年ほか)などのテレビドラマでも手腕をふるう。『小さき勇者たち~GAMERA~』(2006年)『忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦!の段』(2013年)など、劇場映画も多数手がけている。撮影:宮川朋久

今回の映画のメガホンを取ったのは、シリーズ第2作の『仮面ライダーアギト』(2001年)から参加して以来、歴代の平成仮面ライダーシリーズを支えてきたベテラン・田崎竜太監督。『仮面ライダージオウ』ではメイン監督として作品の骨子を築き上げた田崎監督に、『ジオウ』のこの1年での出来事や、俳優たちの成長ぶり、そして「平成」という時代のしめくくりを担う今回の映画について訊いた。

――田崎監督が仮面ライダーの"夏映画"を撮られるのは、『劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王』(2008年)以来となるんですね。

そうですね。冬の映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』(2009年)や『仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武&ウィザード 天下分け目の戦国MOVIE大合戦』(2013年)はやりましたけれど、夏の劇場版はひさびさになります。

――思い返せば、平成仮面ライダーの映画は田崎監督の『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』(2001年)から始まり、そこから毎年恒例の「仮面ライダー&スーパー戦隊夏映画」として定着していったんですね。

あの頃と今とでは、夏の劇場版の印象が違うかもしれませんね。現在だと、1年に作る映画の本数も増えていて、僕が初めて劇場版を撮った『アギト』のときは、テレビで頑張っていたキャストたちが、「今度は映画でやるぞ」という気構えがあり、特別感があったんです。でも今は1年中映画やテレビを撮っているような状態ですから、昔と同じ感覚ではないでしょうね。

――『仮面ライダージオウ』のパイロット(第1、2話)を撮られた田崎監督だけに、撮影開始からそろそろ1年が経とうとしている『ジオウ』キャスト陣、特に主演の奥野壮さんの俳優としての成長ぶりをはっきりと感じられているのではないですか。

視聴者の方からもよく言われていることなんですが、奥野くんは最初のころとは顔つきがすっかり変わりましたし、お芝居に対する取り組み方も大きく変化した印象です。奥野壮が、というよりも常磐ソウゴ自身が、ここまでのエピソードの中で苦しんだ時期というのがあって、そこを突き抜けることができたことで、奥野くんの芝居に影響が出たのではないかと思っています。

――最近のエピソードでは、ゲイツ(演:押田岳)もウォズ(演:渡邊圭祐)もソウゴの仲間となり、大叔父の順一郎(演:生瀬勝久)やツクヨミ(演:大幡しえり)と共同生活をするなど、ソウゴの周辺がかなり変化しましたね。

今までも、役者同士は互いに仲良くしていてファミリー感覚があったんですよ。だけど、役の上ではそうなっていなかったので、奥野くんも演じていて辛かったところがあったと思います。その点、今は役柄の間でもファミリーですからね。奥野くんが僕に演技についての相談を持ちかけてくるとか、そういう部分を見ても「100パーセント、役者になったな」と思います。

――そんな成長めざましい奥野さんに、田崎監督からはどんなアドバイスをされたのでしょうか。

特に重要なアドバイスをしたことはありませんが、何度か「いまこういう映画が面白いよ」みたいな、映画にまつわる話が多いですね。とにかく"好きでいること"が大切。もっともっとお芝居を好きになり、映画とかテレビとか舞台とか、積極的に観て何かを感じるってことはとても大事ですよ、という話はしました。

――今回の映画は、平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダージオウ』の"真の最終回"ということですが、時系列的にはテレビシリーズのどのあたりに来る物語なのでしょうか。

特に、どのエピソードの間、とかを意識はしていないんです。テレビシリーズの最終回から……とかではなく、いわば「平成仮面ライダー」を総括する意味での"最終回"と捉えていただけるとありがたいです。平成仮面ライダーの最終回が、イコール『ジオウ』の真の最終回ではないか、という意味合いです。

――映画に関して、田崎監督から最初に出された要望があったら教えてください。

僕としては平成仮面ライダー20作を締めくくる作品にしたい、と最初に言いました。記念作品だけに、最後はもう"派手派手"な形で終わりたかったんです。昨年、山口(恭平)監督が撮られた冬映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』(2018年)も同様だと聞いていますが、今回の映画のホン(脚本)作りもまったく奇々怪々と言いますか、何度も練り上げて形にしては壊して、スクラップ&ビルドの繰り返しによって完成したものでした。

――映画ならではの大仕掛けとしては、ソウゴたちが織田信長のいた戦国時代へ時間移動し、消滅の危機に瀕している平成仮面ライダーの"歴史"を守るため奔走する、という流れでしょうか。

ジオウは魔王になる男なので、戦国時代の"魔王"と呼ばれた織田信長と対面する、つまり「魔王ミーツ魔王」が今回の"売り"なんですね。ここを芯に置きつつも、どんどん"売り"とは違う方向に外していく、というホンなので、ちょっと先の予測がつきにくい、面白いストーリーになっています。戦国時代のシーンについては、「もしも戦国時代の合戦に仮面ライダーがいたら」という"if"の世界を楽しんでいただけたら嬉しいですね。