7月4日、第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選に登場した里見香奈女流五冠が有森浩三七段、畠山鎮七段を連覇して準決勝に進出しました。
「プロ編入試験」受験資格取得まであと1勝
同棋戦一次予選は持ち時間各1時間、切れたら1分以内のルールで行われます。短時間で対局が終わるため、午前10時から開始の対局の勝者がそのまま午後2時から次の相手との対局するスケジュールを組むことが可能で、この日の対局も有森七段―里見女流五冠の勝者が畠山七段と戦うスケジュールで行われました。
午前の有森七段との一戦は後手番で「角交換型向かい飛車」の戦型に誘導。互いの飛車が向かい合う2筋から動きを見せた里見女流五冠が中盤、飛車取りを掛けられた手を相手にせず攻め合う順を選びました。その後も激しい攻め合い、寄せ合いが見られましたが、最後は自玉の安全度を見切って中央から敵玉に殺到した里見女流五冠が制しました。
午後の相手は順位戦で最高クラスA級の次に位置する、B級1組に在籍する畠山鎮七段。対局は先手の里見女流五冠が得意の中飛車に振り、この戦法らしく早々に小競り合いがあったものの、互いに玉を堅く囲い合う持久戦となりました。盤面中央で本格的な戦いが起こり、里見女流五冠は敵陣への飛車の成り込みに成功。しかしその数手後に成ったばかりの飛車を相手の銀と交換する強手を炸裂させて、畠山玉を一気に受けなしに追い込みました。
1日で男性棋士から2勝を挙げた里見女流五冠。6月28日、都成竜馬五段を下して女性として初めて男性棋士に対し4連勝の快挙を達成したばかりでしたが、4日の対局で2勝を上乗せしたことにより、対男性棋士との直近14局の成績が9勝5敗となりました。
日本将棋連盟には「プロ編入試験」の制度があり、「現在のプロ公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績を収めたアマチュア・女流棋士」は試験を受けることが可能となっています。
里見女流五冠は奨励会退会後、この制度を利用しないと公言しています。しかし、受ける受けないが本人の自由であることは当然として、あと1勝でこの基準を満たす女性が現れたことになります。
女流棋戦で五冠を制覇し、新棋戦の第1回ヒューリック杯清麗戦で決勝五番勝負に進んで女流棋界初の六冠も見据える里見女流五冠。男性棋士ともそん色なくわたり合う第一人者のこれからの戦いぶりに要注目です。(※里見女流五冠の成績には未放映のテレビ対局の勝敗を含みます)