オリンピック・パラリンピック競技大会でアスリートに授与される金・銀・銅のメダルは、アスリートにとって最高の栄誉であるのはもちろんのこと、世界中の人々の目に触れ、日本ならではの文化や魅力を輝かせる存在でもある。

東京2020組織委員会は、この価値あるメダルを製作するにあたり、2017年4月より使用済みの携帯電話や小型家電をリサイクルして活用する「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」を実施してきた。

そしてこのほど、メダル製作に必要な金属量が集まったことを発表。7月10日には同プロジェクトの達成と実績を報告するイベントが開催された。

  • 東京2020大会でアスリートの胸に輝くメダルは、すべて国民から集められた金属で作られるという。イベントにはプロジェクト協力事業者らも登壇

最終的に確保できた金属量は?

大会で授与されるメダルは、金・銀・銅あわせて約5,000個。2019年3月までの2年間で、この材料となる金属の回収を完了し、メダル製作に必要な金属量の100%を確保したという。最終的な確保量は、金:約32kg、銀:約3,500kg、銅:約2,200kg。ちなみに銀の量が多くなっているのは、金メダルも銀から作るためとのこと。

  • 最終的な確保金属量について

回収量は、全国参加自治体による回収(携帯電話を含む小型家電回収)が約7万8,985トン、NTTドコモによる回収(ドコモショップ約2,400店舗にて携帯電話を回収)が約621万台にのぼった。

プロジェクトに参加した自治体の数は1,621自治体で、これは国内の全市町村数1,741のうち9割以上にあたるという。イベントの中で、東京2020組織委員会は「国民の皆さまの協力があって達成できた」と感謝の言葉を繰り返した。

  • 東京2020組織委員会 会長の森喜朗氏

東京2020組織委員会の会長である森喜朗氏は「携帯電話や小型家電を集めてメダルを作るという、素晴らしいアイディアを持って来られた。実際に皆さんのご協力で集めていただき、ついに目標を達成した。これで金・銀・銅のメダルを作る。コロンブスの卵ではありませんが、これまで誰も考えなかったすごいこと。技術国家日本だなと改めて思いました」とスピーチ。

国連の関係者にも同プロジェクトは好評のようで、「持続可能な開発目標(SDGs)の観点でもご評価いただいている。オリンピックは、世界に貢献していく、次の世代に何かを残す、そういった意味合いもある。日本が2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、世界に先駆けて革新的な取り組みをやったということが残せれば嬉しい」と笑顔を見せた。

ドコモらが感謝状を受理

イベントの終盤には、NTTドコモのほか数社のプロジェクト協力事業者らに感謝状が贈呈される場面も。

  • 森喜朗氏から感謝状を受け取る、NTTドコモ 代表取締役副社長の丸山誠治氏

NTTドコモ代表取締役副社長の丸山誠治氏は「ドコモでは貴重な鉱物資源の有効活用のため、1998年から使用済み携帯電話の回収とリサイクルに取り組んでいます。2015年には東京2020大会のゴールドパートナーに選ばれたことを受けて、我々のリサイクルプロセスを使ってメダルを作るプロジェクトを組織委員会に提案させていただきました」と経緯を説明。2017年4月に正式にプロジェクトがスタートすると、全国のドコモショップで積極的に回収を進めたとのこと。

丸山氏は続けて「リサイクルは言うまでもなくコストや手間がかかりますが、限りある資源の大切さに勝るものはございません。このような地道な取り組みが世界中に発信され、子供たちを通じて社会に定着し、東京2020大会のレガシーになれば幸いです」と同プロジェクトへの想いを述べた。

  • プロジェクトを通して、資源の有効活用の重要性を訴えかけるNTTドコモの丸山誠治氏

メダルの製造は今年1月から始まっており、2020年5月頃に完成予定。今月24日に行われる五輪開幕1年前イベントでは、メダルのデザインが発表されるという。