米労働省が2019年7月5日に発表した6月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数22.4万人増、(2)失業率3.7%、(3)平均時給27.90ドル(前月比0.2%増、前年比3.1%増)という内容であった。
(1) 6月の米非農業部門雇用者数は前月比22.4万人増となり、市場予想の16.0万人増を上回った。業種別では小売業が減少した(0.58万人減)以外は概ね増加しており、貿易摩擦の影響が懸念された製造業でも1.70万人の増加が確認された。非農業部門雇用者数の3カ月平均増加幅は、4月および5月分が合計で1.1万人下方修正されたものの、6月の大幅増を受けて17.1万人に上向いた。
(2) 6月の米失業率は3.7%となり、ほぼ50年ぶりの低位だった前月の水準を維持するとの市場予想に反して0.1ポイント上昇した。また、フルタイムの仕事を希望しながらパートタイム就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も7.2%へ0.1ポイント上昇した。もっとも、こうした失業率の上昇は、労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合を示す労働参加率が62.9%に0.1ポイント上昇したことによるものと見られる。
(3) 6月の米平均時給は27.90ドルとなり、前月から0.06ドル増加して過去最高を更新。ただ、伸び率は前月比+0.2%、前年比+3.1%と、いずれも市場予想(+0.3%、+3.2%)を下回った。賃金の漸増基調は維持されたものの、前年比の伸び率は今年2月をピークとする鈍化基調に変化は見られなかった。
(4) 米6月雇用統計の発表を受けて、ドル/円は約半月ぶりに108円台半ばへと上昇した。貿易摩擦の影響などで米景気が後退するのを食い止めるため、米連邦準備制度理事会(FRB)が7月にも25bp(0.25%)の利下げに動くとの見方に変化はなかったが、7月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で50bp(0.25%)の大幅な利下げが一気に行われる確率はほぼゼロに低下した。
米6月雇用統計発表前に、市場は50bpの7月利下げを3割程度織り込んでいたため米長期金利とドルは上昇した。また、やや過大だった嫌いはあるにせよ利下げ期待が後退したにもかかわらず、史上最高値圏で推移していた米国株が崩れなかったのも見逃せない点だろう。
なお、トランプ米大統領は、雇用の力強い伸びは米経済が引き続きかなり良好に推移していることの表れとした上で、FRBが利下げすれば経済は「ロケット」のように急成長を遂げるだろうと述べて、FRBに重ねて利下げを要求した。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya