2019(令和元)年9月1日からテレビ朝日系全国ネットで放送される特撮テレビドラマ『仮面ライダーゼロワン』の制作発表記者会見が17日、都内で行われ、主演の高橋文哉ほか、主要キャストが発表された。

  • 左から児島一哉(アンジャッシュ)、井桁弘恵、岡田龍太郎、高橋文哉、鶴嶋乃愛、中川大輔、砂川脩弥

元号が「平成」から「令和」になって初めての「仮面ライダー」シリーズとなる本作『ゼロワン』のテーマは「AI=人工知能」。いまわれわれをとりまく現実の世界でも、さまざまな面でAIを搭載した機器が広まってきている。本作の舞台は新しい時代を迎えた日本で、人工知能のリーディング・カンパニー『飛電インテリジェンス』が開発する、人型AIロボ=ヒューマギアの本格的な実用運転が始まっているという設定が作られた。

仮面ライダーゼロワンの「ゼロワン」というネーミングには、「令和の01号ライダー」、そして「企業のナンバー01=社長のライダー」、「0と1のデジタル世界を駆けまわる仮面ライダー」という、3種の意味が込められているという。キャッチコピーに「世界最強の社長はただひとり! オレだ!」とあるように、本作で仮面ライダーゼロワンに変身するのは、祖父・飛電是之助の遺言により、飛電インテリジェンスの二代目社長に"いきなり"任命された青年・飛電或人(ひでん・あると)。彼は、人類絶滅を目論むサイバーテロリスト「滅亡迅雷.net」によって暴走させられたヒューマギアに立ち向かうべく、飛電ゼロワンドライバー(変身ベルト)とプログライズキーを使って仮面ライダーゼロワンに変身し、人間をはるかに超えた特殊装備の数々を使いこなす。

仮面ライダーゼロワンのデザインモチーフには、1971年から1973年にかけて放送された第1作『仮面ライダー』の仮面ライダー1号、仮面ライダー2号と同じく「バッタ」が用いられている。『仮面ライダークウガ』(2000年)を第1作とする平成仮面ライダーシリーズでは『仮面ライダーカブト』(2006年)に仮面ライダーキックホッパー、仮面ライダーパンチホッパーが登場したほか、『仮面ライダーオーズ/OOO』(2010年)でのオーズのフォームチェンジ"タトバコンボ(タカ・トラ・バッタ)"があるくらいで、 これまでバッタを積極的に主役仮面ライダーのデザインモチーフにしてこなかった。

『仮面ライダー』の1号、2号、そして『仮面ライダー(新)』(1979年)のスカイライダー、『仮面ライダーBLACK』(1987年)、とその続編『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)のように、仮面ライダーシリーズでは数年間のブランクが空いた後"復活"を果たす際、原点である仮面ライダー1号を強く意識して、ヒーローのデザインに"バッタ"を用いることが多かった。テレビシリーズではなく、オリジナルビデオ作品として製作された『真・仮面ライダー序章(プロローグ)』(1992年)や、劇場用新作映画『仮面ライダーZO』(1993年)および『仮面ライダーJ』(1994年)も同様である。

もともと原作者の石ノ森章太郎氏(1938-1998)は、東映・毎日放送が製作する実写ヒーロー作品のキャラクターとして「骸骨」をモチーフにした、少しダーティな匂いのするデザインを検討していたが、「骸骨では縁起が悪い」という局サイドの意見を受け、骸骨のイメージを残したまま"バッタ"のシャープな顔つきを参考に、昆虫人間というべき仮面ライダーのデザインをまとめ上げた。

宮城県に生まれ、自然に囲まれて育った石ノ森氏は、子どものころからバッタをはじめとする昆虫に親しみを持っていたという。仮面ライダーがバッタをモチーフにデザインされたことにより、「バッタの能力を備えた改造人間」という設定が生まれ、自分の身長の何倍もの跳躍力を持つ仮面ライダーの「ライダージャンプ」、および「ライダーキック」という必殺技が出来上がった。またバッタというモチーフには石ノ森氏による"滅びゆく大自然の象徴"という意味も込められており、60~70年代に深刻な社会問題となっていた「公害」の影響で、美しい緑や昆虫たちが蝕まれていくことへの"悲しみ"と"怒り"が仮面ライダーのデザインに強く反映されている。

このように、仮面ライダー1号、2号が"バッタ"モチーフのヒーローであることには深い意味付けがあり、令和という新時代を迎えてから1作目となる『仮面ライダーゼロワン』が仮面ライダーの"原点"に戻り、バッタモチーフのヒーローとして誕生したことからは、企画・制作を行うスタッフ陣の並々ならぬ意気込みがうかがえる。これまでの仮面ライダーシリーズにおける"原点回帰"とは一味違って、20作続いてきた「平成仮面ライダー」の流れと勢いを受け継いだ上で、新たな時代を迎えるにふさわしい意欲的な要素を盛り込んだ特撮テレビドラマが志向されている。

主人公・飛電或人(ひでん・あると)を演じる高橋文哉と、仮面ライダーゼロワンの乗るオートバイ「ライズホッパー」。ライズホッパーは、次世代フォンである「ライズフォン」をゼロワンドライバーで認識することによって、衛星から放出される物質がバイク型に変形したという設定。

制作発表会見では「滅亡迅雷.net」によって暴走したヒューマギアを相手に、華麗かつダイナミックなアクションを繰り広げる仮面ライダーゼロワンの勇姿が見られた。

司会進行のテレビ朝日・島本真衣アナウンサーは、テレビ朝日系情報番組『グッド!モーニング』でもおなじみ。人工知能搭載アナウンサー型ヒューマギア「マギアナ」役で本作にレギュラー出演しているため、マギアナのコスチュームを身に着けたまま流麗にMCを務め上げた。

