斎藤慎太郎王座への挑戦権を争う第67期王座戦挑戦者決定トーナメントの豊島将之名人―羽生善治九段戦が7月12日、関西将棋会館で行われ、豊島名人が勝って挑戦者決定戦に進出しました。
羽生九段の裏芸に完勝
対局は羽生九段の先手で始まり、基本的に「居飛車」で戦うことが多い羽生九段が裏芸とも言える振り飛車の一種「四間飛車」を採用しました。序盤、振り飛車に有効な「居飛車穴熊」(※角側の香をひとつ進め、香のいた位置に玉を潜らせて金銀でガチガチに囲う作戦)などの持久戦を警戒し、玉の囲いに掛ける手を省略して銀、桂などの攻め駒を前線に送り込む手を優先した羽生九段。それを見た豊島名人は「居飛車穴熊」には囲わず、自身も簡素な玉の囲いのまま急戦を仕掛けました。
豊島名人は銀を渡す代わりに相手の桂、香の2枚を奪い、さらに飛、角ともに敵陣に成り込んでペースをつかみます。羽生九段は相手の龍、馬(※成った飛と角)を自身の飛、角と交換して攻め合いを目指しますが、豊島名人は丁寧な指し回しでさらに優位を拡大。最後は相手が手駒を何枚持っていようと自身の玉が絶対に詰まない形を築き上げ、怒涛の寄り身を見せて押し切りました。
豊島名人は第62期、第63期に続き3回目の挑戦者決定戦進出となりました。第62期には丸山忠久九段を下し挑戦権を獲得、五番勝負は羽生善治王座(当時)に2勝3敗で奪取はなりませんでした。第63期は決定戦で佐藤天彦八段(当時)に敗れています。
挑戦者決定戦の相手は18日に行われるもうひとつの準決勝、永瀬拓矢叡王―佐藤天彦九段戦の勝者となります。豊島名人と両者とのこれまでの対戦成績は[豊島2-0永瀬]、[豊島15-6佐藤天]です。
羽生九段はあと2勝でタイトル獲得通算100期が懸かる五番勝負進出でしたが、惜しくも夢は叶いませんでした。次なるタイトル戦登場の可能性がある棋戦は、番勝負開始が近い順(※例年)に、二次予選からの登場となる第69期大阪王将杯王将戦、本戦がスタートしている第45期棋王戦、A級順位戦で幸先の良い白星を挙げた第78期名人戦、番勝負が名人戦と重なる第5期叡王戦となっています。