インターネットイニシアティブ(IIJ)は同社の個人向けMVNOサービス「IIJmio」において、eSIM対応のデータ通信サービス「IIJmioモバイルサービス ライトスタートプラン(eSIMベータ版)」を7月18日から提供開始することを発表した。eSIMを搭載した、iPhoneなどのSIMロックフリー端末で利用できる。

  • 「IIJmioモバイルサービス ライトスタートプラン(eSIMベータ版)」を発表

フルMVNOとしてeSIMサービスも提供

IIJは昨年スタートしたフルMVNOサービスの一環として、自社の加入者管理機能(HLR/HSS)を使い、加入者情報(プロファイル)をeSIMにダウンロードできるeSIMプラットフォームを構築し、実証実験を重ねてきた。今回のサービスは、こうした蓄積の元、正式サービスに先立ってベータ版(実験版)サービスとして提供されるものだ。

eSIMはプラスチック製の物理的なSIMと異なり、本来SIMに書き込まれている通信プロファイルを遠隔から書き換えられるタイプのSIMで、あらかじめ端末にチップ型SIMとして搭載されているものなどがある。利用者はeSIMに通信事業者のプロファイルをダウンロードすることで、SIMの差し替えなしにキャリアを変更できる。

eSIMを搭載した端末はいくつかあるが、本サービスの対象となるのはiPhone XS/同Max、XR、iPad Pro 11.5インチ、iPad Pro 12.9インチ(第3世代)、iPad Air (第3世代)、iPad mini (第5世代)、Microsoft Surface Pro LTE Advancedの各SIMフリーモデル。キャリア販売端末の場合はSIMロックを解除して利用することになる。なお本サービスはデータ通信専用サービスなので、iPhoneで利用しても音声通話はできない。なお同じくeSIMを利用しているApple Watch(Series 3/4)には対応していない。

価格は、通信容量6GBで月額1,520円(税別)。契約時には、初期登録費用3,000円とSIM発行手数料200円が別途かかる。利用しない期間、SIMを停止することはできないので、契約解除後にまた利用する際は再度初期登録費用がかかることに注意したい。利用しきれなかった容量は翌月末まで繰り越すことができる。通信速度は登り131.3Mbps、下りが1,288Mbps。データ通信量を超過した場合、上限が200kbpsになる点も含めて通常のSIMのサービスと同様だ。

  • 100MB/200円でデータ容量を追加できるクーポンカードや、20GB/30GBの追加容量を加える「データオプション」や、セキュリティ対策アプリの提供などを含む「モバイルオプション」の利用が可能な点も通常のIIJmioサービスと同等だ

主な使途としては、通話定額のあるMNOをメインに、データ通信はIIJmioにして節約する、といったケースを想定。また、今回はベータ版という位置付けだが、正規サービスへの移行時は、物理SIMカードを必要としないメリットが大きい、訪日外国人観光客向けのプリペイドSIMのeSIM化も検討されているとのこと。

  • IIJが試作したeSIM販売キオスク端末。タッチパネルで目的の容量を選び、クレジットカード決済するとQRコードを印刷したレシートが出てくるので、これを使って契約するという仕組み。インバウンドなどを対象にすることを想定しているとのことだが、空港や駅にこうした端末が増えたり、コンビニコピー機などからQRコードを購入できれば、利便性は大幅に向上するだろう

なお、発売に合わせて7月18日~8月28日まで、「eSIMデビュー応援キャンペーン」が3回に分けて実施される。また同社が販売を開始したiPhoneの中古端末の中にeSIM対応機種であるiPhone XSやXRが含まれることも明らかになった。

  • 第一弾は登録費用の3000円が1円になる(7月18日~7月31日)、第二弾はデータ容量が3カ月間、6GBから7GBに1GBぶん増量される(8月1日~8月14日)、第3弾は月額料金が3カ月間、1,520円から520円になる(8月15日~8月28日)というもの

eSIMのインストールは想像以上に簡単

発表会場では、実機を使って実際にeSIMをインストールすることができたので、使い勝手をレポートしよう。今回体験したのはiPhone XRのSIMフリー版(SIMは入っていない)だ。なおiOSの場合、eSIMを利用するには、バージョン12.2以上にアップデートしておく必要がある。

まずeSIMを購入したら、プロファイルにアクセスするためのQRコードが表示される。これを印刷するか、画面に表示しておこう。QRコードでアクセスするため、端末単体では契約できないことに注意しよう。今回は印刷した紙が用意されていた。

続いてiPhoneの設定を開き、「モバイル通信」→「モバイル通信プランを追加」と選択する。するとQRコードの読み取り画面になるので、先ほど用意しておいたQRコードを読み込ませよう。

  • ここでeSIMを利用する端末はネット接続が必要になるため、既存のSIMを使うか、Wi-Fiが利用できる環境を用意しておこう

プロファイルのダウンロードが成功すると、「モバイル通信プラン」の項目にIIJの回線が追加され、デフォルトの回線が自動的に新しい回線に変更される。あとは必要に応じて、主回線と副回線を切り替えて利用しよう。

  • IIJmioのeSIMプロファイルはアップルのデータベースに登録されていないため、「保障されていないモバイル通信プラン」と表示されてしまうが、ここは意を決して「OK」を押そう

購入から切り替えまでの手順はシンプルで、全くの初心者はともかく、IIJmioのフルMVNOサービスを積極的に利用したがるユーザー層にとっては造作もないだろう。

  • Microsoft Surface ProでもeSIMが動作していた。なおWindows 10はMDMでeSIMプロファイルの配布にも対応する方針のため、企業内でeSIMを含めた管理が可能になるという

まだ対応端末が少ないものの、海外のSIMフリー対応端末を中心に、デュアルSIMに対応した端末も増えているが、このうち片方のSIMをeSIMにするものは今後、かなり増えると予想される。使いたいときにすぐ登録して使えるeSIMの利便性は、一度体験すればSIMを買いに行くのが馬鹿馬鹿しいと思えるほどだ。

IIJ全体で見ると、eSIMは個人向けサービスよりも、IoTなどをはじめとする法人向け用途が中心になりそうだが、技術的には大変面白く、またコストパフォーマンス的にも悪くないサービスだ。特に対応端末を持っていてMVNOの利用を考えているなら、検討の価値があるのではないだろうか。

なお、iPad Proのセルラーモデルには、あらかじめeSIMである「Apple SIM」がインストールされており、KDDIやソフトバンクの回線を1GB/1,000円で即座に契約できる(このときSIMがなかったりWi-Fiに接続していなくても、Apple SIM契約専用にモバイル回線が利用できる)。これと比べるとIIJmioのeSIMサービスは、Wi-Fiなどのネット接続手段が必要で、QRコードを入手・印刷する必要はあるが、1,520円で6GBと、コストパフォーマンスはApple SIMの4倍近く優れている。iPad Proユーザーなら覚えておいて損はないだろう。