NHKの連続テレビ小説『なつぞら』(毎週月~土曜8:00~)で、広瀬すず演じる主人公なつが育った柴田家の長女・夕見子役を演じる福地桃子を直撃。竹を割ったような性格の夕見子は、音間別で女性として初めて北大に入った才媛でもあるが、ここへ来てまさかの駆け落ち騒ぎを起こし、視聴者もドキドキハラハラだった!
常に自分の意見を押し通し、思ったことをズバズバと口にしてきた夕見子。でも、それはなつ以上の不器用さゆえのことで、裏返せば、汚れなき魂の表れでもある。そんな彼女が起こした恋の暴走劇(!?)を止めたのは、草刈正雄演じる祖父の泰樹だった。
『なつぞら』は、人生を切り開くなつたち“開拓者”の話だが、その筆頭にいるのが十勝の地を開拓した泰樹である。なつの言うように、夕見子と泰樹は真っ直ぐな強さがよく似ているが、今回の騒動でより一層、家族の絆を実感。視聴者の心をも鷲づかみすることになった。
――朝ドラに出演したことで、周りから反響はありましたか?
このお仕事を始めてから、朝ドラのオーディションを受けたのは3度目でした。1度目は、1度目は、未知なことのほうが多すぎたというか、オーディションがすごく独特なスタイルだなと思いました。
その時、スタッフのみなさんから、直接いろんなお話を聞かせていただき、物語を作る側の方々の緊張を初めて感じました。そのオーディションは落ちてしまったけど、すごく貴重な経験となり2回目、3回目と、挑戦する度に、朝ドラへの思いが強くなり、私にとっては朝ドラ出演がひとつの目標になりました。
――『なつぞら』のオーディションは3度目の正直だったということですね。夕見子役に抜擢されましたが、オーディションでこれまでとは違う手応えはありましたか?
母の出身地である北海道が舞台だったので、自分のなかでは縁があるなと思いました。だからこそ思い入れも強く、祖母や、小さい時の記憶を思い浮かべながら、オーディションに臨みました。終わった後、自分のなかでは悔いがなくて、「今の自分は、これしかできません!全力で、やれることはやります」と正直な気持ちをぶつけて、作品への熱量を込めて挑んだと思います。誰かを思い浮かべながら演じていると、自然に表情や言葉が出てくるんだなと感じた瞬間でした。
――今回、夕見子が駆け落ちしたことについてどう思いましたか?
駆け落ちは、夕見子が一歩社会に出てみようと決断をしたと思うので、すごくピュアな気持ちで演じることをベースに起きつつ、真っ直ぐすぎて目先のことしか見えずに突っ走ってしまうことは、誰にでもあると思うので、若さ特有の情熱を表現したいとも思いました。
夕見子自身はきっと悪いことじゃないと思っていたし、思い切って行動してみることは、すごく勇気のいることだからこそ、彼女を見て、何かに挑戦するきっかけになってほしいとも思いました。特に当時は、女性が自分の意見を大きな声で発言するという環境がなかった時代なので、じいちゃんゆずりの開拓者精神で「時代を改革したい」という思いがあったのではないかと思います。
――夕見子は、駆け落ち相手の高山さん(須藤蓮)のどんな点に惹かれたんだと思いますか?
ジャズをやりたいという開拓者精神を持っている人だったからかなと。言ってしまえば、頑張っている人や目標がある人ですね。夕見子は、ものすごくじいちゃんに似ていますが、柴田家の家族は、みんな、距離感は違っても、じいちゃんのことをすごく尊敬しているんだと思います。そういう環境で育ったから、じいちゃんへの憧れもあったのではないかと。
――結局、泰樹さんに言われて、夕見子はようやく駆け落ちを断念しました。その気持ちについてはどうとらえましたか?
駆け落ちは若さゆえの行動だったと思うんですが、誰に言われても意志を曲げなかった夕見子が、北海道からわざわざじいちゃんが来てくれたことで立ち止まることが出来た。きっと夕見子の人生にとっては、大きい出来事だったかなと思っています。夕見子自身も今自分が取っている行動が、本当は正しくないのかもしれないと考えていて、その答え合わせをしてくれたのは、やっぱりじいちゃんだったと感じたのではないかと。
――非常に心に残る回となりましたね。
夕見子にとって、あの瞬間はなつも含め、自分のことを理解してくれる人たちがそばに居てくれる安心感、心強さがあったと思います。その時みんながかけてくれた言葉は、この先も忘れないと思います。あのシーンは、長い時間をかけて撮ったのですが、自分に寄り添ってくれる人のあったかさを感じるたびに、涙が出てきました。じいちゃんや家族の存在が、自分にとってこんなに大きいものだったのかと、再認識させてもらったシーンでした。
――朝ドラの撮影も後半に入ったと思いますが、出演されてみてどんなことを得ましたか?
こんなに長い間、同じ作品で同じ役をやらせていただくことは、とても貴重な経験だと思います。クランクインから一年が経ちますが、いろんなものを吸収させてもらいました。次へのひと押しをしてもらった現場だなと感じています。
もちろん私にとっては、入り口でしかないという気持ちでいるので、いろんなことを教えてもらいながら、この作品に携われたことを無駄にしちゃいけないという気持ちが日に日に増してきています。終わった時、何か新しいものが生まれていたらいいなと思っています。
福地桃子(ふくち・ももこ)
1997年10月26日生まれ、東京都出身。2016年にドラマ『潜入捜査アイドル・刑事ダンス』で本格的に女優デビューし、ドラマ『あなたには帰る家がある』(18)や『チア☆ダン』(18)に出演。映画は『あまのがわ』(19)で初主演し、『あの日のオルガン』(19)にも出演。
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