豊島将之王位に木村一基九段が挑戦する第60期王位戦七番勝負第1局が7月3、4日の両日、名古屋市「か茂免」で行われ、豊島王位が勝利を収めました。
挑戦者のエース戦法に完全勝利
対局開始前に行われた振り駒により第1局の先手を得たのは豊島王位。これにより、今シリーズ奇数局は豊島王位、偶数局は木村九段が先手番を持つことになりました。第7局までもつれ込んだ場合には、再度振り駒が行われます。
対局は序盤から飛、角、桂が盤上を乱舞する華々しい戦いになりやすく、中盤を飛び越えて序盤からいきなり終盤に突入することも珍しくない「横歩取り」の戦型へと進みました。1日目の昼過ぎ、木村九段が自身から仕掛ける手を見送り自陣に手を入れたのを見て、豊島王位が猛攻を開始します。
「受け」に強みのある木村九段ですが、豊島王位の強力な攻撃を受け止めることもかわすこともできず、力の出ない展開に。一方、豊島王位の攻めは精緻を極め、また攻めることで相手に反撃の暇を与えることもなく、指し手を進めるごとに差を広げてゆきました。終盤、2枚の龍で木村玉に迫ると、最後は片方の龍を捨て一直線に寄せ、木村玉を受けなしに追い込みました。
序盤、たった3手で作られた豊島玉の簡易な城は終局まで攻められることなくそのままの形をとどめ、消費時間を見ても持ち時間8時間のうち木村九段が7時間59分に対し豊島王位は4時間46分と、3時間以上残しての完勝劇となりました。
木村九段が本局で敷いた布陣は、5月30日に行われた本棋戦挑戦者決定戦の対羽生善治九段戦で用いたのと同じもの。この第1局、後手番での「エース」戦法を起用した形ですが、完璧に打ち破られての痛い敗戦となりました。間違いなく現役最強の一人である豊島王位に星1つ先行されたこのシリーズでタイトル奪取の悲願を成就させるためには、先手番となる第2局、そして後手番の第3局における戦型選択が鍵となってきそうです。
第2局は7月30、31日の両日、「京王プラザホテル札幌」で行われます。