夏は何かと物入りです。お盆などで帰省される方もあるでしょうし、旅行やスポーツを楽しむことも多いでしょう。さらに年々蒸し暑くなる気候をしのぐには、エアコンを一日中かけっぱなしという家庭も少なくないでしょう。レジャー費や高熱費がびっくりするくらいになったりしませんか?
暑い夏をさわやかに乗り切り、夏休みを目いっぱい楽しみ、なおかつ家計の負担を抑えるにはどのような方法があるでしょうか。
『家のつくりようは夏をもって旨とすべし』とは?
エアコンも扇風機もない時代にはどうしていたのかと思うくらい、夏はエアコンのフル活動となっています。昔は今ほど気温も高くなく、都会特有のヒートアイランド現象はなかったかもしれませんが、それでもそれぞれ独自の工夫をして凌いでいたのではないかと思います。
「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」とは、吉田兼好の『徒然草』の一節です。昔の隙間だらけの住まいでは、冬は相当耐え難いと思われます。しかも現代のように温かく工夫されたハイテク衣服もなかった時代です。それにも関わらず、夏の方が耐え難く、住まいは夏を過ごしやすく工夫すべきと言っているのです。それだけに、夏の蒸し暑さは耐え難かったことが窺えます。
開口部を大きく開けて、さわやかな風が室内に吹き抜けさせて、蒸し暑い空気を一掃してくれることを期待していたのです。その分冬は寒いということになります。現代から見ると、よほど忍耐強かったと思わざるを得ませんが、それでも先人の知恵は生かさない手はありません。
植物の力で、涼しさを確保しよう!
植物は絶えず葉から水分を蒸発させています。それによる気化熱を利用するのです。マンションや断熱性の高い現代の住まいの場合は、風通しが良ければエアコンの出番は少なくできます。室内を流れる風の温度を植物の力を借りて下げてみましょう。
じっくり取り組むのであれば、夏の庭先で気温を下げるのに、最も効果の大きい方法は大きな木を植えることです。窓の外側が木陰になるように落葉樹を植えれば夏は木陰を作り、冬の日差しも確保できます。藤棚やぶどう棚もよいでしょう。
今からでも間に合うものとしては、芝を植える方法があります。人工芝と自然の芝では表面温度は20℃も違いがあるのです。またゴーヤなどはマンションのバルコニーでも育てることが可能で、私もバルコニーで育てていたことがあります。目の前に緑があるだけでも涼しく感じますし、葉から蒸発する水分が熱を奪ってくれます。夕方に葉全体に水をかけると、びっくりするくらい涼しくなります。バルコニーに水を流すだけよりは、はるかに涼しさが長持ちします。風呂の残り水などを利用すれば費用も掛かりません。
観葉植物を窓辺において、葉に霧を吹くだけでも涼しさが期待できます。
一家団欒は光熱費の節約
最近の高断熱・高気密の住まいであれば、住まい全体の温度が一定で、少しのエネルギーで効率よく住まい全体を空調できます。しかしやはり家族それぞれが別の部屋で過ごすとなると照明やエアコン代はかさみます。冷暖房費を節約するには、家族が一つの部屋で過ごすことが効果的です。
子供の宿題を見ながら、親たちは資格試験のための勉強、家計簿つけなど、思い思いにリビングで過ごすと、エアコン代は節約できるでしょう。
リビングが片付いていないなら、この機会に家族が過ごしやすいように改造しましょう。それぞれの居場所を作るのがポイントです。互いに向き合ってばかりではくつろげません。互いに気配を感じながら、それぞれのことができるように考えます。
居場所の作り方は、「座るところ」「コップや本などを置ける場所」「照明」、この三つが必要です。椅子とテーブルとスタンドが代表的なものですが、代用できるものがあれば何でも大丈夫です。リビングの中に階段があるような間取りであれば階段の1段目と2段目は椅子とテーブルにもなります。チェストやワゴンなど、飲み物をちょっと置いておけるものであればなんでもかまいません。大きなダイニングテーブルであれば、両端を分け合って利用できるかもしれません。
無駄な家財を整理して、家族全員くつろげるリビングに改造してみてください。ソファーとセンターテーブルのセット家具は、分離してリビングの別のところに配置すると、居場所が増えます。下図は、セット家具を分離して家族全員のスタディデスクを追加したケースです。
外国人に学ぶ、お金をかけずに楽しむ工夫
楽しみを創造する喜びに勝るものはありません。既成のお膳立てされたレジャーを楽しむ限りは、相当の費用を覚悟しなければならないでしょう。しかし、自分たちで楽しみ方を工夫する限りにおいては、いくらでも費用を抑えることは可能なのです。
以前にもご紹介したことがありますが、外国人のお金を使わない遊び方の記事が非常に印象に残ったので再度取り上げてみたいと思います。日本在住の外国人のグループが東京の奥多摩で水遊びを楽しんでいる様子の写真と記事なのですが、岩場から豪快に川の深みに飛び込んで遊んでいる様子がいかにも楽しそうです。
外国人達の「こんなすばらしい場所があるのに、なぜ日本人はここを楽しまないのか」というコメントも考えさせられました。他にもお金を使わずに自然と触れ合えるスポットがたくさんあるのに、遊んでいるのはいつも自分たち外国人だけで、日本人は全くいなかったそうです。日本人は用意された施設がないと遊べないようだというのが記事の概要でした。なるほどと思わざるを得ません。
ここにお金をかげずに目いっぱいレジャーを謳歌するポイントがあるように思います。最近目にしたり、読んだりしたいくつかのケースをご紹介してみましょう。
場所を少し変えるだけで、非日常を楽しむ
私が住む地域の海岸にある公園には、土日になると色とりどりのテントが一面に設置されます。広大な公園で、大きな広場もいくつかあり、浜辺もあります。それ以外のちょっとした芝の空間のも思い思いにテントが張られます。以前にはなかった光景です。
親子づれやカップルばかりでなく、一人で読書している方もあります。テントによる木陰、芝による気温の低下、海風のさわやかさ、非日常の楽しさなどが、快適なひと時を作っているのでしょう。本当に思い思いに好きなことをしていて、家でのくつろぎをそのまま戸外へ移した感じで、皆楽しそうです。
自転車にテントを積んで、近くの公園へ! ちょっと場所を変えるだけで、開放感満載の休日となりそうです。
マイカー利用の車中泊で気ままな自由旅を
マイカーを持っているご家庭であれば、マイカーでの車中泊の旅で節約する方法もあります。列車と旅館やホテル利用と比較すれば格段の節約となります。マイカーでの車中泊の旅専門のブログも多く、読むとなるほどと思う点が少なくありません。ガソリン代はかかりますが、道の駅で安い食材を調達できますし、食事もできます。無料で入浴できる温泉をルートに入れれば、その他の生活費は普段と変わらないか、安くすることもできそうです。
中高年世代の車中泊で旅を楽しむスタイルがじわじわと浸透しているそうで、夜になると道の駅の駐車場にはそのような車中泊の車が並ぶそうです。中高年でなくても、土日や連休を利用して車中泊は楽しめます。大型車やキャンピングカーでなくても、テントを持参しキャンプ場を利用すれば家族ずれでも十分可能でしょう。
既存の生活スタイルやレジャーの在り方から、「新しく生活スタイルや楽しみ方を想像する」へ目を向けてみると、節約しながらの楽しみ方はそれぞれの家庭の数だけあるように思います。
■著者プロフィール: 佐藤章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。