神戸といえば、夜景も美しい神戸ポートタワー周辺や、異国情緒あふれる北野の町並み、港町ならではの海外発祥の優れたフード、ファッションや雑貨などのショッピングも楽しい都会的な街という印象がある。

だが、神戸の魅力はそれだけではない。歴史のある街だからこそ、庶民の食べ物も独自の進化を遂げている。本稿では「地元の味」を求めて神戸の街を探訪してみた。

  • 神戸の「地元の味」、B級グルメを楽しむ

    神戸といえば、北野異人館に代表されるようなオシャレな町を思い起こすかもしれない。それも神戸の魅力の一面だが、「地元」の魅力も見逃せない(写真は北野異人館のラインの館)

そばめし発祥の「お好み焼き 青森」

関西圏おなじみのローカルフードとして知られているのが「粉もん」。神戸でもお好み焼きなどのフードは人気だ。特にJRや地下鉄西神・山手線の新長田駅周辺は、お好み焼きを提供する店が集まっている。薄くのばした生地にたっぷりの刻みネギなどを載せ、さらに「ぼっかけ」と呼ばれる牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込んだものを乗せて焼くのが特徴だ。

  • 新長田駅を出て商店街に向かうとそびえ立つ鉄人28号のモニュメントが出迎えてくれる。高さは18メートルとのこと。神戸出身で新長田にゆかりが深い横山光輝氏にちなんで設置された

長田エリアは、もうひとつのローカルフード「そばめし」発祥の地でもある。長田の工場で女性従業員が、ご飯にそばを混ぜたことで誕生したとも言われているのが、このそばめしだ。

そばめしは、そばとご飯を鉄板で刻みながら焼いて、さらにキャベツを載せて、ソースを混ぜて作るというもの。このそばめしを店のメニューに取り入れて、そばめし発祥の店として知られるのが「お好み焼き 青森」。神戸で青森という名前は不思議な感じがするが、店主の家名なので、県名の青森とは関係がないらしい。

  • 地元に愛される名店「青森」

新長田駅から徒歩10分弱の住宅地にあるこの青森。昔ながらのこぢんまりとした店構えで、地元の常連客だけでなく遠方からもはるばる食べに来る人も多い人気店だ。

  • 青森母子が二人三脚で店を支える

  • 上に乗るぼっかけが特徴

  • お好み焼きなので、さまざまな具材を乗せたメニューも豊富。手際よく焼き上げられていく

  • たっぷりのばらソースと青のりを乗せて完成

  • コテで一口サイズに切って、そのまま口に運ぼう

開店当時からほとんど変わらないメニューは、豚焼(450円)、そば焼(530円)、いか焼(550円)かすすじ焼(650円)、すじそばめし(700円)など。強いとろみで甘辛口のソース「ばらソース」をたっぷり使って食べるのが特徴で、この近辺でしか手に入らない地元ソースと合わせて堪能したい。

ボリューミーだが、たっぷりキャベツと甘辛のぼっかけの食感、そしてちょっと辛めのばらソースという組み合わせが絶妙。関東のもんじゃ焼きは小さいヘラを使うが、こちらはそれよりちょっと大きいコテを使う。コテで一口サイズに切ってそのまま食べるのが流儀だ。

そばめしは、単に焼きそばとご飯を混ぜただけでなく、細かく刻んだそばと米に、たっぷりのぼっかけとキャベツがアクセントとなり、それを甘辛いばらソースが融合させて後引く味わいに仕上がっている。

  • こちらはすじそばめし。ぼっかけを豪快に加えていく

  • 手早く刻んで混ぜ合わせていく

  • もちろんばらソースをたっぷりと

  • 最後に再びばらソースと青のりを加えて完成

■お好み焼き 青森
営業時間:11時30分~14時30分、17時~22時30分
休業日:火曜日
住所:〒653-0041 兵庫県神戸市長田区久保町4-8-6

豚まんの元祖としても知られる「老祥記」

JRと阪神電鉄の元町駅から南に下ってすぐあるのが、横浜や長崎と並ぶ日本の中華街「南京町」だ。横浜中華街に比べるとエリアはやや狭いが、100軒の店が建ち並ぶ南京町は、明治元年の神戸開港とともに生まれたといわれる歴史ある中華街だ。

