ご当地グルメを食べる、というのは旅行の醍醐味の1つですよね。旅先で、その地に根付いた料理を食べた、という経験は思い出に残ります。
そこで今回ご紹介したいのが、だんご汁です。このだんご汁、簡単に紹介すると「小麦粉で作った団子の汁物」なのですが、そう聞くと、「すいとんと何が違うの?」と疑問に思うかもしれません。中には、「だご汁じゃないの? 」と思う人もいることでしょう。
そこで今回は、すいとんとだんご汁の違いについて紹介します。見た目や味は似ているけれど、地域によってだんごの形や調理方法にちょっとした違いがあるこれらの料理。旅行に行く際などに、こうした違いを理解して食べてみると、その地での楽しみが1つ増えることでしょう。
大分名物「だんご汁」とは
だんご汁とは、大分県で食べられている郷土料理です。大分では給食にも出るメニューで、家庭でもよく食べられています。
小麦粉で作っただんごは、平べったい麺のような見た目をしており、うどんよりもコシがあって食べごたえがあるのが特徴です。このだんごを人参やごぼう、しめじ、豚肉と一緒に味噌ベースの汁で煮たのが、大分名物のだんご汁となります。
この料理は昔、米不足のころに大分県で主食として食べられていたと言われていて、そのときから長らく親しまれてきたもの。大分県の周辺の地域(熊本県など)では、似たような名称の「だご汁」というものもあります。
「だんご」はなぜ麺状なのか?
だんご汁に入っているだんごは、麺のように平べったい形になっていることが多いです。それはなぜなのでしょう?
ちなみにこのだんごを作る際には、丸めた状態で数十分~数時間ほど置くのですが、このときの見た目が団子に似ていることから、「だんご汁」と呼ばれるようになったとか。その後、生地を伸ばして麺状にするのは、味を染み込ませやすくするためだそうです。
生地を伸ばす際には、薄力粉に水と塩を入れて、ボウルのなかでしっかり揉むことが重要です。よく揉みこむことで、歯ごたえがしっかりしているだんごができ上がります。
「すいとん」とは
一方のすいとんも、だんご汁と同じく米不足の時に食べられるようになった郷土料理と言われています。小麦粉に水を入れて作るすいとんを、野菜と一緒に煮込んで食べるもので、先に紹介しただんご汁とよく似た食べ物です。ちなみにこのすいとんは麺状ではなく、楕円形の形をしていることが多いです。「すいとん汁」という呼び名でも知られています。
「すいとん」はなぜ楕円状なのか?
すいとん汁に入っているすいとんは、まん丸ではなく、それがちょっと潰れたような楕円の形になっていることが多いです。それはなぜなのでしょう?
すいとんは、薄力粉と片栗粉を混ぜ、そこに水を入れて作ります。その後、沸騰した汁の中に、すいとんをちぎって入れたり、スプーンですくって中に入れたり、丸めた後で真ん中を押しつぶすようにして入れたりしてすいとん汁を作ります。
この時に、すいとんを楕円形にするのは、丸めたまま汁に入れるよりも、中に味を染み込ませやすくするためなんだそうです。
違いは生地の「形」と「作り方」
さて、ここで先述した「だんご汁」と「すいとん」の違いについてまとめましょう。ここまで読まれた方はすでにお気づきでしょうが、これら2つの違いは、その形と作り方にあります。
平べったい麺のような形をしただんご汁と、丸や楕円のすいとん。これらの形の違いは、味を染み込ませるための工夫にありました。
また、生地の作り方も異なりましたね。だんごの原材料は、主に薄力粉と水。これを5分以上こねて、2時間ほど置くのが基本です。一方のすいとんは、薄力粉に片栗粉を混ぜており、そこに水を加えて硬さがちょうどよくなったら、そのまま鍋に入れて食べられます。すいとんよりもだんご汁の方が、汁の味が速く染むようになっているんですね。ちなみにすいとんは、だんごとは異なり片栗粉を入れている分、比較的もちもち感が強いのも特徴です。
だんご汁もすいとんも、同じ「小麦粉で作った団子の汁物」ではありますが、作り方や形状が違う分、ちょっとした味や食感の違いがあります。どちらか一方を子供のころから食べてきた、という方は、一度もう一方の料理を食べてみてはいかがでしょう?
