シグマは7月11日、Lマウントを採用したフルサイズミラーレス「SIGMA fp」を発表しました。コンパクトデジカメをわずかに大きくした程度の小型軽量ボディにフルサイズセンサーを搭載したのが特徴。ボディは質感の高いスクエアフォルムで、左右にホットシューやグリップなど多彩なアクセサリーを装着できる拡張性の高さも備えます。長時間の動画撮影を見据え、発生する熱を効率よく放出する冷却機構も搭載。個人の写真ファンだけでなく、映画撮影に使いたいプロなど、幅広い層にアピールします。

発売は今秋の予定で、価格は未定。

  • シグマがサプライズで発表したフルサイズミラーレス「SIGMA fp」。昨今の主流である流線型ではなく、スクエア&フラットに仕上げたコンパクトボディが最大の魅力。装着しているレンズは、同日に発表したLマントの単焦点レンズ「45mm F2.8 DG DN」

fpのおもな特徴は以下の通りです。

  • 有効2460万画素のフルサイズ裏面照射型CMOSセンサー(ベイヤー配列)
  • レンズマウントはLマウントを採用、シグマやパナソニック、ライカのLマウントレンズがすべて利用可能
  • 感度はISO100~25600、拡張時はISO6などの超低感度やISO102400などの超高感度にも対応
  • 動画は4K/24fpsでの撮影に対応、動画でもRAW撮影(CinemaDNG形式)が可能
  • ボディ内にヒートシンクを搭載し、動画撮影時に発生する熱を効率よく放出
  • ボディは防塵防滴構造
  • 背面液晶は3.15型(約210万ドット)のタッチパネル式(固定式)
  • シャッターは電子シャッター、完全無音で撮影可能
  • 電子シャッターにより、3枚の写真を一度に連写・合成しての自然なHDR撮影が可能
  • 写真の一部分だけが動くシネマグラフを簡単に生成する機能を搭載
  • 人物の瞳にピントを合わせる瞳AFを搭載
  • 本体サイズはW112×H69.9×D45.3mm、重さは約422g(メモリーカード、バッテリー含む)
  • カメラの3D設計データをWebで公開、サードパーティー製アクセサリーが多数登場することが期待できる
  • SIGMA fpを手に掲げるシグマの山木和人社長

驚くほどコンパクトながらプロも納得の機能を凝縮

fpの最大の特徴が、フルサイズセンサーを搭載したレンズ交換式カメラとは思えないほどの小型軽量ボディです。ソニーの高画質コンパクトデジカメ「Cyber-shot DSC-RX100」(W101.6×H58.1×D35.9mm)と比べると、幅、高さ、奥行きともに約1cmずつ大きくなった程度のサイズ感に収まっています。同時に発表した「45mm F2.8 DG DN」のようなコンパクトな単焦点レンズを装着すれば、日々持ち歩くのも苦になりません。

レンズマウントは、シグマがパナソニックやライカと協業して推進しているLマウントを採用します。すでに、パナソニックが描写性能の高い高性能レンズを発売しているほか、シグマ自身は小型軽量の単焦点レンズ「45mm F2.8 DG DN」を発表。両社とも、さまざまな交換レンズを投入していくことを表明しており、将来性も期待できます。

fpは小型軽量ながら、動画を業務で撮影するプロの要求に応えられる本格的な機能や装備を備えているのもポイント。動画は4K画質での撮影に対応しているだけでなく、動画版のRAW撮影というべきCinemaDNG形式での撮影にも対応。発熱が増える動画撮影時でも安定した撮影が続けられるよう、効率よく放熱を行うためのヒートシンクも搭載しています。ISO感度は、拡張時にISO6といった超低感度に設定できるのも、既存のカメラにはないポイントといえます。

  • マウントは、シグマがパナソニックやライカとともに推進するLマウントを採用。撮像素子は、有効2460万画素のフルサイズ裏面照射型CMOSセンサーを搭載する。ボディの上下幅いっぱいにマウントが配置されている。ボディ内手ぶれ補正は省かれた

  • 背面液晶は3.15型で、210万ドットと精細だ。タッチ操作にも対応する

  • 左側面に端子類を集中的に配置。背面液晶の周囲に見えるのが、放熱用のヒートシンクだ

  • ストラップ固定の金具は取り外すと三脚穴が現れ、さまざまなアクセサリーの装着やカメラの固定に利用できる

  • 電源スイッチや写真-動画の撮影モード切替スイッチは上部に搭載する。露出モードの切り替えは、背面の「MODE」ボタンを利用する

  • フルサイズミラーレスながら、fpのサイズはパスポートよりも小さいことをアピール

  • 本体はコンパクトデジカメ並みのサイズ。凹凸が少ない点も評価できる

小さいけれど拡張性も抜群

fpは小型軽量ボディにするため、省かれたものも決して少なくありません。ボディ内手ぶれ補正機構は搭載しないほか、メカシャッター、電子ビューファインダー、背面液晶のチルト機構は省かれました。

その代わり、意外なほどの優れた拡張性を備えています。本体左右のストラップ固定用金具は取り外すと三脚穴が現れ、この部分にさまざまなアクセサリーを装着したり、さまざまな状態でカメラを固定するのに使えます。クリップオンストロボなどのアクセサリーを搭載するシューは、付属のアダプターを用いて外付けする仕組みとなります。

さらに、シグマはfpの詳細な仕様を広く公開する方針を打ち出しており、サードパーティーから対応アクセサリーが登場することが期待できるのも注目といえます。

  • オプションで用意する小型グリップ「HAND GRIP HG-11」を装着したところ。ホールド性がグッと高まる。価格は未定

  • グリップは背面にも回り込んでおり、右手親指のグリップ感が向上する

  • 標準で付属するホットシューユニットを装着すると、クリップオンストロボなどのアクセサリーが装着できる

  • オプションのLCDビューファインダーやマウントアダプター、望遠ズームレンズを装着したところ。本格的な望遠撮影にも対応できる

フルサイズミラーレスの風雲児となるか

各社のフルサイズミラーレスは、一眼レフカメラのスタイルや操作性を継承し、撮影性能や操作性を重視した、いわば「王道」の製品が主流となっています。そこに殴り込みをかけるように登場したfpは、装備こそれらの最新カメラに劣りますが、何より質感の高いデザインと超小型ボディに魅力を感じます。フルサイズセンサーとLマウントを採用したことで、画質も満足できるでしょう。このサイズながら防塵防滴構造なので、天候によらずカメラを取り出せるのも頼もしいと感じます。

価格は未定ですが、発表会に参加した写真家や専門家の多くは30万円前後になると予想しています。フルサイズミラーレスで群を抜くベストセラーとなっているソニーの「α7 III」と同等の価格帯(税込み23万円前後)で登場すれば、レンズ交換式カメラの勢力図を塗り替えるほどのヒットになりそうです。カメラ業界の風雲児となるか、秋の発売が楽しみになってきました。

  • iPhone XS Max(右)と並べたところ。スマホのように日々気軽に持ち歩け、かつスマホでは難しい表現の写真が撮れることから、すでにフルサイズ一眼レフやフルサイズミラーレスを使っている写真ファンも注目の1台となりそうだ