自炊のスタートラインとして「コンビニで食事を買う力」を身につけ、次に「冷凍食品で野菜をチョイ足しする」習慣がついて、まだもう少し余裕があるなら、次のステップでは簡単な調理に挑戦してみませんか?

今回は、『自炊力 料理以前の食生活改善スキル』(光文社新書)著者の白央篤司さんから、自炊初心者にオススメする“懐の深い”2つの料理を教わりました。

  • 自炊初心者にオススメの料理とは?

「自炊をする、ということは、ただ料理をするだけで終わりではありません。食材を買う→料理をする→食材を使い切る。自炊はこの3段階の繰り返しです。そこで、食材を余らせないために紹介しておきたい料理が、冷蔵庫の整理に便利で失敗も少ない“味噌汁”と“スープ”です」(白央さん)

自分で「作ってみたいな」という料理があって、材料を揃えたとしても、その1回分の食事ですべての食材をぴったり使い切れることは滅多にありませんよね。一人暮らしならばなおさら1回分で使う食材の量は少なくなり、残りをどうやって食べきるかが大きな課題になってきます。

余った食材で具だくさん味噌汁を作ろう

「何か食材が余ったら、まず味噌汁に入れればだいたい片付きます。味噌汁は、実はとても自由なものなんです。だしをひくのが面倒なら、だしパックや顆粒だし、だし入りの味噌もたくさんあります。自分にとって楽で簡単なものを活用してください。肉や魚などの動物性の具材を使えば、基本はダシを用意する必要もありません」(白央さん)

味噌汁というと、ワカメや豆腐、大根といった定番具材が頭に浮かびがちですが、なんとコロッケやトマトを味噌汁に入れることもあるという白央さん。著書の中では「サバ水煮缶×ウド」といった興味深い味噌汁レシピも紹介されています。

  • 「サバ水煮缶×ウド」の味噌汁

「サバ水煮缶×ウドの組み合わせは、長野県の北部地方の方から教わりました。サバ缶に野菜を加えて煮て、味噌を溶くだけで完成する、我が家の定番です。白菜や小松菜、ネギ、キノコ類や豆腐と組み合わせるのもオススメ。サバ水煮缶は味噌汁にすごくいいんです。具だくさんの味噌汁はおかずがわりになって、コンビニのおにぎり1個を足すだけでも満足度は高いと思います。また、味噌汁は冷蔵庫で2~3日は保存が効きます」(白央さん)

コンソメキューブで作るカンタン野菜スープ

もうひとつの料理は、洋風味噌汁ともいえる“野菜スープ”。初めからコンソメスープやポタージュを作るのは難易度が高すぎるので、コンソメキューブやレトルトを活用します。

「余った野菜を食べやすい大きさに切って、水を入れてコンソメキューブで煮るだけで、手軽な野菜スープに仕上がります。このとき、マカロニなどのショートパスタを一緒に煮込めば主食も加わって、これだけで一食分になります。コンソメキューブがなければ、市販のインスタントスープやレトルトスープを鍋に入れて、余った野菜を足してもいいですね。具材を足すと味が薄くなってしまいがちなので、最後に塩コショウで調整して好みの味付けを探ってみましょう」(白央さん)

  • 「コンソメスープ」の例

自炊力を上げるにはゴールを決めるのが大切

白央さんが著書で述べる「自炊力」とは、単なる「料理上手」とはまた違った能力のことで、以下の4つの能力の総合力だといいます。

・自分で買い物に行って、その場で献立を決められる
・食材と値段のバランスを考えつつ買い物ができる
・買った食材と家にある食材を取り混ぜつつ、数日分の献立を作りまわせる
・なおかつ栄養バランスを考えられる

ここで、自炊力をつけたいと思ったとき、大切なのは「自分のゴールを決めること」なのだとか。

「たとえば英会話と一緒で、漠然と“英語を話せるようになりたい”だけでは上達しません。自分はなぜ料理がしたいのか? なんのために自炊がしたいのか? そのゴールは一つではなく、人それぞれだと思います。『料理はしたくないけど栄養には気を付けたい』なら、コンビニで買う力を身につけるだけでOK。さらに『野菜不足を解消したい』なら、チョイ足し野菜のテクニックを駆使する工夫だけでいい。それとも『食費を安くしたい』のか、『自分の好きな味を追求したい』のか、はたまた『インスタ映えする料理を作りたい』のか。自分の望むゴールは何なのか見極めてから始めるのが大事ですね。とにかくなんでもやってみようとすると時間もお金も無駄になりがち。自炊力はあなたの生活をより豊かにする力です。あなたがよければそれでいいことだから、必ずしも料理上手を目指さなくたっていいんです」(白央さん)

著書の中で白央さんは「無理しないで」「自分を責めないで」と繰り返し語ります。料理をしないのは悪いことではない。時間がないなら、疲れているなら、出来合いのものを食べればいい。でも、将来のために栄養には少し気を配ろうよ、というおだやかなメッセージ。

自炊力を身につけたなら、栄養の点でも、コストの点でも、好きな味を食べられるという点でも、決して損にはなりません。今の食生活を少しでもよくしたい! と思っている方はまず、無理なくできることから始めてみてはいかがでしょうか。

取材協力:白央篤司(はくおう あつし)

フードライター。早稲田大学第一文学部卒業。出版社勤務を経てフリーに。日本の郷土食やローカルフードをメインテーマに執筆。郷土料理や日本の食文化をテーマにした講演も各地の学校・図書館等で行なっている。著書に「都道府県をひとつのおにぎりで表すとしたら?」をコンセプトにした写真絵本『にっぽんのおにぎり』(理論社)、各地で愛され続ける飯・麺・汁ものをレシピつきで紹介した『ジャパめし。』(集英社)など。2018年11月末に上梓した著書『自炊力 料理以前の食生活改善スキル』(光文社新書)は発売後すぐに版を重ね、2019年7月現在で4刷となっている。

自炊力 料理以前の食生活改善スキル

「買い物に行き、その場で献立を考えられる」
「食材の質と値段のバランスを考えつつ、買い物ができる」
「買った食材と家にある食材を取り混ぜて、数日間の献立を作り回していける」
「なおかつ栄養バランスを考えられる」
――フードライターの著者は、上記の能力を「自炊力」と名付けた。テレビの料理番組の活用法から正しい買い物のテクニックまで、「自炊をはじめたい」人が今日から取り組める食生活改善法を徹底網羅!


白央篤司 著
光文社新書
定価:800円(税別)
発行年月:2018年11月15日