地域によって色んな呼び方がある
以上、だんご汁もすいとんも、多少の違いはあれどその材料と作り方は似たようなものだと説明しましたが、それ以外にもこれらに似た料理は全国で食べられています。
ちなみにこれらの料理のうち、もっとも広く伝わっているものはすいとんだと言われています。似た料理に、岩手北部を中心とした地域では「ひっつみ」、九州の「だんご汁」「だご汁」などもあります。調理方法や呼称が地域によって変化があるのは面白いですね!
各地に足を運んだ際には、その地においてある汁物がなんと呼ばれているのかに注目してみると、また違った楽しみ方もできそうです。
だんご汁とすいとんのレシピ
今回紹介しただんご汁とすいとんですが、住んでいる地域によってはどちらか一方を食べたことがない、という方もいることでしょう。そこで今回は、その両方のレシピの一例も合わせてご紹介します。家で一度、作ってみてはいかがでしょうか?
だんご汁のレシピ
まずは、だんご汁の作り方について。
<具材>
・豚コマ肉……200g
・大根……1/2本
・里芋……8個
・人参……1本
・ごぼう……1/2本
・しめじ……1束
・長ねぎ……1本
・しょうが……1片
これらを食べやすいサイズに切る
<味付け>
・だし汁……1,000~1,200cc
・味噌……大さじ3~
・みりん……大さじ1
・薄口しょうゆ……大さじ1
<だんご>
・薄力粉……100g
・水……50~60cc
・塩……少々
<作り方>
(1) 薄力粉に水と塩を加えて5分以上こねる
(2) それらを親指サイズに丸めたあと、布巾をかけて2時間ほど置く
(3) 油を入れた鍋で、豚コマ肉としょうがを炒める
(4) そこに野菜とだし汁を加えて、アクを取りながら火が通るまで煮る
(5) 親指サイズの団子を平らに伸ばしながら鍋の中に入れる
(6) 団子に火が通ったら完成
「すいとん」の作り方
次に、すいとん汁の作り方について。
<具材>
・大根……1/2本
・人参……1/2本
・ごぼう……1/2本
・しめじ……1束
・長ネギ……1/2本
<味付け>
・水……400cc
・煮干し……5g
・しょうゆ……小さじ2と1/2
・味噌……少々
<すいとん>
・薄力粉……100g
・水……75cc
・片栗粉……30g
<作り方>
(1) 水を鍋に入れ、煮干しでだしを取る
(2) だしを取ったら、野菜を入れて煮立てる
(3) 薄力粉と片栗粉をボウルの中で混ぜ、水を入れる
(4) 水を入れたら、耳たぶくらいの硬さになるまでよくこねる
(5) 鍋が沸騰したら、しょうゆと味噌で味を調える
(6) すいとんをちぎって(スプーンを使って丸めてもよい)鍋に入れる
(7) すいとんに火が通ったら完成
まとめ
今回は、だんご汁とすいとんの違いについてご紹介しました。どちらもお米がない時代に、お腹を満たすために小麦粉で作られた食べ物とあり、歯ごたえがしっかりしていて腹持ちのいい料理です。野菜をたっぷり食べられるのもいいですよね。
近いうちに遠出の予定がある人は、その地にある「小麦粉で作っただんごの汁物」がなんと呼ばれているのか、事前に調べておくのも楽しいかもしれません。
「ご当地グルメ」と言えば
知れば知るほど奥深いご当地グルメ。こうした“似ている料理でも、地域によって製法や呼び方が異なる”というものはほかにもあります。例えば、「黒はんぺん」なんかもそうですね。
「はんぺん」とよく似た「黒はんぺん」。実はこの料理、静岡県でよく食べられており、静岡の人にとってはむしろ「はんぺん」よりも馴染みがあるようで、区別のためにはんぺんのことを「白はんぺん」と呼ぶほど。この黒はんぺんと白はんぺんの違いはなんなのでしょう? 興味がある方は、こちらも合わせてご覧ください。
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