既報の通り、ソニーが新しいフルサイズミラーレス「α7R IV」(ILCE-7RM4)を発表しました。有効6100万画素の高画素フルサイズセンサーを搭載したことや、操作性やホールド性能を改善したこと、動画撮影でもリアルタイム瞳AFが可能になったことなどが特徴です。予想実売価格は税別40万円前後で、9月6日に販売を開始します。

α7R IVの改良の詳細に加え、ソニーのカメラ戦略について、カメラ事業の開発責任者に詳細をインタビューしました。

  • 今回お話をうかがった、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ デジタルイメージング本部 第1ビジネスユニット 担当部長 大島正昭氏(左)

新センサー、集光効率の向上と銅配線がキモ

――現行モデルの「α7R III」が2017年11月に登場してからまだ2年経っていないことを考えると、意外に登場が早かったと感じました。

大島氏:このタイミングでの発表となったのは、新しいセンサーの開発が順調に進んだことが大きいです。α7Rシリーズは、おおむね2年ごとに新機種を投入していますので、決してタイミングが早いとは思っていません。

  • 9月に販売を開始する「α7R IV」。「α7R III」や「α7R II」などの従来モデルは併売する

――新しいセンサーですが、画素数が6000万画素超に増えたのに、ダイナミックレンジが従来と変わらない理由は何なのでしょうか。

大島氏:ソニーグループの技術を結集した裏面照射型センサーの進化によるところが大きいですね。従来も裏面照射型でしたが、新しいセンサーはオンチップレンズを通った光が画素に届くまでの集光効率をさらに高めたほか、センサー裏側の配線を銅配線にしています。銅配線は、アルミ配線よりも読み出しの速度が上がるうえ大きい電流が流せることから、画質向上にも貢献しています。

  • α7R IVが搭載した新開発の裏面照射型フルサイズCMOSセンサー(左)。裏面照射型の特徴である高い集光効率をさらに磨き上げた

――APS-Cクロップモードで撮影する際、連写速度は変わらないのですか?

大島氏:はい、速度が向上することはありません。

――α7R IVのピクセルシフトマルチ撮影は2億画素を超えました。並みの三脚ではブレが目立ちそうですが。

大島氏:おっしゃるとおり、ピクセルシフトマルチ撮影はわずかなブレが描写に影響しますので、風などの影響を受ける屋外では厳しいと考えています。屋内での建造物などの撮影を想定していますが、フラッシュも併用できますので、ブツ撮りにも最適だと思います。

α7R IVでは、α7R IIIと同じ4枚合成に加え、16枚の画像をもとにした2億4080万画素の合成が可能になりました。16枚で撮影したものを4枚合成で使うことも可能ですので、処理が重いと感じる場合は柔軟に変更できます。

  • ピクセルシフトマルチ撮影で撮影した2億4080万画素相当の写真。これだけ大きなサイズに伸ばしても、粗さは感じられなかった

課題だった「小指余り」を巧みに解決

――操作性やホールド性など、使い勝手の改良が多く施されていると感じました。数字などで表しにくい部分も含め、そのあたりの改良点を詳しく教えていただけますか。

大島氏:ボタン類は、内部のゴム部材を変えてストロークを深くしています。従来モデルは、手袋をしていると押した感触が分からないという声がありましたので、手袋をしていても感触がしっかり伝わるようにしました。

  • ボタン類は明確に「操作のしっかり感」が高まった

グリップのホールド性も改良しています。シャッターボタン付近の傾斜を見直して高さを稼ぎつつ、中指をかける凹みを少し高い位置にずらしたことで、従来モデルで指摘されていた小指が余ってしまう課題を改善しました。

  • α7R IV。中指が収まる凹みが高い位置にきている。電子ダイヤルの角度も変わっている

  • こちらはα7R III。シャッターボタン付近の傾斜が異なるのが分かる

防塵防滴構造も改良し、我々が現在出している一眼カメラのなかではもっとも優れた性能としました。これは、α9を上回るレベルです。

ちなみに、今回縦位置グリップ(VG-C4EM)も一新しています。既存のものを流用することも技術的には可能だったのですが、ボディの防塵防滴構造を高めたのにグリップがそのままではダメだよね、ということで新しくしました。

バッテリーライフも、α7R IIIで650枚だったところを、α7R IVでは670枚にしています。

――動画でも瞳AFに対応したのは待望の改良だと感じました。動画撮影時の瞳AFは、人物と動物の両方に対応しているのですか?

大島氏:動画撮影時の動物瞳AFは、今回のα7R IVでは対応できていません。人物と違って、動物の瞳AFは実はすごい大変なんです。白黒のブチが特徴のダルメシアン、目や鼻がどこにあるか分かりづらいですよね…(笑)。辞書を増やせば対応できますが、誤検出が増えるなどの弊害も出てしまいます。

動画撮影時は動物瞳AFが使えませんが、動物でもリアルタイムトラッキングは働きますので、それである程度はカバーできるのではないかと思っています。

動画撮影モードでも人物の瞳にピントを合わせ続けているのが分かる

――動画撮影時も位相差AFは機能するのですか?

大島氏:はい。写真撮影時と同様に位相差AFが働きます。

――最後に、カメラ事業の抱負などあれば教えてください。

大島氏:カメラ業界において、ソニーは今でもチャレンジャーだと思っています。それもあり、持っている技術を惜しみなく投入し、カメラの進化を絶えず進めていく戦略でいます。基本的に、技術や機能の価値が分かっていただける上の機種から盛り込んでいきますが、エントリー機種にも徐々に搭載していく方針です。

カメラ業界は縮小傾向にあり、特にエントリー層のユーザーが大きく落ちています。しかし、今年の春に発売したAPS-C機「α6400」は、瞳AFや動画機能などが評価され、世界全体で品薄になるほどの人気をいただきました。

ソニーが今できることを着実にやり、業界全体を再び盛り上げていきたいと思います。

――ありがとうございました。