同じ年の友人との何気ない会話で、友人の貯蓄額が自分と比較して相当に多いとわかって、ショックを受けたという経験はありませんか? 同じ年代の平均貯蓄高なども気になると思います。

  • なぜ貯められなかったのかを振り返る

    なぜ貯められなかったのかを振り返る

若い間の貯蓄の差は、表面的にはあまり違いは現れませんが、若い時のように収入が得られない老後になると、生活格差は表面化します。また子どもが高校や大学に入学する時期は、ちょうど住宅ローンの返済時期とも重なり、生活上のリスクは拡大します。

何もなければ、苦しいながらもなんとかやりくりできたとしても、一旦何かしらのトラブルに見舞われると、貯蓄がないと一気に家計の破たんにつながります。子どもたちの学業にも影響したり、せっかくのマイホームを手放すことにもなったりしかねません。

今まで、なぜ貯められなかったを考えて、生活を見直してみましょう。

将来計画を立てられない

老後資金にいくら必要、子どもの教育費はいくら、住宅取得資金は……と今後必要な費用を考えて、それでは今から年間どれくらい貯蓄しなければならないかと逆算するのが本来の姿です。

お金が貯められない人は、この将来設計が立てられないケースです。ファイナンシャルプランナーで何よりも大切なことは、将来設計(ライフプランニング)です。しかし実はファイナンシャルプランナーの世界だけではありません。すべてにおいて将来設計は重要なのです。

私が建築の設計者として新卒で働き始めた時に上司から言われたことは、「デザイナーになりたかったら、まずは自分自身の人生をデザインせよ」でした。その後、住宅の営業の仕事に就いた時も、研修で「優秀な営業マンはしっかりした将来設計を持っている」と教わりました。

同時に住宅の営業をしていて気が付いたことは、「人生設計がしっかりしている方は、上手に住まいづくりができ、よい住まいを手に入れていく」という事実です。展示場で初めてのお客様と折衝して5分もすれば、その人が上手に住まいづくりできるかどうかわかってしまいます。人生設計をしっり立てられていれば、どんな住まいを求めているか営業マンに明確に伝えることができます。

お金を貯める近道は、将来への想像力を働かせて、しっかりした生活設計を立てることが一番なのです。

使った生活費の残りを貯蓄すればよいと考える人

上記に書いた通り、そもそも貯蓄はなんのためにあるかと言えば、大きな病気をした時の医療費、少しずつ蓄えなければ確保できない子どもの教育費や老後の生活費、住まいを手に入れるための資金、一時的に働けなくなった時などの生活費などでしょう。これらは余ったら貯蓄すればよいものではなく、将来困らないための絶対に必要な貯蓄なはずです。

したがって、最初に貯蓄分を除いた残りが使ってよい生活費です。残りの分で生活できないとなれば、生活スタイルを改善するか、収入を増やす手立てが必要となります。生活費が足りないので、貯蓄分を少なくするということは、問題を将来に先送りすることに他なりません。収入を増やすにも、生活改善するにも、若い間の方が対処しやすいはずであり、節約効果も早い方が高いものになります。

何に使ったのかもわからない支出で、いつの間にかお金がなくなっていくタイプもあります。海外旅行やブランド物には興味がないのに、いつの間にか何かしらに使ってしまうということはありませんか? 趣味にお金を使う男性に多いタイプかもしれません。

資産とならない支出を分割で支払うことが日常化している

何か物を買う時は、その分のお金を貯めてから買うのが本来の姿です。欲しいものが見つかれば、後先考えずに買ってしまうようでは、なかなか貯蓄は増えないでしょう。ローンで購入するようではなおさらです。リボ払いを常用している場合は特に注意が必要です。資産とならないものをローンで購入することが日常化していると、将来的にも貯蓄額は増えないでしょう。

ただし例外もあります。住まいのように、貯まるまで待っていると、その間相当額の家賃も支払っていくので、必ずしも待てばお金が貯まるというものでもありません。しかし、住まいは資産となります。老朽化したとしても、市場価値の高い物件を選べば、それなりの金額で売却や賃貸も可能です。

部屋がモノであふれている

家の中にモノがあふれているということは、計画性がないことを意味します。周囲にある様々な家財や衣類などを見渡してみましょう。無駄な買い物をしていませんか? とりあえず後先考えずに買ってしまったものの、よく考えればそれほど便利ではないものが多くはありませんか? 買わなくてもよかったものが多くはありませんか?

どこに何があるのかスッキリわかるように整理整頓してみましょう。次に何か購入する際には、本当に必要か、先々長く使えるか、想像力をフル活動して考えてみましょう。モノの吟味力は蓄財力につながります。

運用の価値時間を理解しよう

貯蓄を考える上で注目したいのは「運用の価値時間」です。下記の表で、Aさんは22歳から15年間にわたり、年間24万円を貯蓄し、3%で運用し、16年目からは貯蓄は中断し、それまでの資金をそのまま運用し続けます。65歳の時に約1000万円を手にすることになります。

一方、Bさんは37歳から同じく65歳まで運用し、同じく1000万円を手にします。しかし、Aさんが投資した金額は15年間の360万円であるのに対して、Bさんは実に29年間に696万円にもなります。しかも、それは子育てやローン返済の時期と重なります。

  • 運用の価値時間

    運用の価値時間

これは、投資は早い時期に行うと、時間が運用してくれることを意味します。表は年間24万円ですが、12万円とすると月々1万円です。1万円の原資を日々何に使ってしまったかわからない支出を見直して捻出ください。例えばタバコ480円を1日1箱とすると1か月14,400円にもなります。40年間で700万円を超えます。ペットボトル150円なども40年間で200万円を超えます。チリも積もれば相当の金額になりますし、それを運用原資とすれば、さらに差が開きます。

チリも積もれば大きな蓄財となるのです。貯蓄や投資は若い間の方が格段に有利なのですので、思い立ったら即スタートするのが得策です。過去レポート(『お金が貯まる人の部屋、貯まらない人の部屋』『お金が貯まらない人の特徴』)もご参照ください。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。