社会人になって給料から自動的に天引きになっている年金。しかし学生時代は国民年金に加入していたか記憶にない方もいるのではないでしょうか。

国民年金は20歳から納付する義務がありますが、その頃は会社で働いている方は少なく、学生生活を送っている方がほとんどでしょう。20歳からの数年間支払っていない場合は、将来の年金額に影響がでてきます。そこで今回は学生時代未納だった方は、どんな対処をすれば年金が満額もらえるのかを解説していきましょう。

年金制度について

年金には、20歳から加入が義務付けられている公的年金と任意で加入できる私的年金があります。下の図で表すと分かりやすいと思いますが、まずは公的年金から見ていきましょう。

1階が国民年金に加入しているすべての人に支給される年金。2階は会社員・公務員の人が加入していた期間と給料の額によって加算される厚生年金。この公的年金にプラスで任意加入できる私的年金は、3階になります。個人型確定拠出年金(iDeCo)・企業型確定拠出年金・確定給付型年金や国民年金基金、他などがあります。

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学生納付特例制度とは

20歳から国民年金に加入しなければなりませんが、学生生活を送っていて料を払えない場合には学生納付特例制度を申請できます。年金納付時期に学生である場合は勉学に励めるようにその期間は猶予される制度です。また年金には受給資格期間があり、10年以上は加入しなければなりませんが、この制度を使えば納付はなくても受給資格期間に算入をしてくれます。しかしあくまで年数だけなので、将来の年金額は減額されます。

この学生納付制度は学生なら申請ができるのですが、学生でも一定の所得がある場合にはこの制度が受けられません。(前年の所得が118万円以下であること)

学生時代に年金を未納していたケース

学生納付特例制度は学生であれば制度が使えますが、20歳に申請した場合と学生期間は申請を忘れていた場合では対処が異なります。本来は20歳になった際、年金加入の案内がきたときに申請するのが一番いいのですが、忘れてしまいそのまま社会人になってしまった方もギリギリ申請が間に合います。

(1)申請を忘れていた

忘れていた場合は2年1か月まで遡って申請を出すことができます。20歳から年金加入開始なので、社会人になってからでも間に合います。しかしこの期間を過ぎてしまうと学生納付特例制度が使えなくなりますのでご注意ください。

(2)申請をしていた

申請をされていた方は受給資格期間(10年以上)に未納期間の年数が算入されます。しかし申請をしたから安心……ではありません。期間はクリアしても未納には変わりないので、将来受け取る年金額は減ってしまいます。未納分は補ってくれないのです。

年金は老齢年金だけではない

年金には老齢年金だけでなく遺族基礎年金と障害基礎年金があります。遺族基礎年金は亡くなられた人が加入していた年金から残された遺族に対して支給される年金です。また障害基礎年金は障害や病気になって生活が困難になった場合に支給される年金です。これらは、学生納付特例制度を申請していれば、保険料納付済期間と同様の扱いとなり、対象期間になります。

まとめ:年金未納にマイナスはあってプラスはない

学生納付制度を申請された方・忘れていてあとから申請された方は、年金満額支給には納付期間が足りないので未納期間分が減額されてしまいます。しかし、その未納分は追納すれば満額で支給されるので、全額支給されたい方は追納をしていただけたらと思います。追納は学生納付制度を申請してから10年以内でしたらできます。

平均寿命が延びている今は老後に少しでも収入を増やすことが安心につながります。

年金は納付期間が長ければそれだけ支給額も増えますので、若いうちから対処できることは早めにした方がいいでしょう。

執筆者プロフィール:荻野 奈緒美(おぎの なおみ)

(株)ライムライト所属・フリーアナウンサー/CFP認定者

WOWOW契約アナウンサーを経て、その後フリーに。テレビ番組や講演会・イベントでのMCなど多方面で活躍。経済番組に出演したのをきっかけにFP資格を取得し、FPとしても活動中。現在(株)MILIZEにてシニアファイナンシャルコンサルタントとして携わっている。

監修:株式会社 MILIZE

金融機関向けのソフトウエア開発やコンサルティング業務を手掛けるほか、個人向けの人生シミュレーションプラットフォーム「MILIZE」を提供。給与や生活費のデータを入力すれば、現時点の生活費などの診断に加えて、将来の収支予測なども提示する。