仮面ライダーゼロワン/飛電或人を演じる高橋文哉は「或人という人物は、とにかくまっすぐで、喜怒哀楽が激しくて、ヒューマギアと人間の共存を素晴らしいということを信じ、仮面ライダーとして、社長として、街の人々を救う主人公です」と役柄を説明。そして「仮面ライダーゼロワンの物語は、これからの日本を照らしているのでは、と思っています。ヒューマギアが人間を超える"シンギュラリティ(AIが人類の知能を超える転換点)"が起きるんじゃないかとか、そんな物語は魅力的ですので、これまで仮面ライダーシリーズを観ていなかった方も、きっと楽しめると思います」と、子どもたちだけでなく、これまで仮面ライダーを未視聴だった人でも楽しむことのできる作品だと胸を張った。

飛電インテリジェンス社長秘書を務める、秘書型AIアシスタントのヒューマギア=イズを演じる鶴嶋乃愛は「冷静に淡々と仕事をこなすイズですが、喜怒哀楽の激しい或人と行動を共にする中、どのように変化していくのか?を楽しみに」と、心を持たないものの秘書業務を完璧にこなす美女ロボット役を説明した。イズは感情を持たない設定だが、鶴嶋自身はにこやかな表情で「初めてお芝居のオーディションを受け、合格したとの知らせは自分の誕生日に聞いて、ビックリしました。人生でいちばん嬉しかったプレゼントでした」と、出演が決まったときの感想を語った。イズを演じるにあたっては「AIロボなので、感情を出さず、常に綺麗な声を出すことを心がけている」と、人間でない役どころにやや苦戦しながらがんばっているようすをうかがわせた。

対人工知能特務機関「A.I.M.S.(エイムズ)」の隊長で、仮面ライダーバルカンに変身する不破諫(ふわ・いさむ)を演じる岡田龍太郎は「市民の危機にかけつける、という意味では或人と同じくヒーローなのですが、その思想はAIに対して否定的で、過激派です。そういった、同じ"正義"ですけれども対照的な2人の関係性を楽しんで」と、人々を守る立場では共通するのに、AIに対する考え方が両極端ゆえに或人と対立するキャラクターだと語った。出演にあたっては「父が好きだった影響で『仮面ライダーアマゾン』(1974年)が印象的。"大切断"と叫んでトイレットペーパーを切断していた」と、仮面ライダーシリーズに自分が出演することへの喜びと、"昭和"ライダーへの熱い思いを語った。

「A.I.M.S.」の技術顧問で、仮面ライダーバルキリーに変身する刃唯阿(やいば・ゆあ)を演じる井桁弘恵は「諫と共に、暴走したヒューマギアと戦う役柄です。冷静沈着で男まさりな性格で、バルキリーとしても、唯阿としても、みなさまにカッコいいと思っていただけるよう、がんばっていきたい」と、戦う女性の魅力を打ち出していく意欲を示した。唯阿を演じるにあたっては「テキパキした動きや、スマートな銃さばきがもっともっとできるよう、現在練習中です」と、強い女性を演じるため常に努力していることを明かした。

人類絶滅を目論み、人間を攻撃するデータをヒューマギアに拡散する「滅亡迅雷.net」の行動係「迅(じん)」を演じる中川大輔は「悪役らしく怖い面がありますが、普段は子どもっぽく無邪気なキャラクター。或人たちの前に、強敵としてたちはだかることができるようがんばります」と、魅力的な悪役を演じることができるよう努力するという姿勢を見せた。

滅亡迅雷.netの司令塔となる「滅(ほろび)」を演じる砂川脩弥は「なぜ悪いことをするのか、過去に何があったのかなどがまったくの不明で、とてもミステリアスな人物。仲間の迅との関係性が、話の進行と共に楽しくなっていくと思いますので、滅亡迅雷.netにも注目してほしい」と、過去の素性がわからない不気味さと、悪の美学を強調した。

飛電インテリジェンスの副社長を務める福添准(ふくぞえ・じゅん)を演じるのは、渡部健と共にお笑いコンビ・アンジャッシュとして活躍するほか、俳優業もこなす児島一哉。島本アナからしきりに「大嶋さん」「尾嶋さん」「田嶋さん」と名前を何度も間違われ、そのたびに「児島だよっ!」と返すおなじみのギャグを飛ばして絶好調。今回児島が演じる福添准は、その名前が示すとおり万年2位の人生を歩む男だという。児島は「ふだん僕がバラエティ番組で見せる、そのままの役です。社長の座を狙って、或人を煙たがっているイヤな役なんですけれどね、人間味あふれるキャラでもあるので、みなさんに愛されたい。コントをやってきた経験を役に活かしたい」と劇中でのユニークな立ち位置をアピールし、幅広い年齢層からの人気を期待した。ちなみに相方の渡部には『ゼロワン』出演の話はしておらず、「この会見によって、Twitterなんかで知るんじゃないですかね」と、あえてそっけなく語って客席に笑いをもたらした。

最後にマイクを手にした高橋は「令和の最初にふさわしい仮面ライダーとして、僕をはじめとしたレギュラーキャストのみんなで、ほんとうに素晴らしい作品を作りたいと思います。観ている方たちが"頑張ろう!"とする元気の源にされたり、自分の中で"何か"を見つけられたりするような作品にしていこうと、全身全霊で1年間がんばっていきたいです!」と、これから本格的に活躍を見せる『仮面ライダーゼロワン』にかける大きな意気込みを熱い感情を込めつつ話していた。

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