  • 神戸の中華街である南京町にある「長安門」

第2次大戦中に甚大な被害を受けたが、その後の区画整理で中華街としてのまちづくりを行った結果、現在の町並みができあがったという。「南楼門」や「長安門」「西安門」が建ち、中華街らしい中国語のあふれる町並みとなっている。

さまざまな飲食店や雑貨店などがある中、特に長い行列を誇るのが、「元祖豚まん」としても知られる「老祥記」。創業は大正4年と古く、初代店主が「豚まん」と命名して専門店として開業したのがこの老祥記だ。

  • 毎日行列が絶えない老祥記

次々と蒸し上がる豚まんが、次々と購入されていく様子は壮観でもある。行列は長いが、ほとんど持ち帰りの人なので、回転は速い。大量に購入していく人も多く、多くの店員が忙しく働く姿も印象的だった。

  • 次々蒸し上がる豚まんが、ひっきりなしに詰められて販売されていく

今年4月1日には原材料の高騰などで値上げをしているが、それでも1個90円が1個100円になっただけなので、気軽に買えるところは変わらない。ひとつひとつは小さいが、みっちりとした餡はジューシーでもっちりとした食感の皮とあふれる肉汁が相まって、いくらでも食べられそうな気になる。

  • 何個でも軽く食べられてしまう小ぶりの豚まん

狭いながら店内で食べることもできるので、熱々を楽しみたい場合は、少し行列を待って店内で食べてもいい。醤油や酢などがテーブルの上にあって、味を変えたい場合はそれらを自由に合わせて食べるのもおいしい。

■老祥記
営業時間:10時~18時30分(売り切れるまで)
休業日:月曜日(祝日の場合は翌日)
住所:〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通2-1-14

味噌だれで食べる焼き餃子「ぎょうざ専門店 ひょうたん」

日本人が愛して止まない焼き餃子。実は神戸の名物でもある。神戸のご当地餃子は、つけだれが味噌という点が特徴だ。この味噌だれをたっぷりつけて食べるのが神戸餃子の特徴で、市内に多くの餃子専門店が存在している。

今回訪問したのは、その中でも人気の「ぎょうざ専門店 ひょうたん」。元町に本店があり、今回は三宮店を利用した。

  • 神戸餃子で人気のひょうたん

餃子専門店をうたうだけ合って、フードメニューは餃子のみ。店頭にも「ぎょうざしか有りません」の表記が掲げられ、店内メニューもフードは「焼きぎょうざ」だけ。あとはビールと紹興酒、五加皮酒、泡盛も用意されていて、餃子とお酒を楽しむ人で店内は満席。

  • メニューにあるフードは餃子だけ

  • ぎょうざしか有りません

餃子しかないので、注文は何皿頼むか悩むだけ。1人前は7つ。お腹の具合に応じてチョイスすればいいだろう。1人前は390円なので、気軽に注文できるのが嬉しい。焼き上がった餃子は、いわゆる羽のないタイプで、皮は薄め。中の餡は野菜が多めであっさりしたもの。あっさりと言っても物足りない感じはなく、肉と野菜のうまみと小ぶりなサイズで、どんどん箸が進む。

  • 見た目も香りも食欲をそそるひょうたんの餃子

  • 赤味噌だれやラー油をつけていただく

つけだれは赤味噌で、ラー油も選択できる。どちらか一方をつけてもいいし、味を変えるために切り替えてもいい。赤味噌は、あっさりとした餃子と合わせるとコクが加わって、とにかく無限に食べられる錯覚に陥る。

夜に訪れたのだが、あっさりと2人前を平らげて、瓶ビールも飲んでしまえば1日の疲れも吹き飛ぶ心持ちとなった。

  • ペロリと食べられる

■ぎょうざ専門店 ひょうたん 三宮店
営業時間:平日11時30分~15時(14時30分ラストオーダー)、17時~24時(23時30分ラストオーダー)。土日祝日11時30分~22時
休業日:第2・4日曜日
住所:〒650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通1-31-37