里見香奈女流王座への挑戦権を争う第9期リコー杯女流王座戦本戦1回戦の中井広恵女流六段―上田初美女流四段戦が7月10日に行われ、中井女流六段が勝って2回戦へと進みました。

堅陣から繰り出される攻撃 耐えに耐え逆転

191手の熱戦を制した中井女流六段

本棋戦はマイナビ女子オープンと並び女流棋士以外の女性、アマチュアや女性奨励会員にも出場機会があるオープン棋戦。アマ選手であっても東日本と西日本、1期に2回行われるアマチュア予選を勝ち抜けば、女流棋戦に混じり公式戦である一次予選に参加でき、勝ち抜いてゆく限りは二次予選、本戦、そして夢の五番勝負への道が開けています。

2011年度の第1期では一次予選から参加した加藤桃子奨励会員と伊藤沙恵奨励会員(いずれも現女流三段)が本戦準決勝まで勝ち進み、加藤奨励会員が直接対決を制して決勝五番勝負に進出。清水市代女流六段を3-2で破り初代女流王座に就いて話題となりました。

10日の中井女流六段―上田女流四段戦は、後手の上田女流四段が飛車を振り、反対の隅に玉を移動させ金銀で固める「振り飛車穴熊」を採用。中井女流六段は自玉を固めつつ、穴熊の弱点である上部からの攻めが狙える「銀冠」の布陣で対抗しました。

  • 第9期リコー杯女流王座戦本戦トーナメント表

中盤は堅陣を頼りに猛攻を仕掛けた上田女流六段がペースを握り、3枚あった中井玉を守る金銀をすべて吹き飛ばします。苦しい形勢の中井女流六段は先に3時間の持ち時間を使い果たし、1分将棋(※1手1分以内の着手が求められる状態)に入りながらも必死に粘りました。その辛抱が実り、上田女流四段も1分将棋に入った最終盤は混戦の様相に。双方じゅうぶんに考慮できないままの着手が続く中、最後に勝利の糸をたぐり寄せたのは中井女流六段でした。総手数191手、ベテランが苦しい局面、苦しい時間を耐えに耐えての逆転勝利を収めました。

中井女流六段は1981年に女流2級になり、1985年度には女流名人位を獲得するなど早々に活躍。タイトル獲得は通算19期を数えます。2006年度を最後にタイトル戦番勝負からは遠ざかっていますが、未だ本戦、挑戦者決定リーグの常連であり、本局でも健在ぶりをアピールしました。2回戦は加藤女流三段―鈴木環那女流二段戦の勝者との一戦となります。

里見女流五冠を筆頭に、西山朋佳女王、加藤女流三段、伊藤女流三段の現役奨励会員、元奨励会員4者の名前で埋め尽くされている近年の女流タイトル戦。この中井女流六段や、昨年度里見女流五冠からタイトルを奪った渡部女流三段などの奮起が見られれば、さらに見どころが多くなることは間違いがありません。