日々多忙なビジネスマンにとって、食事はとても大切。とくに一日のエネルギーになる朝食はしっかりとりたいものだ。筆者は子どもの頃から、朝食にはずっとごはんを食べてきた。いや、朝に限らず昼も夜も夜中も、常にごはん。だって米どころ・新潟の生まれだし。とにかくホカホカ炊きたてのごはんさえがあればご機嫌なのだ。
ところが最近、ちょっと気になることがある。それは、巷でブームらしい「高級食パン」の存在。そもそも「パン」が「ブーム」ってなに? ていうか、食パンってそんなに違いある~? 全部同じですよね? とか毒づいていたら、「それは、本当に美味しい食パンを食べたことがないからだ! ドーン!」と、笑ゥせぇるすまんみたいに指摘されてしまった。もしかして、そうなのかしら? ということで、ちょっと遠出して有名なパン屋さんにて“プレミアム食パン”を食べてみた!
ごはん派の俺が有名店「ビゴの店」へ
やってきたのは、神奈川県鎌倉市の街道沿いに店を構える「モン・ペシェ・ミニョン」。日本に本場のフランスパンを広めたフィリップ・ビゴ氏の一番弟子である藤森二郎さんがオーナーシェフを務める「BIGOT TOKYO(ビゴの店)」の5号店として2011年にオープンしたお店で、パン好きには知らないものはいないという有名店なんだとか。
午前11:00頃に到着して店内に入ると、後から次々とお客さんがやってきた。平日の午前中にも関わらずひっきりなしにお客さんがくるなんて、さすがの人気ぶり。近所にお住いの方はもちろん、遠方から車でパンを買いにやってくるお客さんや、週末には観光客も足を運んでいるようだ。
たしかに、1階に並べられたパンたちはものすごく美味しそう! 普段パンを食べていない分、逆に急激にテンションが上がってしまう、単純な俺。見ているだけで楽しくなってきたぞ。2階はカフェになっていてテラス席もあり。せっかくなので、鎌倉の風景を眺めながらパンをいただくことにしよう。
さっそくプレミアム食パンを実食!
さて、ではプレミアム食パンとやらを持ってきてもらおうか! と偉そうに待っていてもしょうがない。ここはひとつ、人気の秘密を探るべくパン職人さんに話を聞いてみよう。あのう、ぶっちゃけこちらの食パンって何がどう違うのでしょうか? 「うちのパンは機械を使わずに手で成型することによって、余計なガスを抜きすぎないで残しているので、フワフワになるんです」とのこと。なるほど、1つ1つのパンが相当丁寧にこだわりの製法で生まれているようだ。
食パンには焼き上げる際にフタをしないことで上部が山型に持ち上がってフンワリする「山型」のタイプと、成型する際にフタをして気泡をなくすことでモッチリした食感になる「角型」の2種類がある。
また、通常、食パンには油脂を使うが、「ビゴの店」では北海道特選バターを使用しているという。それだけでも十分美味しいのだが、「プレミアム食パン」(角型一斤:税別400円)は、フランス産の発酵バター「エシレバター」を使っているため、風味の良さがグンと増す。また、プレミアム食パンだけのために生地を作って製造することで、キメ細かくフンワリした食感を実現できるのだそうだ。
「プレミアム食パン」を手に取ると、本当にフワッフワ! まるでコットンを触っているかのようでなんだか気持ちいい。ひと口ちぎって食べてみると、何もつけなくても豊かな風味を感じることができて、口溶けも良い。機械ではなく手作りだからこその食感、そしてとびきり美味しいエシレバターを使用することで得られる最上級の味の良さが感じられた。ちなみに、オーナーシェフの藤森さんは、日本ではまだなかなか使われていなかった30年以上前からエシレバターを使ってパンを作っていたという。そのため、エシレ社の社長が来日する際には、「ビゴの店」を表敬訪問するのだとか。
パンの美味しさに目覚めてしまった
う~ん、なるほど。こだわりぬいて作られた食パンは確かにとても繊細な味がして美味しい。絶対ごはん派のつもりだったけど、パンの美味しさに目覚めてしまった以上、他のパンも食べてみたい!
「ミショデ」(税別230円)めちゃくちゃモチッとしたパンの中に、ガッツリチョリソーが入っていて、ピリッと結構スパイシー。こういう惣菜系のパンの場合、中身の具に比重が置かれがちな気がするのだが、これは違う。何しろパンが美味い。その中からチョリソーの旨さが出てくるのだから、満足度は相当高い。
「発酵バターのクロワッサン」(税別280円)国産発酵バターの香りがフワッと鼻をついて食欲をそそる。ひと口頬張ってみると、超軽くてサクサク! 正直今まで食べたクロワッサンで一番美味い。これはカフェオレと一緒におやつに食べるといいかも。
「スーリー・ペペ」(税別250円)なにこれカワイイ! ねずみのおじいちゃんが孫をおんぶしているクリームパン。「なんでこんなに可愛いのかよ 孫という名の宝もの(by大泉逸郎「孫」)」。でも食べちゃう。美味い! 美味いよじいじ! クリームが絶妙な甘さでしつこくないから何個でも食べちゃいそうだ。いつもは甘いものを好んで食べない人にもおすすめ。
「ショソン・ポム」(税別280円)フランスでは子どもの頃から食べられているオーソドックスなりんごパイらしい。煮詰めたりんごの甘酸っぱさがサクサクのパイに包まれていて、あっという間にペロリ。幼少期にこんな美味しいおやつを食べていたら、きっと勉強もできるようになった気がする。フランスに生まれたかったよ俺は。
その他、本場仕込みのフランスパンにハムを挟んだ「カスクルート」(税別350円)、瑞々しい洋梨とカスタードクリームのマッチングが絶品な「洋梨のデニッシュ」(税別280円)等、「モン・ペシェ・ミニョン」にはバラエティ豊かなパンが取り揃えられている。
ブームとか関係なく、真心を込めてこだわり抜いて手作りされたパンは、とても美味しい。いつもはあまりパンを食べない人にこそ、おすすめしたいパン屋さんであった。ちなみに筆者は、食パンを2種類持ち帰って早速バターを塗って全部美味しくいただきました。プレミアム食パン、美味い。
●information
「モン・ペシェ・ミニョン」
神奈川県鎌倉市雪ノ下4-3-17
営業時間:7~19時
休:月曜
岡本貴之(オカモト タカユキ)
1971年新潟県生まれのフリーライター。音楽取材の他、グルメ 取材、様々なカルチャーの体験レポート等、多岐にわたり取材・ 執筆している。好きなRCサクセションのアルバムは『BLUE』。趣味はプロレス・格闘技観戦。著書は『I LIKE YOU 忌野清志郎』(岡本貴之編・河出書房新社)」。