令和時代の始まりに合わせるように、今年4月に「働き方改革関連法」が施行された。改革といっても、「実際のところ何も変わっていない」「変わったことでむしろ悪化した」という問題も生じているかもしれない。

では実際、具体的にどのような改革が行われ、どんな不具合が生じているのだろうか。今回は、マイナビニュース会員316名に「あなたの職場の『働き方改革』」をテーマにアンケート調査を実施。本稿では改革によって感じたデメリットにまつわる意見を紹介する。

  • 働き方改革にデメリットはある?

    働き方改革にデメリットはある?

Q1.あなたの職場で実践されている「働き方改革」を教えてください

1位: 有給休暇取得の促進(71.2%)

2位: 時間外労働(残業)の上限規制(45.3%)

3位: 「ノー残業デー」の制定(41.1%)

4位: 時短勤務などのフレックス勤務制導入(25.9%)

5位: 定年の延長(23.1%)

Q2.実施している働き方改革にデメリットは感じていますか

1位: はい(58.2%)

2位: いいえ(41.8%)

■有給休暇取得の促進

・「労働日が減ると、その分生産性が落ちる」(54歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/事務・企画・経営関連)
・「全体的に仕事がたまるようになってきた」(64歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/技能工・運輸・設備関連)
・「有給休暇の強制取得。仕事の有無にかかわらず、毎月消化が義務付けられたから」(43歳男性/レジャーサービス・アミューズメント・アート・芸能関連/事務・企画・経営関連)
・「社員間の意思の疎通やチームワークが低下した気がする」(60歳男性/サービス/専門職関連)

■時間外労働(残業)の上限規制

・「勤務総時間が減ったことで、同僚とのコミュニケーションの機会が少なくなった気がする」(58歳男性/その他金融/営業関連)
・「サービス残業とサービス有給出勤が増えて、本末転倒! 労働時間は同じで残業代が減り、建前上の有給が消化される」(48歳男性/サービス/事務・企画・経営関連)
・「残業分の早帰りを月内で消化できない場合、理由を問われる」(49歳男性/生命保険・損害保険/営業関連)
・「業務量は増える一方で制約も大きくなっているのに、残業時間を抑制しつつ、これまで以上の成果を求めるのは矛盾している」(47歳男性/公益・特殊・独立行政法人/専門職関連)

■「ノー残業デー」の制定

・「残業が全くなくなったことによる収入減」(41歳男性/教育/専門職関連)
・「仕事量は減っていないのに残業できなかったら、持って帰ってしなければならない」(55歳男性/官公庁/事務・企画・経営関連)
・「仕事量は変わらず残業カットで持ち帰り残業が増え、年収は下がり、ろくなことがありません。無理やりな業務改廃で必要なものまでカットされ、そのせいで問題が発生して、かえって仕事が増えてしまう本末転倒となっている。若手も早く帰らされて、スキルを磨く時間がなく、ゆとり教育と同じようになっていて、次の世代が育たないという予想が立ってしまうほどひどい」(50歳男性/輸送用機器/その他技術職)
・「超過勤務に対し、賃金がもともと払われていなかったが、仕事の質を上げるために、職場に残って研究していた。ところが、働き方改革によって職場に残ることも許されなくなった。結局、早朝から出勤し、昼休み返上で研究に取り組んでいる」(55歳男性/官公庁/公共サービス関連)

■時短勤務などのフレックス勤務制導入

・「仕事内容のパフォーマンスを落とさずに業務時間を短くする方法を考え、遂行する必要があるが、全員がスムーズに遂行できているわけではない」(39歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「労働時間管理や、部下の資料管理が大変」(51歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/建築・土木関連技術職)
・「働く時間や場所が柔軟になる一方で、顔を合わせる必要がある業務活動の調整が難しくなっている」(52歳男性/半導体・電子・電気機器/メカトロ関連技術職)

■定年の延長

・「今までは年功序列の賃金に重きを置かれていたが、それが少しずつ変わってきた。若いうちはもっと素早く対応できただろうが、年齢を重ねるとなかなか大変」(34歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/技能工・運輸・設備関連)

■総評

調査の結果、「働き方改革関連法」により実際に行われている改革の1位は、「有給休暇取得の促進」だった。実に7割以上の人が挙げており、唯一半数を超えた改革でもあった。以下、「時間外労働(残業)の上限規制」(45.3%)、「『ノー残業デー』の制定」(41.1%)が続いた。ただ、実施されている働き方改革にデメリットを感じている人は58.2%と半数 を超えていた。

デメリットを感じる理由としては、「仕事の有無にかかわらず、毎月消化が義務付けられた」「仕事がたまるようになってきた」など、望まない休暇取得に対する不満の声が聞かれた。「社員間の意思の疎通やチームワークが低下した気がする」と、顔を合わせる時間が減ったことによる仕事への弊害も指摘された。

2位には、「時間外労働(残業)の上限規制」(45.3%)がランクイン。「残業分の早帰りを月内で消化できない場合、理由を問われる」など、働きすぎるとむしろ問いつめられるという苦悩も聞かれた。「サービス残業とサービス有給出勤が増えて本末転倒!」など、タダ働きが増えただけという厳しい意見もあった。

3位も「『ノー残業デー』の制定」(41.1%)と残業に関することが続いた。こちらも同様に「残業が全くなくなったことによる収入減」「仕事量は減っていないのに残業できなかったら、持って帰ってしなければならない」など、仕事は減らずに給料は減るという訴えも多かった。「業務が遅延」という社外にも影響がありそうな指摘もあった。

「働き方改革」にメリットを感じている人は約75%と高かったが、一方で半数以上がデメリットも感じていることがわかった。仕事の量が変わらず、人員も補充されない状態で、ただ休みだけを増やしても、不満が募るのは明らかだ。また改革による変化に順応するには、時間もかかる。多くの人が後ろめたさを感じず休み、持ち帰らなくてすむ量の仕事をする。そんな環境が確立できるよう、制度だけでなく、仕事の現場自体の改革が求められているのだろう。

※写真と本文は関係ありません

調査時期: 2019年6月15日
調査対象: マイナビニュース会員
調査数: 316名(男性262名 女性54名)
調査方法: インターネットログイン式アンケート