普段はあまり意識せずとも、テレビのニュースなどを見ていて、ふと自分も社会に貢献したいという気持ちを抱くことは、誰しもあるはず。美味しいコーヒーやフードを楽しみながら、そんな思いを実現する機会が得られるカフェ「imperfect(インパーフェクト)表参道」が誕生したと聞いて早速行ってみた。

  • 表参道の駅から徒歩2分ほどの歩道に面した場所にある

    表参道の駅から徒歩2分ほどの歩道に面した場所にある

世界の食と農を取り巻く課題を学べるカフェ

7月4日、表参道ヒルズ同潤館1階にオープンした「imperfect 表参道」は、ナッツ、スパイス、カカオ、コーヒーなどの加工食品の製造・販売を通じて世界の食と農を取り巻く社会課題を解決することを目的に設立された「imperfect株式会社」が「ウェルフード&ドリンク」を提供するカフェ。ウェルフードとは、「私たち生活者のみならず、世界や社会にとってもWell(よい)」という意味が込められたもの。店舗はひっきりなしに多くの人が行き交う歩道に面しており、外から見ても洒落た店内の様子は人目を惹く。

  • 入口にすぐのところに並んでいる「グレーズドナッツ」

    入口にすぐのところに並んでいる「グレーズドナッツ」

店内に入るとすぐに「グレーズドナッツ」がズラリ。洋酒のおつまみにも合いそうな「ソルティマスタード」や絶妙な甘さとしっかりした歯ごたえが印象的な「アップル&チョコレート」等が50g(税別580円)から量り売りされている。

  • 生姜とナッツとチョコが意外な好相性の「レモン&ジンジャー」はイチオシ!

    生姜とナッツとチョコが意外な好相性の「レモン&ジンジャー」はイチオシ!

隣に目を移すと板チョコにナッツやフルーツが入った「チョコレートバーグ」が。「ナッツ&クランベリー」を食べてみると、ビターなチョコにクランベリーの酸味が混ざり合い、硬軟のある食感も楽しい。色鮮やかな「レモン&ジンジャー」も夏にピッタリの爽やかな味で美味しかった(各税別780円)。その横にはオーダーしてから3種類のクリーム(バニラ、チョコレート、ストロベリー)を詰めてくれる「シュークリーム」(税別420円)もあり。ストロベリーを試食してみたところ、意外とさっぱり、皮も軽くてとても食べやすかった。

  • オーダーしてからクリームをたっぷり入れてくれるシュークリーム

    オーダーしてからクリームをたっぷり入れてくれるシュークリーム

また、ドリンクコーナーも併設されており、インドネシア、ルワンダ、グアテマラで生産された豆から選べるハンドドリップのコーヒー(税別550円)のほか、ナッツバターをエスプレッソに混ぜた「ナッツバターコーヒー」(税別650円)も用意されている。ひと口飲んでみると、あまり経験したことのないようなまったりとした口触りと味で、ちょっとクセになりそう。ここでしか飲めないそうなので一度味わってみてほしい。

  • 店内には3つのプロジェクトが掲示されていた。この中から自分が実現したいものに投票することができる

    店内には3つのプロジェクトが掲示されていた。この中から自分が実現したいものに投票することができる

社会課題への取り組みにも参加できる

「imperfect 表参道」の特徴は、カフェを利用したり、店内の商品を買うことで、社会課題解決への取り組みに参加できること。世界と社会を少しでもよくするための活動として「Do well by doing good.」をスローガンに掲げており、お客さんは商品購入時にチップをもらい、「環境」「教育」「平等」という3つの中から、取り組むプロジェクトに投票できるというものだ。現在、店内に掲示されているプロジェクト候補は以下の3つとなっている。

(1)2万本の苗で森と生き物の命をまもろう!
(2)農園の経営を支援してカカオ農家を笑顔に!
(3)女性たちのい農の学びを支えて平等な社会を!

投票により決定した取り組みは、現地で記録映像を制作して、WEBメディア等で公開されるという。

  • 実直なお人柄が感じられたimperfect株式会社代表取締役社長の浦野正義さん

    実直なお人柄が感じられたimperfect株式会社代表取締役社長の浦野正義さん

単なるカフェの運営ではなく、こうした取り組みを行う理由はどこにあるのだろうか? imperfect代表取締役社長の浦野正義さんにお話を伺ってみた。かつて食品原料の輸入業に携わっていた浦野さんは、世界中の農業の生産現場を訪れる度に、貧困・搾取といった社会課題を目の当たりにしてきたそうで、貧困の代表的な例として、コートジボワールの生産農家の日収はわずか200円だったという。また、国連食糧農業機関(FAO)によると2050年に世界の人口が90億人になり、そのうち8億人が貧困状態になると見られているそうで、そうした社会課題を実業を通して少しでも解決することができればという思いから会社を立ち上げ、「imperfect 表参道」のコンセプトが生まれたのだとか。

  • カフェだけではなく商品を買うこともできる

    飲食だけではなく商品を買うこともできる

ただし、お客さんに社会課題をお説教のように押し付けるようなことはしたくない、という浦野さん。それはあくまでも“美味しさ"の先の話だと思っているそうで、店舗デザインやメニューは妥協せずにとことんこだわったという。

「美味しいとか、カワイイとか、店を訪れてもらうきっかけは何でもいいと思うんです。その上で、最後にちょっとだけお手間をかけていただくんですけど、投票して社会課題の解決に加わることで、少しでもそういった意識を持ってもらうことができたらな、と考えています」

  • 「美味しい」が世の中への「いいこと」に繋がるなんて最高だ

    「美味しい」が世の中への「いいこと」に繋がるなんて最高だ

オープンにあたって用意されているプロジェクトは3つのみだが、今後売り上げの規模を少しでも大きくして、食品原料を生産している農家やプロジェクトに多くの支援をしていきたいという。

「支援というと寄付みたいな印象があるかもしれないですが、決してそうではないんです。お客さまに“美味しい"と感じてもらった一部をプロジェクトにお返しすることで、農家が自立して歩留まりがよくなったり品質が向上すれば、さらなる“美味しい"に繋がると思っているんです。この循環があたりまえになる世界を作っていきたいですね」と浦野さんは語ってくれた。

表参道のオシャレなカフェで美味しいフードとドリンクを楽しんだ後に、ちょっとだけ社会課題の解決に参加できたら、きっと気分がいいはず。みなさんも、仕事や買い物の合間のカフェタイムに是非一度訪れてみてほしい。

●information
「Well Food Market & Cafe imperfect表参道」
東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ同潤館1F
営業時間
11時~21時(日曜日のみ20時閉店)

岡本貴之(オカモト タカユキ)

1971年新潟県生まれのフリーライター。音楽取材の他、グルメ 取材、様々なカルチャーの体験レポート等、多岐にわたり取材・ 執筆している。好きなRCサクセションのアルバムは『BLUE』。趣味はプロレス・格闘技観戦。著書は『I LIKE YOU 忌野清志郎』(岡本貴之編・河出書房新社)」。