年金受給者が高齢化で増加する一方、現役世代が少子化で減少している現在、年金制度に不安を感じる若者も多いと思います。このような状況が長く続けば年金制度を保てるのか不安を感じるとは思いますが、だからと言って年金を納めないのはいけません。
年金の加入は義務となっています。毎月の保険料も年々上がっているので大変ではありますが、年金未納者には罰則があります。ではどのような罰則があるのか、未納者に救いはあるのか、解説していきましょう。
年金制度について
国民年金(基礎年金)は加入している人すべての人がもらえる年金です。加入者の働き方により被保険者は3種類に分かれ、第一号被保険者は個人事業主やフリーで働いている方、学生、20歳以上で第二被保険者・第三号被保険者に該当しない方すべての人に当てはまります。第二号被保険者は保険料を事業主と折半して給与や賞与から天引きされます。
厚生年金は会社員・公務員の方たちがしてもらう年金です。これは勤務年数や収入によって年金額は変わってきます。そしてもう少し年金を増やしたい方は、任意で個人型確定拠出年金(iDeCo)、企業型確定拠出年金、企業型給付年金、他に国民年金基金などもあります。国民年金には10年以上は加入していないと支給資格がありません。また国民年金を満額で支給されたい場合は20歳からの40年加入が必要で、もう少し増やしたい場合は付加年金(第一号被保険者のみ)などの制度もあります。
年金未納とは
20歳~60歳未満の国内に住むすべての人に年金加入義務があります。20歳になると加入のお知らせが送付されるので、その時点から支払わないと「未納」となり、現在は6,731万人の加入者のうち157万人が未納となっています。ただし、未納でも申請をすれば、「未納」とは認定されずに障害年金や遺族年金の対象になります。
経済的に保険料を収めるのが困難な人は、学生納付特例制度や免除・猶予といった制度があり、保険料の全額免除や一部免除ができます。しかし、申請が面倒で手続きをせずに保険料を納めていない人は未納=滞納者となり罰則が待っています。
年金未納に対する罰則
まず年金の保険料を納付期限までに納めないと、電話や訪問で「納付督励」がきます。この納付督励の指定期限までに納付がない場合は、「特別催告状」が発送されます。また納付がない場合には「最終催告状」が発送され、納付の意思があるのかを「納付督励」として訪問や呼び出しにより確認します。そして最終催告状の指定期限までに納付がない場合は「納付督促」が発送され、またこの指定期限までに納付がないと、「滞納処分開始」となり、財産を調査されて最終通告の差し押さえ通知がきて、財産が差し押さえとなります。
「納付督励」→「特別催告状」→「最終催告状」→「納付督促」→「最終通告」→「差し押さえ」
差し押さえ
最終催告状の送付の前には、文書・電話・戸別訪問など幾度も納付督励が実施されます。最終通知の「差し押さえ」までにも3回の納付期限を設けていますが、現状としては、強制徴収の実施は増加傾向にあります。
平成29年度の強制徴収の実施状況__ 最終催告状:103,614件 督促状:66,270件 財産差し押さえ:14,344件
※厚生労働省(年金財政の枠組みより)
年々、強制徴収の実施は拡大されているようですし、年金は配偶者や世帯主にも支払う義務「連帯納付義務」もありますので、年金未納問題は家族にも迷惑をかけてしまいます。
年金制度は破綻しない?
年金制度は、現役世代が高齢者を支えていくという賦課方式という仕組みになっています。1986年には高齢者一人に対し、5.7人の現役世代が支えていましたが、2020年には1.7人、2050年には1.3人、2060年には1.4人と少し上がっています。これを聞いてしまうと年金制度は破綻するのではないかと心配されるかもしれませんが、公的年金が破綻の可能性はないでしょう。公的年金は積立金を保有していますし、年金改正で国も試行錯誤しながらどうにか破綻しないように努めています。
まとめ:年金未納にメリットなし
年金未納は罰則があるだけではなく、将来の年金額にも影響が出てきます。追納という未納分を納付する制度もありますが、学生納付特例制度や免除・猶予を申請してから10年以内となりますので注意が必要です。
平均寿命が男性81.09歳、女性87.26歳(平成29年度)となり、前年比から男性は0.11歳、女性は0.13歳延びています。今後の人生が長くなることを考えれば、亡くなるまで年金が貰えて、障害年金や遺族年金も補償される国民年金は、国民にとって有難い存在です。年金未納に心当たりのある方は、年金定期便の確認または、年金事務所で相談しましょう。
執筆者プロフィール:荻野 奈緒美(おぎの なおみ)
(株)ライムライト所属・フリーアナウンサー/CFP認定者
WOWOW契約アナウンサーを経て、その後フリーに。テレビ番組や講演会・イベントでのMCなど多方面で活躍。経済番組に出演したのをきっかけにFP資格を取得し、FPとしても活動中。現在(株)MILIZEにてシニアファイナンシャルコンサルタントとして携わっている。
監修:株式会社 MILIZE
金融機関向けのソフトウエア開発やコンサルティング業務を手掛けるほか、個人向けの人生シミュレーションプラットフォーム「MILIZE」を提供。給与や生活費のデータを入力すれば、現時点の生活費などの診断に加えて、将来の収支予測なども提示する。