働き方改革関連法案が4月から施行され、さまざまな働き方が実践されるようになってきました。今回はテレワークの一つである「ワーケーション」について解説していきます。
ワーケーションが生まれた背景
ワーケーションとは「旅行を楽しみながら、ちょっとだけ仕事をする」という働き方で、テレワークの一種です。国内外の旅行や帰省といった長期休暇中に、特定の時間だけは仕事に充て、そのときは出勤扱いとなります。
もともとはアメリカでバカンスと仕事を兼ねる働き方として誕生しました。
ワーケーションが日本で注目されるようになったきっかけは「有給休暇の取得促進」です。もともと日本の有休取得率は世界で最も低く、エクスペディア・ジャパンの2018年調査によれば、わずか50%。有休取得日数も"世界最小"の10日間に過ぎませんでした。
こうした現状を受け、2019年4月1日から有休取得は義務化されました。10日以上の有給が付与される労働者に対しては、少なくとも5日間の有給を取得させる必要があります。違反した経営者には罰則が科せられます。
ワーケーションの導入には、日本人がためらいがちな長期休暇を取得しやすくすることで、有給取得率を向上させる狙いがあるのです。
ワーケーションの語源
ワーケーション【Worcation】という言葉は、「ワーク(Work)」と「バケーション(Vacation)」の二語を組み合わせて生まれました。
ITの進歩によってリモートワークの環境が整ってきた2000年代、フリーランスのコンサルタントなどが「海外のリゾートに長期滞在し、午前中だけ仕事して午後からは休暇を満喫する」といった休み方・働き方を送っていたことから、そのスタイルをワーケーションと呼ぶようになったのです。
ワーケーションのメリット
ワーケーションと一口に言っても、具体的なルールは導入している企業によってさまざまです。例えば、休暇中に「勤務日」を設けるところもあれば、「緊急度の高い仕事のみ対応すること」と定める会社もあります。
こうしたルールを設けることで長期休暇を取りやすくなるのが、ワーケーションの最大のメリットです。
旅行期間中に1日だけ重要な会議があったとしても、旅先からインターネット経由で参加すればOKなので、旅そのものを諦める必要は無くなりました。
また、業務の進捗状況なども旅先で確認することによって、休暇明けにすぐ通常業務に戻れるという「働きやすさ」もワーケーションの特徴です。
仕事におけるプラス面では「新しいアイデアを生みやすい」ことも挙げられます。いつも同じ道を歩き、いつも同じ場所で働いていては、新しいアイデアをひらめくことは容易ではありません。
異国のカフェに座ることは、それだけで仕事に対するこれまでにない視点を与えてくれます。
もちろん、「この仕事を早く片付けて遊ぼうという気持ち」もパフォーマンスの向上に役立つでしょう。
ワーケーションの導入事例
日本では日本航空(JAL)が2017年7月からワーケーションを本格的に導入しています。2017年度夏期は11名、2018年度夏期は78名が制度を利用しました。
同社の場合、社員が休暇に最大5日のワーケーション日程を追加することができます。たとえば、旅行中に4時間働くワーケーション日を2日間設ければ、それは1日分の勤務をしたとして扱われます。
2019年2月1日におこなわれた報告会では、「忙しい時期の参加だったが、家族サービスもできて満足した」「豊かな自然の中で予算編成という重要な業務を落ち着いてすることができた」という声が上がりました。
休暇中の旅先で仕事のことばかり考えていたら本末転倒です。オンオフをいかに切り替えるかが、ワーケーションによって公私を充実させる鍵となってくるでしょう。