マツダは先頃、毎年恒例の「サステイナブルZOOM-ZOOMフォーラム2019 in 横浜」を開催した。話題の新型車「MAZDA3」の発売直後だったことも影響したのか、今年は参加希望者が殺到し、申し込みが1,000組に達したところで募集を締め切るという異常事態(?)になったそうだ。
日本最大手のトヨタ自動車と比べれば、販売台数で約10分の1の規模しかないマツダ(2018年度、日本市場の販売台数で比較)が、なぜここまで多くの人を惹きつけるのか。その謎を解くべく同イベントに潜入し、その秘密を探ってきた。
マニアックなところにまで踏み込むプログラムが満載
会場に入り、まずはスケジュールを一読。本イベントは大きく分けて「講演・対談」「体験プログラム」「展示・デモ」「お子さま向け」の4つで構成されているのだが、ひと目でその異質さに気が付いた。
「体験プログラム」の内容は、「MAZDA3」をはじめとするマツダ車の試乗会や先進技術の体験など。「展示・デモ」では究極の内燃機関と囁かれる「SKYACTIV-X」などを見ることができた。「お子さま向け」のセクションは、歴代マツダ車の「缶バッチ製作」や「マツダの挑戦!」クイズショーなど、子どもが喜びそうな各プログラムで構成。これらの内容だけでもかなり濃密な1日になりそうだが、問題は「講演・対談」だ。
「講演・対談」プログラムには「魂動デザインの進化とMAZDA3デザイン」や「マツダが考える人間中心の開発哲学とは」など、マツダのクルマづくりにかなり踏み込んだマニアックなテーマが設定されていた。そのラインアップはまるで、大学の授業かプレス向け説明会のようで、「これを面白がって見るファンはいるのだろうか?」と多少の不安を覚えずにはいられなかった。
この疑問を解消するべく、開演時間が迫っていた「マツダが考える人間中心の開発哲学とは」へと足を運ぶ。すると、不安は瞬時に吹き飛んでしまった。会場内に用意された席は満席となっており、開演の時を待つマツダファンの姿がそこにあったからだ。
マツダ 商品本部本部長の猿渡健一郎氏が登壇し、約40分。講義の間、集まったマツダファンは同氏の言葉に熱心に耳を傾けていた。マツダファンの熱量の高さを、あらためて感じた次第だ。
キーワードは「ユーザーとのつながり」
そもそもなぜ、マツダはこのようなイベントを開催しているのか。マツダ広報に話を聞いてみると、「お客様との距離が最も近いメーカーになりたいから」との回答が返ってきた。
マツダは“ユーザーとの絆が世界一強いメーカーになる”という企業ビジョンを掲げており、これを同社では「マツダプレミアム」と呼んでいる。これは、金額が高いなどの価値観ではなく、人とのつながりを「プレミアム」という言葉で表現したものであり、ユーザーとの絆を強める手段として、こうした場を設けているわけだ。
「サステイナブルZOOM-ZOOMフォーラム2019 in 横浜」の特徴の1つが、運営の全てを社員でまかなっていること。そのため、イベント期間中、マツダ社員はユーザーとダイレクトにコミュニケーションを取り、同社の思いを伝えられるという。
「MAZDA3」の発売後、インターネット上には同車に試乗した際の動画を公開する人が増えているそうだが、そうした一般ユーザーの反応・感想を見ていると、マツダ広報をして「この方はマツダの開発担当者ではないのか!?」とうならせるほど詳しいケースもあるとか。これなどはまさに、マツダファンが同社と深くつながり、商品についても日頃から情報収集を欠かさずに過ごしていることを示す好例なのではないだろうか。
コアなマツダファンを生み出す秘密が垣間見えた今回の「サステイナブルZOOM-ZOOMフォーラム2019 in 横浜」。こうしたイベントを通して、今後も“マツダ信者”が続々と誕生していくことは間違いなさそうだ。