外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年6月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円 6月の推移】

6月のドル/円相場は106.777~108.797円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%下落(ドル安・円高)した。

前月に米中通商協議が決裂したことなどから世界経済の減速懸念が広がる中、トランプ米大統領がパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による過去の利上げを繰り返して批判したこともあって、FRBが7月にも利下げに踏み切るとの見方が強まった。なおトランプ大統領は、年始に解任の選択肢を模索するよう法律顧問に指示していたとされる。こうした中、米連邦公開市場委員会(FOMC)は、実際に19日の声明や経済・金利見通しで政策スタンスを緩和方向にシフトした。

ドル/円は、米国とイランの対立が激化したこともあり、25日には1月3日以来の安値となる106.777円まで下値を切り下げた。ただ、その後は7月FOMCでの大幅利下げへの思惑が後退したことや、米中首脳会談(29日)での貿易戦争「休戦」への期待が広がったことから、一時108円台を回復するなど月末にかけて持ち直した。

【ドル/円 7月の見通し】

市場の注目が集まっていた6月29日の米中首脳会談は、米国が対中追加関税(第4弾)の発動を見送り、協議の継続で両国が合意した。協議の先行きに不透明感は残るものの、「物別れ」という最悪のシナリオをひとまず回避したことで、関心は7月30-31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向かうことになりそうだ。

米FF金利先物市場は、1日午前の時点で25bp(0.25%)以上の利下げを引き続き100%見込んでいるが、50bp(0.50%)引き下げの確率は6月28日の30%台から10%台に低下している。つまり、現時点では25bp(0.25%)の利下げは「既定路線」であり、50bp(0.50%)の利下げがあるかどうかが焦点となっている。

「織り込み済み」の25bp(0.25%)利下げなら、米長期金利とドルの下落余地はほとんどないと考えられる一方、織り込みが進んでいない50bp(0.50%)利下げならドルの下落余地も大きいと考えられる。6月米ISM製造業景況指数や6月米雇用統計などの重要統計はもちろん、10日(下院)と11日(上院)に行われるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言などからその可能性を探ることになるだろう。

その他、日銀が主要国中銀による緩和競争に参戦するのかという点もポイントとなろう。日銀には緩和余地が少ないとの見方が強まれば円高が進みかねないだけに、黒田総裁の舵取りは難しいものになりそうだ。7月のドル/円相場は、日米の金融政策がメインテーマになる公算が大きい。

【7月の日米注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya