夏のポタフェスは、毎回なにかしらのトレンドを感じさせるものですが、昨今のトレンドは断然「完全ワイヤレスイヤホン」。一般向けに初めてお披露目となった製品をいくつかピックアップ、実際に見て・聴いたインプレッションをお届けします。
AVIOT「TE-BD21f」
今回のポタフェスで屈指の行列を生み出していたのが、「AVIOT TE-BD21f」。容積に厳しい制約がある完全ワイヤレスイヤホンでは珍しい、バランスド・アーマチュア(BA)ドライバ×2にダイナミックドライバ×1のハイブリッド/トリプル搭載の製品で、発表直後から大きな話題を集めています。
工場から届いたばかりというTE-BD21fを、aptX対応Androidスマートフォンに接続して試聴してみました。ダイナミック型らしい低域の量感と、BA型ならではの緻密な音場感は、ハイブリッド構成だから実現できたといえるでしょう。低域から中域へのつながりもスムーズで、音の輪郭も自然です。トリプル搭載にしては小さいくらいのサイズで、耳への負担はそれほど感じません。
付属のアクセサリーも気が利いています。一見すると謎のシリコン製バンドが付属し、バンド両端のリングにTE-BD21fをはめると、首かけBluetoothイヤホンに早変わりするという優れものです。ブース担当者によれば、「凛として時雨」のドラムス担当・ピエール中野氏とのコラボモデル「TE-BD21f-pnk」のために用意したけれど、周囲で好評のため通常版にも同梱するようにしたとのこと。かなり便利に使えるので、マネするメーカーも出てくる予感です。
HiFiMAN「TWS600」
お値段594万円の超弩級ヘッドホンシステム「SHANGRI-LA」など、気合いの入ったデバイスで知られるHiFiMANから、初の完全ワイヤレスイヤホン「TWS600」が登場しました。約20万円のフラグシップ有線イヤホン「RE2000」と同じく、ナノ粒子コーティングが施されたトポロジー振動版を採用しており、音にこだわった設計がウリです。
音質はHiFiMANらしいというか、やや独特。アコースティックギターやヴィオラなど、倍音を多く含む楽器は艶やかに描き出すのですが、EDMのように音の塊感がある音源は、スピード感がもの足りなく思えます。ブランド初の完全ワイヤレスということもあり、さらに尖ったモデルの登場に期待です。
Nain「Zeeny TWS」
新進気鋭のNain(ネイン)が送り出すイヤホンといえば、「音声通知機能」が特徴。Nainはイヤホンをヒアラブルデバイスと位置付けており、スマートフォンに届いた通知や、カレンダーに登録した予定が近づくと音声で知らせるといった機能に注力しています。
そんなNain初の完全ワイヤレスイヤホンが「Zeeny TWS」。音声通知機能に対応することはもちろん、IPX7の防水性能を備え、9時間の連続再生が可能。SoCにQualcommのQCC3026を採用し、右のイヤホンと左のイヤホンにそれぞれ信号を独立して送信する「TrueWireless Streo Plus」もサポートしました。
iPhoneとの組み合わせでZeeny TWSを利用してみた印象ですが、音楽鑑賞用の完全ワイヤレスイヤホンとしては基本に忠実なつくりで、デザインを含め、奇をてらったところがありません。6mm口径のダイナミックドライバが奏でる音も外連味(けれんみ)がなく、フラット指向で飽きのこないテイストでした。
Zeeny TWSの肝は、やはり音声通知。LINEメッセージの通知や、現在時刻の読み上げといった機能を試してみましたが、ユーザー辞書に読み上げ用の単語を登録したり、再生速度を0.8倍速〜1.4倍速の間で調整できたりなど、細かくカスタマイズできるところがユニークです。音楽鑑賞だけではもの足りないユーザーにとって、実用性に優れた完全ワイヤレスイヤホンといえます。
Klipsch「T5 TRUE WIRELESS」
Klipsch(クリプシュ)といえば、2007年に発売され驚異のロングセラーを記録した"BA1基のみ"搭載の有線イヤホン「X10」がつとに知られています。そんなクリプシュ初の完全ワイヤレスイヤホン「T5 TRUE WIRELESS」が、ポタフェスに参考出品されていました。日本での発売は未定だそうですが、オンキヨー&パイオニアブースのすぐ横で展示&試聴を実施していたことからすると、推して知るべしです(オンキヨー&パイオニアは今後、クリプシュブランド製品の取り扱いを予定しているようです)。
肝心の音ですが、クリプシュらしい軽快かつ剛性感あるサウンドは健在です。やや楕円形のイヤーチップは柔らかいシリコン素材で、耳穴にしっかりフィット。5mm口径のダイナミックドライバが、得失なく音を伝えます。コーデックはSBC/AACに加え、aptXにも対応していますから、描写には緻密さも感じます。充電ケースは、某定番ライターを思わせるデザインと質感で、なんとも男心をくすぐります。